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6-5

「なかなか姑息なことをするじゃないか。始めの合図無しで戦い始めるなんて、さ!」


 ホルダーと僕の手元の距離を切断することによって回収し、右手に持ったナイフで切りかかる。左手のナイフは全て服の中に忍ばせた。じゃあさっき見せつけたのは、って?煽るために決まっている。あと、ナイフが5個と誤認すればいいなという浅はかな考えもある。ちょっと冷静になれば僕がナイフを12個持っていることなんてすぐ分かるだろう。


 人のこと言えた立場か?とでも言いたそうなレイの視線を受けつつ、ブレスレットを狙って行く。

 見ておくといい。これが僕の戦い方だ。


「“爆ぜろ”」


 アビーがそう指さした場所で爆発が起こった。僕は避けていたので当たることはなかったが、どうやら殺すつもりで来ているらしい。僕は死なないからいいけど、これをリズにもやるつもりだったのか……どうかしている。


「わ」


 急に接近されてそのまま蹴り上げられた。あーあ、1本ダメになっちゃった。そのまま床に捨てる。


「セディスってあんまり反射神経良くないよね」


「そりゃ僕は戦士じゃないし、いらなくない?」


「斥候こそ1番反射神経は要求されると思う」


 ……死なないようにか。死なないから僕には関係ないけど確かにそうだな。

 それにしても。


「見たことのない動きだ」


 アビーは、近接戦闘の時は大抵拳を使っていた印象だったが、今のは足技だった。何らかの武術だろうか。


「東洋の武術、ってやつだ。かっこいいから習った」


 ……なるほど、だから中華にいたのか。

 東洋の武術か、確かにエキゾチックな感じがして大変心惹かれる。


「体格があまり良くなくても使いこなせるのは嬉しい誤算だった」


「体格?」


 アビーは北欧出身なだけあって並の男より背が高いまである。体格的には恵まれている方だと思うんだけどな。


「……使いこなすって言ってる」


 ああ、平均じゃ足りないって話か。そりゃそうか。僕だって身長だけならかなりある方だと思うが、肉弾戦をするには体躯が薄くくて話にならない。


 とか言いながら、イヤリングを1つ壊す。

 僕とアビーの距離を切った。人間の街に来て、僕が1番最初に頑張って身につけた曲芸みたいな技だ。

 イヤリングは僕の解体解剖の概念に触れればたちまちのうちにこの通り。ナイフのあるからさらに倍率ドン、だ。


「なっ……」


「これも初めて見たかな?」


 そして切ったという事象をまた切って元の位置に戻る。


「……。私はセディスのこと、結構信頼してたのに」


「それは申し訳ない」


 そうだな、僕とアビーがあまり仲良くなかったのは、結局僕が彼女のことを信用していなかったからだろう。彼女は結構僕に歩み寄ってくれていたような気がする。少なくとも、僕よりもはるかに強いだろうジーンより先に、僕に戦いを挑みにくるくらいには。


「“凍れ”」


 広範囲の魔法で、僕は避けきれず右手を凍らされてしまう。


「チェックメイト、降参する?」


「まさか!」


 僕はもともとそうであったというように右腕を前に出す。そのまま氷を素通りし、元の通り自由になった。


「ちょっと飽きてきたね」


 僕は武器を出せない以上避けるか切りかかるしかできないのだ。アビーの行動全てで、この戦いがどう進行するかが決まると言えた。


「……隠していることが多すぎる、“加速”」


 アビーが魔法で加速し、そのまま殴りかかってきた。

 まともに相手をしてはナイフを破壊されるだけなので、僕は全力で逃げる。


「“爆ぜろ”」


 至近距離の爆破だ。確かにアビーは、魔法はなんだかんだこれが1番強いと言っていたな。なんて身も蓋もない話だと思ったのを覚えている。

 もちろん彼女は魔法のスペシャリストなので、他の魔法も使える。

 避けきれなくてナイフは2個破損した。もちろん本体は無傷だ。これで後9個か。


「“切れろ”」


 不可視の刃が僕の首に迫る。ナイフの位置では無い。避けるべきか迷うな。ああ、でも首を直してるうちにナイフ壊されちゃうかな。

 そう考えると、僕の首が落ちた。

 上手いこと落ちたのか、アビーが近づいてくるのが見える。


 勝ちを確信したのか僕からナイフをゆっくりと外している。そんなに悠長なことをしていていいのかな?

 腕を動かしてブレスレットを切断した。


 アビーが狼狽えたように後ろに下がるので、その隙に頭を元に戻した。


「な、なに、それ……」


「僕はアビーのこと結構気に入ってたよ。だってさ、僕のことを本気で人間だと思ってたのって君だけだよ?哀れで可愛いじゃないか」


 リズにはあの通り。ゼンもどうやら分かってたみたいだし。ティフも正体は分からないまでも直感で人外であることは分かっていたらしい。そう言われた。


 僕は神族であるのを隠していただけであって、別に人間を装ってたわけではない。アビーが人間だと思い込んでいたらしいのが逆に不可思議に感じている。


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