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2-12

「この手だけは使いたくなかった……」


 リズの知り合いである占い師の方を呼んで、マイクの居場所を見つけてもらうことになった。


「さすがリズ頼りになるね」


「馬鹿にしてるの?」


 睨まれる。

 リズの言う話を信じるなら、腕は立つが相当な変人らしい。あまり紹介したくなかったとかなんとか。


「まずぅ、この円形の穴が空いた、円盤に糸を通しまーす」


 気の抜けるような声でその占い師である青年は話す。


「回しまーす」


 物騒な占い方だった。

 僕は避けたが、当たったらかなり痛そうだ。


「やった、俺は全てわかった!!」


 円盤を投げ出しながら言う。


「……つらい」


 リズは何やら落ち込んでいる。


「何がわかったんだい?」


「お兄さん、アナタ昨日半巨人の解剖記録買ったでしょー」


「君すごいな!そんなことまでわかるのか!!」


 本当に腕は立つらしい。これは信用できそうだぞ。


「違うわよ」


「はい。ええとーマイケル…違ったっけ?まあいいや、そいつ今西フランクの王城の地下室で幽閉されてるよ」


「おおー」


 思ったより近くにいるな。いや逆か?近くにいるから関連深そうな事件が起こっているのか。


「名前間違えてますよ」


 本人もそこは分かってそうだし、細かいことはいいじゃないか。


「こいつの占いは百発百中よ。占い方に一貫性はないけどね。前の時は紙袋を依頼者の頭に被せたんだっけ……」


「ふうん。とりあえずお代は何がいいかい?」


「お兄さんの目がほしーなー」


 目かぁ。一人の人間に渡すには少し強すぎるなぁ。

 僕自体はすぐ治るし別にいいんだけどね。


「うーん。僕の加護でもあげようか。君に良き苦難と成功を!」


「う…悪寒がするぅ」



 ▫



「ということでまた戻るわけですが。アンジー、君も行きたいかい?」


「行きたいですー!」


「じゃあ行こう」


「馬は私が術をかけておくわ」



 ▫



 そうだ。余計な軋轢を避けるためにも歯は抜いておこう。このへんだったかな。


「え」


「いる?」


「いらないわよ……」


 リズが顔を顰めながら言う。


「俺もらってもいいですか?」


「ええー私も欲しいんですけど」


「もう一本抜こうか?」


 そんなたわいもない会話をしていると、ゼンにエンカウントをした。

 ……1番会いたくなかったんだけどなぁ。


「ゼン、君マイクの居場所知ってる?」


「……」


「深呼吸してみるといいんじゃない」


 リズも覚悟を決めたのか歯に衣着せぬ物言いで、ゼンに忠言した。


「すー、はー。……ああ。だいぶマシになったな」


 ゼンが少し昔のような様子を取り戻した。


「俺の知るところではないが…おそらく王が地下牢にでも入れたんじゃないか。アイツ頭お花畑だから説得できると思ってんだよ」


 苛立ったように首を振って、それからため息をついた。


「何を?」


 リズが聞く。


「周りの国と同盟を結びたいらしい。王は帰ってきた俺が怒りを抑えられなくなっているのを見て、これを他国の弱みとして使えると思い込んでいる」


 ついに怒りを抑えきれなくなったのか、壁をぶん殴って、そこに穴が空いた。


「分かってた、分かってたさ、俺が感情を露わにすればこうなるってことくらい。だから、だから俺はいままで……」


「ふうん。そういう話ならさっさと人型をやめればいいのに、半悪魔っていうのはよく分からないな」


 これだから【半分】を見るのはやめられない。

 こっそりニヤつきながら僕はそう思った。


「そういえばさっきのカナという名前の少女はどうしたんだい?」


「寝てる。ああやって動くと疲れて動けなくなるからな。……地下牢に行ってみるか?」


「ぜひ」



 ▫



「今代の王と俺は幼なじみでな。……俺は幼くはなかったが、なぜだか歳をとるのが遅くて、不気味がられていて、それで……街にお忍びで来ていた幼いアイツが俺のことを初めて友達と読んでくれた。ああ、今思えば打算だったんだろうな。幼いから俺を裏切らない、騙さないなんて、それこそ俺が苦しめられていたそれじゃないか」


「歳をとるのが遅いのは君がそう望んでいたからだと思うよ。僕の試算だとそんな感じだ」


「……あのなあ」


 ゼンはリズに過去のことを話していた。

 そこで僕は話の区切りで得意げに推理を披露したのだった。

 ゼンは僕の言葉に少し眉をしかめて、しかし嬉しそうな顔で後ろにいる僕を見た。

 どうやら彼が望んでいた対応とはこういうものだったらしい。少しバツが悪くなった。


「……今の貴方は昔よりかなり話しやすいわね」


 リズが顔をかたむけながらゼンに向かって言う。

 リズはゼンの前を歩いている。

 非常に彼女らしい、しかしゼンの前では珍しい行動だった。


「そう、なのか?」


「口を開かない人間とは話せるわけもないからね」


「……厳しいな」


「そういうのがお望みなんだろ?」


 僕はにこやかに笑いながら片目をつむる。


「安心するといいよ。僕は誰かを嫌うことなんてない。危害を加えるとしたら、それは僕の存在意義なんだ」


「難解だな」


「ははは」

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