表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/68

7-1

「よーし、日の本に行くぞー!」


 アンジーがノリノリだ。入れる機会が少なかったとかで、すごく喜んでいる。


 アビーはアルに興味はあるものの、仕事が立て込んでいて同行はできないらしい、ここでお別れだ。

 また会う機会もあるだろう。


「アルかー」


「どんな感じの人なんですか?」


「うーん、頭が良くて、年齢の割にめちゃくちゃ強くて……」


 言っていて思ったが、レイとの共通点が多い。

 僕は本当に偶然魔王を討伐できてしまったという他ないが、アルに関して言えばそんなことはないだろう。つまり僕は彼のおこぼれをもらったという形になるのだろうか。


 似ているとは言っても、レイとはこの通り上手くやれているが、アルとはそんなに仲良くなれなかった。むしろアルはジーンと仲が良かった。ティフともそこそこ仲が良かったっけ、アビーとはめちゃくちゃ仲悪かったな。アルが一方的にという感じだったけど。


「ああ、あと殺人に躊躇がなくて、ちょっと散財癖があったかな」



 ───────



「美女が好きなおっさん?はあ……それはまた随分なことだね」


 おっさんとは言ったって僕よりは年下だろう。なんなら美女は僕も好きだ。場合によっては気が合うかもしれない。

 ああでも、人間の貴族には多いんだったか、ユニコーンや竜の末裔が。そうだとすると僕の趣向とは少し違いそうだ。


「正確には好みの美女をほぼ強制的に攫う悪名高いおっさん。……そう、それでその貴族にお金をせびりにいかなくちゃいけない」


 アビィがため息をつきながら言った。

 この土地の領主からお金をせびろうということらしい。悪名高いとは言いつつ、有能ではあるようで、発展した街が目に入る。


「いや……まさかそんなに金が無くなっているとはね」


「貴女達が使いすぎたから」


 僕も思うところは正直ある。ギルドでお金を下ろせばいいものを誰かが先に買ってしまうのではないかと焦って高い武器を買ってしまったりとか。


「リーザは本買いすぎ。高いんだから数を減らして」


「う」


「マイクも賭け事で金すりすぎ。馬鹿なの?」


「……サーセン」


「ジーンも色町で使いすぎ」


「♪〜」


「あほ」


 アビィが珍しく怒っている。

 ……マイクとジーンの組み合わせは淑女からすれば許せないものがあるのだろう。拠点を移動したらだいたい色町に直行しているし。……それは僕もか。


「ファニーは物壊しすぎ。とりあえず酔っ払ったら暴れる悪癖を直せ」


「……」


「アビーも絡み酒なおした方がいいと思います。宿の延長料金結構高いんですよ?」


「ユウが1番金遣い荒いと思う。なに、このウロボロスに関する資料って」


「そ、それは大切なものですよ?金属に関する円環をですね……」


「魔王討伐には関係ない」


「まあ、はい……」


「ま、まあまあ。その辺にしておこうよ。いざとなったら僕が」


「セディス。貴方は……気になることはあるけど武器や薬、毒以外は自費で購入してるみたいだからいい。それらは魔王討伐に関係あるし」


「あ、うん」


 僕がお金出そうか?という言葉は飲み込んでおこう。おそらくそういうことでは無いようだ。


「アレックスは、他と比べると大したことないけど酒飲みすぎ、食べすぎ」


「……すまん」


「私達は各国から相当量のお金をもらっている、いた。それを使い切るとは」


「最悪僕のポケットマネーから出すよ?そうでなくともその辺に転がってる犯罪者から奪えばいいと思うんだけど……」


「それはさすがにやめてほしいわね」


「そういうものかい?」


「そういうものよ」


「ふうむ」


 僕たちの予算は潤沢だ。何しろ期待されているのだ、それ相応のメンバーである。皆それを隠してはいるけれど地位もある。自分で予算を動かせてしまうくらいには。


「それでこのおっさんにせびりに行く」


「……君より年下だろ?」


「まあ。でもこういうのは種族ごとの相対評価だから」


「それで行くと僕は子供になっちゃうよ」


「……それで誰がせびりに行くかという話」


「リズは絶対だめだよ」


 聖職者にさせてはいけない仕事だろう。

 それにリズが買う本は一応旅に役立っているのだし、これに関しては動かなくていいと思う。


「ええ、私はそれには乗れないわ」


「わたしとティフは人間じゃないからちょっと厳しい」


「……人間なのはフレッドだけじゃないか?」


 今まで黙っていたゼンが口を開いた。

 確かにその通りだ。


「大丈夫。ジーンもセディスもアレックスも人間にしか見えない」


 何?男でもいいのか?

 そりゃあこだわりが強いのだ、人間でないといけないというのも分からないでもない。にもかかわらず男はいけるのか。全く嘆かわしい。少し目が鋭くなる。


「エルフは男女に差異があまりないから、そのあたりピンと来ていないんじゃないかしら。なんなら何をされそうになるかも分かっていないんじゃ……」


 僕の不穏な雰囲気を察したのか、リズが僕にこっそりそう言った。なるほど、エルフの解剖図を見たことがあるが、確かに男女であまり骨格の差がなかった。原種たるアルフヘイムのエルフならもっとそうなのかもしれない。


「……一応言っておくけど人間からすればエルフも大して変わらないよ。エルフの目とは違うんだよ、人間の目の構造っていうのは」


 とりあえずそれだけ言っておくことにした。結局お金をせびりに行くだけなら相手の好みは気にせず頼みに行けばいいだけだろう。何しろ僕達は魔王討伐に向かっているのだ。出資するには十分な理由だと思う。


 エルフは魔力をよく見ている。

 僕は魔力に関しては全くのからきしだしジーンは確かに混ざりすぎて人間と大差ない。だからアビーは僕達のことを人間と信じ込んでいるのだ。ゼンはどうかな。なんとも言えない。


「そう。じゃあ私も候補に入れておく」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ