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「僕が貴女を支持していると上に報告してもらって構いませんよ」
「……ぜひそうさせてもらいます」
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「ええと、マモンだったかな」
「どうしますか?討伐に参加しますか?」
マモンについての予言はない。
災厄の予言は東の方、とあったはずだ。
「……今回は無視でいいかな。悪魔と言っていたよね?悪魔ならば教会の領分だ」
そして伝説級冒険者にわざわざ依頼するということは場所が特定できているということである。
伝説級は兵器扱いされるので、不確実な情報の元で不特定多数が呼ばれるなんてことはまずない。そして依頼が出ているのは僕だけではなさそうな口ぶりだった。
宣戦布告はしているようだが、前の魔王と違いまだ被害は出ていないように見える。随分律儀な悪魔なようだ。
「そして今の教会の戦力は過去に類を見ないくらい高い。まず負けないだろうね」
枢機卿の中でもリズは戦闘力が低い方だ。リズは手数が多いタイプである。あんまり使わないけど偽典からの引用も扱えるらしいしね。
そういうことで、その場所には強力な枢機卿が数多く集めているだろう。
そして異質な存在……聖女がいる。生きながらにして認められた聖女。彼女の力は人知の及ばないものと言われているとか。
全部リズに聞いた話だけどね。
「もしかしてエリザベートさんが急いで帰っていたのはこのためだったのでしょうか」
「ああ……そうかもしれない」
「そうですよねー。エリザベートさん旅についてきてたわけですもんね?つまり同行していた2ヶ月の間にマモンの話が出たわけですね?」
アンジーが御者席から声を上げる。
そういえばリズが教会と頻繁に連絡を取り合っている時期があった。あれからしばらくは何食わぬ顔で僕達と一緒にいたため今まで忘れていたが、そういうことだったのかもしれない。
「そうなると結構猶予があるのかな……?一応特定されているだろう出現場所に出向いておくべきか……悩ましいね」
「ひとまず帰りましょうトリ様。訴訟するのが先です!」
「えっ」
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それから僕達は、裏切り者として特に酷い様に書かれていたマイクに再び会いに行った。……裏切り者なのは間違ってはいないけどね。そして彼と結託して、魔王討伐の経緯を勝手に本として出したアメリカの出版社を訴えた。アメリカで訴訟を起こし無事勝訴したりした。
この勝利により、マイクの名が知られるようになったらしい。それは大変喜ばしいことだ。4ヶ月共にしたんだ。魔王討伐には参加していなかったとはいえ、道中の功績まで無視すべきことではない。
レイは弁護士資格に必要な知識を1週間で全て覚え、相変わらずの優秀さに驚愕したりとかそんなことがあった。
目まぐるしい日々だった。僕は何もしてないけど。
……マモンの話を聞いたのは2年前のことだ。
もう大分忘れかけている僕だったが、聖女の活躍を新聞で見てふと気になったのだった。




