4-4
「ということでゼンを覚醒させようと思う!」
「!?」
▫
「さて。その辺の屋台で買ってきたマモンの腕(真)です」
早速悪用されてるじゃないか!というのはおいておいて、レイが見つけた物だ。
いろいろな国の屋台街を見るのが僕のささやかな趣味であったが、レイはそれを代わりにやってくれている。
レイによって投げ出された腕は指でよこせと書いた。
「ははははははははは!!」
活きのいい腕だなぁ!
「燃やします」
レイが油を撒いたあと火をつけた。
「いや別にそこまでしなくても……いいか。ゼンこれを食べるんだ」
「は!!??」
「見た目が気にかかるなら僕が三枚おろしにするけど。僕は切るの得意だし」
「なんで食べるのか教えてくれないか?」
若干怒ってるな。
「君は魔王格の息子だと思う。僕の勘がそう言っている!ということでこれを食べればパワーアップさ。マモンの依代にされることなんてまずなくなるよ。失敗したら理性消失するけど切り替えていこう」
「……お前の勘の信用度は?」
「30パーセントくらい?」
「お前俺をおもちゃだと思ってないか?」
「別に思ってないよ。それでどうするんだい?君、放っておいたらマモンになりかわられるだけだと思うけど」
言ってないが、レイの目ではもうマモンの体になっているらしい。少し手遅れのような気もしないでもない。
「仕方ないな」
ゼンがそう言いながら一口かじった。
「どう?」
レイに聞く。
「少し……マモンの要素が薄くなった気がしますね」
「もっと勢いよくいくんだゼン。ガッと!」
「美味しくないんだが……」
▫
それから1ヶ月経ったゼンはというと、思ったより普通そうだった。
角は生えたが、力に慣れれば消すことができるはずだ。
マモンの気配もすっかり消えたらしい。
……結局魔王格の悪魔の息子だったかは謎だが、魔王討伐についてこれるくらい強かったわけだしね。腕くらいなら耐えられたということだろう。
マモンの刺客を倒しつつ、信仰心を餌にしていたら鳥籠の中の目から脳みそが生えてきた。
「これ育てていったら何ができるんだろう」
脳みそをつつきながらつぶやく。
少し嫌がったように身じろいだ。
「……何故歯が戻っているのですか」
黄金の目をした女……カナが僕に声をかけた。
歯?ああ……2年前に彼女が僕を殴り飛ばして歯が抜けたのだったか。
「君。僕は一応ギリシャ神に連なる者のわけだが……ギリシャの神の強みを知っているかい?」
「強さですか?」
「いや違う」
「華やかさですか?」
「僕に喧嘩を売っているのかな?」
華やかさなんて欠片もない僕になんてことを言うんだ。
「ギリシャ神はさして強くないよ。……その辺の人間よりはそりゃあ強いけどさ。北欧の神より弱いくらいじゃないかな?インド神なんか相手にしてみたまえ、一撃で終わりだぞ」
「ではなんだと言うのですか」
「“死なないこと”だ。これは確定事項。変質することもありやしない。僕達はバラバラにされたって、灰にされたって死ぬことはない。これが僕達の強み。不死殺しも効かないよ」
「私の先祖は逆らうことすら許されなかったと?」
「さあね」
ゼンがカナの肩に手を置いた。
「上位存在と戦う時はそれ相応の能力か準備がいる。お前の御先祖様はどっちも足りてなかったってことだろ……セディス。俺はもう依代から解放されたはずなのになんでまだ襲撃が来るんだ?」
「食べるだけで強くなった力なんて一時的だからね。血を流せば元通りさ。だから多分血を流させようとしているんじゃないかな」
「はあ!?じゃあ俺はずっとこのままこいつらを倒さなくてはいけないわけか!?」
「いや、マモンはもう少しで倒されそうだしその時まで耐えれば終わりだよ……おそらく」
魔界からは干渉できないはずだ。おそらく。
「不安になるな……」
▫
それからしばらくして襲撃は来なくなった。
「これは……倒したのかな?」
鳥籠の中の目玉にマモンの目表記が無くなった。
信仰心を食わせ続けたからか髪の毛が生えてきている。目玉はまだ生きているようで僕を見ると怯えた表情を見せる。もう目玉という見た目でもないけど。目だけに。なんてね。
「どうやら倒せたようですね。リアンから連絡が来ています」
「アンジーもこれに関わっていたのか。そうなんだ……」
オーバーキルすぎないかい。日頃の行いを良くしようと思った。
「お前、あの莫大なお金はどうするんだ?ここから価値が急落すると思うが」
「……もう全部使い切ったよ」




