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過去の一幕

「どう?似合ってるかな?」


「もちろん」


 僕達は冒険の途中、5つの街の中枢に入り込んでいるという悪魔の情報収集のために1、2人で分散していた。

 ジーン一人では不安だとみんなが言うので、僕もこの街に来ることにしたのだ。おそらくここにいると思われる旧い友人にも会いたかったことだしね。


 そうしてその旧い友人は目の前にいるユウである。

 ジーンは……朝起きたら忽然といなくなっていた。


「それにしても大きくなったなぁ。前見た時はこんなに小さかったのに」


「大きくなったどころか私はもう爺ですよ」


「ふむ……?」


 僕は情報収集をするということでユウの伝手を借りて町主催のパーティーに行くことにした。

 そのためにふさわしい格好をしようということで僕はユウに服を選んでもらっていた。


「髪はあげた方がいいと思います」


「……。目を隠しているんだ」


「じゃあサングラスとかどうでしょうか?瞳孔あたりを隠せればいいんですよね」


「サングラス……?ああ、あの黒い眼鏡みたいなものか。どこにあるんだい?」


 案内してくれたので、かけてみる。


「どうだい?」


「似合っていますよ」



 ▫



「ほらどうだ!言っただろう!これが私が幼い頃に出会った、解体・解剖の神セディスだ。はははは!」


 ユウが調子が上がった様子で話す。

 今僕はパーティーの中にいた。


「どうもよろしく。……この人達に聞けばいいんだよね?」


 ユウが頷く。


「今日は君たちに聞きたいことがあって来たんだ」



 ▫



「で、だ。ジーン。僕はしっかり約束は果たしているわけだが……君はいったい何をやっているのかな?」


 パーティー会場を渡り歩いていると、奥で誰かに振られでもしたのかという様子で蹲るジーンを見つけてため息をつく。

 給仕の格好をしている。ここの給仕をやるって……何も言うまい。


「誰だお前。……かっこいいな」


「……。本当に僕のことが分からないのかい?」


 ジーンとは特別仲が良かったわけではないが、それでもここまでいっしょに旅をしてきたのだ。

 忘れられていたら少しショックだ。


「ああ分からねぇな。俺の知り合いにこんな舞台役者みたいなツラをしたやつはいないはずだ」


「ははは!いや、持つべきものはセンスのいい友人だな!……僕だよ僕。セディスだよ。ほら、いい黒髪してるでしょ」


 髪を指さす。

 どうやらユウのおかげでこんな僕でもマシに見えているらしい。


「……は?…………。お前なんだってこんなところに……」


「この街で情報収集をするんだったらここがいいって言われてね。……こういうのは本来認められないからこの街にも来たことはなかったんだけど、せっかくそれらしい理由ができたから僕は今回だけ見逃してあげることにした。そうとすればここに来るのも悪くない。悪趣味なものがたくさんだ。そう、僕の好みに合うものだって……」


「え?お前」


「ああうん。僕が人間に性欲抱くわけないだろ。あと僕なにも見てないから。聞いてもない。あーあーあー」


 手振りで耳を塞ぐ。

 ついでに足でジーンをつつく。それくらいはしても許されるに違いない。どこにいたんだ、お前。


「はあ。結局君さぁ……きちんと情報収集しているのか?」


 置いていた足に力を入れる。


「い、痛い痛い!やってる、やってるから!」


「ふむ……クォーターはここが痛いわけか……ハーフはそうでもなさそうだったが、形に違いは見られないな……個体差の可能性も視野に入れなくてはな」


 メモをとる。

 解剖できれば1番だが、クォータードワーフは捌いたら元には戻らないのだ。クォーターじゃなくても戻らないけど。


「え、お前何してんの?」


 通りがかりの参加客が僕に話しかける。

 そりゃこんなとこでやっていれば見つかるか。とりあえず素知らぬ振りをすることにした。


「?踏んであげてるだけだよ」


「……」



 ▫



「ふふ。解剖資料いっぱいもらえた……!!」


「良かったじゃない。……もしかしなくてもそれが目的だったわね?」


 僕達は情報収集を終えて集まり直していた。


「俺に見せてくれないか?」


 ゼンが口を開く。

 僕に話しかけてくるのは何気に初めてではないだろうか。


「え、う、うん。いいよ……」


 君を解剖したいですって言ったらいいよって言ってくれるだろうか……さすがに無理かな……。半悪魔だし丈夫だろうし、捌いても大丈夫だと思うんだけどな。


「……。いやいい」


「そう?」


 ……失敗したかな。会話って難しい。


「あの!情報を交換しあいましょう!」


 アルが目を瞑りながら言う。人殺しに躊躇いがないくせして、こういうのは怖がるのか、よく分からないけど、そういうことらしいので資料をしまう。


「可愛いな、アルは」


 ティフがアルの頭を軽く叩く。


「暴力反対。そういうの良くない」


 アビィが半目で言う。

 今のはコミュニケーションの一種だと思うよ。


「はあ。もうなんでもいいから。私から言うわね。私の担当したところは副知事が悪魔だったわ。とりあえず恨みを持ってそうな人に誅殺させたけど、それからどうなるかは様子見ね」


 リズが困ったような顔で言う。

 相変わらずやることがえげつないな。


「さすがリズ。ええと、僕のところは大きい商家に子飼いにされている芸人で……商人との交渉の結果手に入れたんだけど、まだ他にもいるかもしれないからこれも様子見かな」


「……もしかしてセディスさんが踏んでるソレですか」


「そうだよ」


「ジーンさんがいないのも」


「そうだよ」


「……」


 アルの顔が曇った。

 しょうがないだろ、ジーンが僕達の有り金を全て使ったとか言うんだから。

 僕個人の資産を使えば特に問題なく悪魔も買えただろうけど、それは今アビーに禁止されているのだった。ジーンのためにならない、だっけ。


「……。楽しそうだったしジーンもきっと幸せだよ。君もそう思うよね?」


 足元の悪魔に問う。


「ハイマチガエアリマセンセディスサマ」


 踏んでる悪魔は腹を開けてからどうもずっとこんな感じだ。

 頭の方はいじっていないから支障はないはずだけどな。


「……怖。私とゼンの方はあの魔法学校の会長の夫だった。さすがに消すのはまずそうだから1回帰ってきた」


「そういうことだ」


「僕は……市役所にいたので普通に殺しておきました」


「えらいッ!私は宗教団体?のお偉いさんだったから、警察とメディアを使って街から追放するための裁判を今やっているところだッ!」


 さすがティフ。今のところ君が1番まともだよ。

 アルのところは今殺人事件として騒がれている頃だと思うがどう後始末をしたものか。


「ねえねえ君の名前を教えてよ」


 足元の悪魔に問う。


「……」


「ははは、知ってるんだけどね。まあいいか。さっきアビィが言った悪魔のことを悪魔って証言してよ」


「それをしないとどうなるんですか?」


 悪魔が不安そうにしゃべる。なんだ、流暢に話せるじゃないか。


「頭も解剖するよ。証言してもするけどね!……証言してくれたら慎重に切るから思考回路に差は出にくいかもね」


「ヒッ……」


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