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5-7

「ふむふむ」


 いつの間にか別行動になっていたアンディを回収し、話を聞いていた。


「どうやらこの辺りで腕自慢の大会があるみたいですよ。私は参加しますがどうしますか?」


「ふむ。そうだね、レイ。行ってきたらどうだい?僕は原生生物の調査があるから見に行けないけど……」


「そんな、じゃあトリ様は誰がお世話すれば……?」


「いや、一応僕は招かれてる側だし、ティフが何とかしてくれるって言ってる。だからこそここまで来たんだよ?」


「…………」


 ▫


「あれはロック鳥!?」


「ってなんだ?」


 ……なんだと言われても困るな。とにかく大きい鳥ということでしかない。

 ここら辺の特に珍しい生物は鳥が多い。伝説上にしか存在しないという位珍しいものもいる。ロック鳥は比較的メジャーな方で見れてもおかしくは無い。僕が住んでいる近辺にはいないけど。

 とにかく大きい鳥なのだ。一説によると象すら食べるらしい。もうそれは竜のようなものなのでは?と思わなくもない。


「世界的に見てもあんなに大きい鳥は珍しいんだよ」


「そうか?よくいる鳥に見えるが」


「ええ……」


 それはさすがに無いだろ……ないよね?象すら食べる鳥がその辺飛んでるのは無法地帯すぎない?


「お、あれはフェネックだね。可愛い」


「そうだな?」


 ん?ロック鳥が近づいて来る……ああ、僕達の方にじゃなくてフェネックの方にか。きちんと野生の勘は働いているらしい。


「よし!」


 ああ、ティフがロック鳥を射殺した。射殺とかできるのか……。


「って死体はどうするのさ。放置はまずいと思うよ?」


「……」


 考え無しか。このデカイ死肉は雑菌の温床になりうる。こういう時レイがいてくれたら解体して焼き鳥にしてくれるんだけどな。


「女王様。私にお任せ下さい」


 馬車の中から物々しく、執事が出てきた。ああ、車椅子をセッティングしてくれた人か。


「セバスチャン!」


「誰ですかそれは」


「僕がつけたあだ名だよ」


「はあ……?そういうもんですか」


 さすが女王のお付きの執事だ。呑み込みが早い。僕の好感度もうなぎ登りだ!嬉しくないかもしれないけど。うん、加護もちょっとくらいならあげてもいいかな?って感じだ。


「なんか今寒気が……」


 ロック鳥を捌いているセバスチャンが腕をかき抱いて身震いした。しかしなかなかの手際だな。これはレイより上手いんじゃないか。


「この肉どうするの?」


「焼却炉の方に運び燃やす予定ですが」


「えー勿体ないな。食べようよ。ほら見ろよこの大きい足!こんなの俺を食べてくれ!って自分から言ってるに決まってる」


 セバスチャンは象の獣人かな?あんまり自信ないけどそんな気がする。巨体だ。筋力はかなり高そうだ。これで繊細な作業も得意だって言うんだから良いよ。加護あげたくなっちゃうね。


「女王様もなんか言ってくださいよ!」


「……。確かに美味そうだなッ!」


「そんな!?」


 そしてティフの権限でデカイオーブンを持ち込んでもらい、こんがり焼いたロック鳥を食べたのだった。味?普通に美味しかったよ。


 ▫


「トリ様、何か食べましたね?」


 レイが怒っている。僕が何を食べたって僕の勝手では?と一瞬思ったが、レイもロック鳥を食べたかったのかもしれない。僕も同じことをされたら怒るだろう。


「ごめんね?もう1回ロック鳥を狩るから許して欲しい」


「いえ……」

 

 あ、ちょっと嬉しそうな声になった!やっぱりそういうことだったのかな。


「それでちょっと気になってるんだけど……なんか獣人達に随分気に入られたね?」


 レイの周りに獣人が沢山集っていて、足元くらいしか見えない。レイも背が高くなってきたとはいえ、大きい背丈の者が多い獣人に囲まれると埋もれてしまうらしい。


「ほんとですよ!あー私が優勝したかったー!!」


 アンジーが無表情のまま叫ぶ。相変わらず器用だなぁと感心した。


「ということは優勝したのか、レイは!さすがだね、おめでとう」


「ありがとうございます」


 声しか聞こえないけどちょっと照れてるかな。


「アシュリーは凄かったぜ!!!で、おじさんは誰?」


 見たことのないタイプの獣人だなぁ。虎っぽいから虎系でいいか。あんまり獣人には詳しくないんだよなぁ、資料自体が少ないから。でも獣人は好きだ。彼らは大抵解体が上手いからね。


「僕はねー、……」


 僕はレイのなんなんだ?育ての親っていうのも違う気がする。現に今お世話されてるのは僕だし。正確な関係性を言うなら叔父だけど、それはレイには秘密にしているし。


「僕はレイの雇い主だよ」


「雇い主?こんな強いヤツ雇ってんだから貴族か?」


 別の獣人が僕に聞く。これは女か、大きいな。熊っぽい。熊系獣人かな。


「そんなようなものだよ」


 まあ一応王族?になるのかな。代替わりはほとんどないし、あっても僕に回って来ることはないから本当に一応という話になるけど。役割とかも特にない。だからこそこうして自由に国を移動できるわけだ。


「アシュリーの雇い主サマはここにしばらく滞在すんのか?」


「そうだね……1ヶ月くらいかな」


 僕がそう言うと、歓声が上がった。しっかし【レイの】雇い主か。レイは本当に慕われてるな。


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