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アルフレッド

「東洋か……」


 僕は日本に来ていた。

 魔王を倒した後妙な“祝福”を受けたが、さして支障はない。予定通りに行動するだけだ。


 僕は異世界から来た。いや、転生した?関係ないが僕は仏教徒ではないので転生という言葉が嫌いだ。

 ……そんなことを気にしているのは僕だけか?まあどうでもいい。


 この世界の日本人というのはどうやら感情が昂ると鬼になるらしい。僕も元々の世界では日本人をやっていたので、その違いに驚いたものだ。そして鬼とは悪魔であり、今の僕は結局、きっと悪魔になっている。はっ、そんなことはどうだっていい。


 僕の目的が叶えられればそれでいい。良かった。安心しろ。僕の願いは記憶の引き継ぎだろ。それはこうして成功した。ならば次。次の目標があるはずだ。


 次の目標。それは彼と会話をすること。ということでもないか。エメラルド板を見つけられるのは彼だけだ。


 僕の友人は平行世界を観測する機械を発明した。とんでもないしろくでもない。まあ思い返しはしたが僕には関係ない。どうでもいい。大切なのは僕が望む何かがそこにあることだ。


 それからどうしたのか。どうしたんだろうな。

 覚えていないものは仕方ないさ。エリザベートさんはそう言うだろう。


 頭のいい人だった。しかしそれは他人にわかりづらい類の頭の良さだ。従来間違いを犯すものは頭がいいと思われにくい。彼女もそれが分かっていた。それ以上の知識で補完した。

 結果枢機卿になれた。

 だが問題のある人物なのもまた正しい。


 そうだ、エリザベートと言えばディストリングマン。“彼”の義父。リーザさんと大変仲が良かった。

 人格は成熟して、しかし子供と本気で遊べる程度には子供らしいそんな神だった。人間に友好的だと言ってはいたが、そうだろうか。

 ドワーフが好きだ。なぜなら資料が少ないから。

 人間が好きだ。なぜなら資料が多いから。

 器用で物腰柔らかいけれど底知れない人だった。


 そんな父親の元にいて大丈夫だろうか。


 アレキサンダーを思い出す。半分悪魔だった。おそらくパーティメンバーじゃあ3番目に歳をとっていたのではないか。

 不気味なくらい整った顔をしていたが、半悪魔なので女からはむしろ嫌われていた。

 おそらく誰よりも人間が好きで、そして会話をするのが誰よりも下手くそだった。

 僕から話を振るとたじろぐのだから笑ってしまう。

 まあでも、酒に強いという特技はあった。


 ティファニー。獣人の少女だった。王族らしく、獣人の王族というのはどうやら神の血をひいているらしい。そして王族もまた崇められるとか。その割には少し卑屈すぎるきらいがあったような気もする。

 とはいえ王族だけあって実際強かった。あと結構品があった。良識もあった。普段の言動では分かりにくいが。


 アビゲイル。ハイエルフの女だ。年齢は452歳だった。魔法も技能も勉学も全て完璧で、実に神らしい神だ。エルフは北欧の方で神扱いされているはずなのでその表現で正しい。

 欲しいものは全て手に入れているはずなのにいつも物足りない顔をしていた。

 市場に行くと人が変わったように高圧的になっていたのを思い出す。


 ユージーン。なぜか僕の味方をしてくれた男だ。年齢は61歳だった。クォータードワーフとセディスさんは言っていたか。年齢通りの見た目ではなかった。天使混ざりであるらしく、背中に小さな羽が生えていた。本人はコンプレックスに思っているらしい。よく娼館に行ってアビーに怒られていたな。娼館抜きにしても見境のないやつだったが。



 こうして見ると人間だったのはエリザベートさんだけだった。あまりにも弱い人間を魔王討伐にむかわせるなんて阿呆らしいことだとは分かっているが、身も蓋もない選定だ。


 半悪魔、クォータードワーフ、ハイエルフ、鬼、神、巨人、獣人。そして才覚の高い人間。まず負けない組み合わせだ。その通り勝った。なんの苦もなく。


 そして僕はひとつ気づいた。


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