表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/68

2-7

「よく考えたらアルフヘイムのエルフだから淫魔の魅了が効かなかったんだなぁ」


 そういうところも特別、精霊に近いのかもしれない。僕の手元に解剖記録がないので、詳細は分からないけど。


「トリ様さては見せ場を譲りましたね?」


 レイが確信を持ったようにそう言う。


「えーさすがにそんなことはないでしょー」


「……僕はウソつかないよ」


「トリさんわかりやすいですねえ……今のは私にも嘘だってわかりましたよ」


 ジト目になったアンジーがそんなことを言った。さっきまで疑っていなかった彼女にそう言わせるのだから、僕は本当に見ていて分かりやすいのかもしれない。



 ▫



「昼食できましたよ」


「おお……凝ってるね……」


 オムレツだ。……野営でオムレツかぁ。しかもどうやったのか、ちょうどいい焼き加減だ。美味しいからいいや。何も言わないでおこう。



 ▫



 僕は馬車の中から情報収集をしていた。


「巨人討伐だが、北の方にいるジャイアンツ……巨人はどうやらリトーの血筋らしい。噂だけどね」


「リトー、巨人。ああ、アーサー王伝説の」


「そうそう。いかにも英雄譚って感じだ、悪くないね」


 レイに冒険の経験を積ませたい。

 それが旅に出た最大の理由だった。おあつらえ向きじゃないか?


「レイはアーサー王伝説読んでたよね?」


「はい。まあ……」


「好きじゃなかった?」


「そういうわけではありませんが……俺が読んだのは要約版で、主に恋愛関係ばかりでリトーの話は載っていませんでした」


 アーサー王伝説といえば不倫だもんね。違うか。

 登場する男性は美形が多くご婦人方からの人気も高かったとか。


「残虐な王で各地の王を殺し回っていた巨人だ。ランスロットの父を殺したんだ。そうしてアーサー王に倒された。だいたいこんな感じ」


「なんでその子孫は暴れているのでしょうか」


「さあ……」


 あくまで噂だしなぁ。リトーとはなんの関係もない可能性だってある。


「そうだ!せっかくだから西の方へ黄金の林檎も取りに行きたいね。ああでも食べる時は気をつけて。人間のちっぽけな体じゃあ、丸ごと食べたら爆発するからね」


「なんてものを食べさせようとしてるの……あと私はそこまでの時間ないから」


「そうか……残念だ」


 気を取り直して、次の冒険の提案をすると、リズに断られてしまった。残念だけど仕方がないか。リズ忙しいしね。


 僕がとりに行きたいのはガイアがゼウスとヘラに送った黄金の林檎の森だが、北欧の方にも似たようなものがあるという。

 そちらの方は食べると不死身になれるとか……。最初から不死身の僕には関係のない話だ。

 でもそれもそれで楽しそうだよね。


「巨人と言うとマイクを思い出すなぁ」


「マイク?なんで?」


 解析で見ると、マイクの種族表記は北欧の巨人になっていた。実際のサイズ感は全然巨人とは無縁で、リズが訝しむのもよく分かる。

 言われてみれば程度の話ではあるが、マイクの体つきは巨人の解剖図にちょっと近かった気がした。


「巨人みたいだなぁと常々思っていてね。気のいい男だったからワンチャン許されないかなと思って解剖させてほしいと何度かお願いしたんだよね……のらりくらりと躱されたけど……」


「それは、そうね」


 リズも少し覚えがあるのか気まずそうな返事だ。


「マイクって誰ですか?」


 レイが聞いてくる。そうか、マイクのことは僕達を取材した新聞とかにも載っていないのか。こういうのは達成した者が名前を残す、だっけ。


「ん?うーん。途中で仲間になって途中で仲間を辞めた男だよ。入っていた期間は4ヶ月くらいかな?」


「そうね。そのくらいだと思うわ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ