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ギルドに所属する理由

「頼みたいことがある」


 僕はギルマスからギルド室に呼ばれていた。


「なにかな?」


「魔王討伐に参加してくれないか」


 魔王討伐。


「ああ、悪魔のトップのアレか。なんでまたそんなものを?」


「……。アレって。新しく魔王を名乗っている悪魔が今人間やエルフ、ドワーフ、獣人に宣戦布告をしたんだぞ」


「へえ……。……。……僕に関係ないなぁ……」


 僕は人間ではないし、精霊でもないし獣人でもない。

 魔王討伐ねえ。


「お前にも関係はあるはずだぞ。神は人間の祈りによりここにいるんだろう?」


「……。そのデマはどこが出処なんだろ。僕達……いや僕は違うが、とにかく人間が誕生するはるか前から存在しているからね。……人間のおかげで増えたり、器用になったりはしているのかもしれないが」


「なんだ?人間は傲慢だって言いたいのか」


 ギルマスが昔通り好戦的な調子で、牙をむき出しにして笑った。


「何を今更。神殺しの武器なんて作ってさ、そんなもので殺せるわけないのに……可愛いね」


「どうも……俺はちゃんとお前に感謝しているからな」


 相変わらず律儀なやつだ。だからこそギルマスまで上り詰めたのかもしれない。

 別に僕に感謝する必要はないと思う。勝手に自分で助かっただけだろ。


「……。この魔王討伐に成功すればお前は伝説級の冒険者だ」


「……僕は他の誰かの冒険を奪いたくはない」


 そう言えばそうだったなぁ。伝説級は、冒険者の中では1番上のランクだ。とても数が少ないと聞く。でも僕が伝説級になる必要は特に感じない。少し面倒まである。どうにかして断ろうと、結局いつも通りのことを言う。


「そう言って未だに熟練級のままじゃないか。俺としてもお前にはさっさと俺と同じところには上がってほしいんだよ。分かるだろ?俺だって……。いや、そもそも今集まっているパーティは斥候が足りない。強い斥候ってさ、少ないんだよ。だから頼む」


「嫌だ、斥候なんて別に強くなくていい。器用ならいいじゃないか。……それでその魔王って言うのはどこにいるんだ」


「さあな。東の方らしい」


 ……。…………。


「……。気が変わったよ、参加してあげよう」


「?そうか?」



 ▫



「ということで、僕は魔王討伐に参加することになったんだ」


「東に何があるんですか?」


「行ったこと無かったからね。たまにはいいかなって」


「トリ様らしいです。……ギルド長と親しそうですね?」


「ああそれは───────」



 ▫



「……。また生贄が届いたんですか」


「そうらしい。全く私達は生贄を要求したことはないのに。こんなことだと古の太陽神のように滅ぼされてしまうだろう」


「それで大神様はなんて?」


「顔はいいが少し歳が行きすぎているから落ちた地点の近くにいたものに渡すようだ。今回は私達が1番近かったかな」


「なるほど。……僕にくれませんか?」



 ───────



「やあ」


「……」


「別に食べたりしないから」


「小さいな。神ってもっとこう……」


「ああ、怖がらせないようにね。それとも年齢の話?僕はまだ幼いからね」


「ガキってことか」


「そういうことだね。安心してくれていい、この通りまだ幼い僕は君のことをとって食ったりはしない。ああ、文字通りの意味じゃなくてね?良かったね僕で」


「……」


「差し支えなければ君の夢でも教えてもらえないだろうか」


 僕は人間を見るのは初めてだった。

 友好的に接したいと思っている。できるだけ好かれやすいように笑いながら話しかける。


「夢なんて言ってもしゃーないだろ、もう……」


「今君がいるのはどこだと思う?そう、神が集うオリュンポスだ!君が叶えたいと思うなら叶わない夢なんてない。もちろんそれ相応の行動は必要とするけどね」


「……悪魔みたいなことを言うのな」


「悪魔とは違うさ。あくまで僕達は僕達のために動くだけ、悪魔と違って。悪魔だけに。なんてね」


「はは、つまんねー」


 少しだけだが笑わせることに成功した。

 目の前にいる彼はいったい何歳なんだろうかと思う。僕より年上だろうか年下だろうか。

 見た目だけなら僕よりはるかに大人だが、人間は見た目が同じでも神とは違ってはるかに弱く、歳をとるのが速いらしい。本に書いてあった。どうなっているんだろうか。


「君にチャンスをあげよう」


 そうだ僕は人間と話しているんだ。

 気分が良くなり顔にも自然と笑みが浮かぶのを自覚する。


「これがなんだか分かるかい?僕の加護をかけたナイフだ。これがあれば君は冒険者として名を残せるだろう」


「……な」


 望みを当てられて驚いているのだろうか。

 大きく目を見開いている。


「……君がここに辿り着いたのは奇跡だと思う。大気圏を越えて数々の小惑星を越えてここまで辿りつけるのなんて生贄の中でも極小数だ。

「さて、君はそれをもう1回やれって言われたらどうする?

「壊れた宇宙船は僕が直してあげる。僕はこういうのは上手くないから元の機能以上のものはつけれないが。

「そう、つまりさ。自力で地球に帰ってみせてよ。ナイフは無条件であげるけど、それを使うところまでいけるかは君次第だ」


「……」



 ▫



「と、いうことだよ」


「……それで生還したってことですか」


 そうなるね。

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