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「やっと帰ってこれたね」
「そうですね」
イギリスの拠点だ。1ヶ月開けていたが、隣人に管理を頼んでいたので、綺麗に保たれている。僕が大事にそだてている目玉もきちんと見てくれるという話だった。いや親切なお隣さんで助かったよ。最近脳みそが生え始めた目玉を見てケケケと笑っていた。気に入ってくれたらしく、可愛がってくれたそうだ。受け取った目玉は元気に震えながら僕の方にころがってきた。可愛がられたとはいえ寂しかったのだろうか。可愛いね。
ちなみにアンジーもしばらく僕の家に滞在するようだ。
「これからどうしようかな」
「……!これ、もしかしてアビゲイルさんではないですか?」
「なんだって!?」
レイが新聞を見せてくれる。今まで溜まっていた新聞を整理してくれたらしい、ありがとう。
確かにその記事を見ると画像の端の方にアビーらしき横顔が写っていた。
「いやでもエルフって顔皆同じだし……」
「ハイエルフでしょう?ハイエルフはそう見ませんよ。特に写真には写りたがりませんし」
おお、獣人達に好かれて自己肯定感がちょっと上がったのか、レイが僕に生意気なことを言ってる。少し感動だ。
「なんの記事なんだい?」
「明、ええと東アジアの方でしたよね?という国の話みたいです」
「ふむふむ、東アジアの情勢があまり良くないという内容か」
明は僕も1度行ったことがある。朝鮮に出現した魔王を倒すため、この国を経由したのだ。とにかく面積の広い国だったように記憶している。珍しい生物もたくさんいた。
「なるほどね……試しに手紙でも書こうかな」
画像の場所ってどこだろ……お金を積めばどうにか特定して送り届けてくれないだろうか。
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「トリ様!アビゲイルさんから手紙です!」
「なんだって!?」
場所が分からなくても届けてくれると評判の郵便屋に手紙を託しはしたが、正直届くとは思っていなかった。僕の手元に返事の手紙が来るまで3ヶ月。相当頑張ってくれたのだろう。お金は相応払ったつもりだけれどありがたい。もっと払ってもいいくらいだ。
「どれどれ……」
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拝啓 親愛なるセディスへ
お元気ですか。わたしは元気です。
……貴方に返事を書くだけで6万もかかった。返して?
というのはさておき、甥っ子を育ててるんだね。イメージになかったから結構意外だ。セディスが子供に懐かれるなんてぜんっぜん想像できない!
わたしの近況を聞きたいって話だけど、正直今のわたしは何もしていないので、書けるようなことが何もない。魔王を討伐してからめっきりやる気が出ないんだ。人に金を貸したりなんかしてぼちぼちやっている。
1つ気になることがあるとすれば、アルの行方か。この辺りでは目撃情報は無いけど、近くの島……日の本だったか?で見たという人に会った。どうやら人外の化け物になっているという話で……わたしも疑ってはいるんだけど、伝えないわけにも、ね?
そういうことで、今後ともよろしく。また会えたらいいね。
アビゲイルより
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「これは……何語ですか?」
「ん?……うーん、多分中国語じゃないかな」
ああ、英語で書いてないのか。じゃあ甥っ子って書いてあっても焦ることはないか。しかし手紙にそこまでの情報は書いていないはずなんだけどな。間違えて僕が書いてしまったのだろうか。
「なんて書いてあるんですか?」
「……そうだなぁ、今アビーは金貸し業で生計を立ててるってことと、アルが日の本って国で目撃情報があったってくらいかな」
日の本、僕は知っている。結構解剖学が進んでいるいい所だ。鎖国とやらで、行けたことは無いし、多分これからも入れないのだろうけどぜひ行ってみたい。
「日の本?聞いたことがありませんね」
「遠いしねぇ。東アジアの国だよ、簡単に言ってしまえばアビーの近くにいそうって話だ」
「……じゃあ会いに行くのは難しそうですか」
「そうだね。なんか間違って日の本への通行許可がもらえたら行こうかな」




