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「最近さゆさん休み時間に教室にいないことが多くない?」

「そうでもない」

「そうかな」

「今もいるじゃない」

「さっきはいなかったよ」

「なんなの、わたしはトイレに行くだけでいちいちユウに言わないといけないの?」

「トイレだったんだ。ごめん」

「わかればいいよ。夏からの癖で水分取りすぎでトイレが近いだけ。わざわざ言うほどのことでもないから言わなかっただけだよ」

「そう」

「ユウは変わったことない?」

「ん?特にないけどどうしたの?」

さゆさんは普段ユウのことを気にかける発言はあまりしない。

心配そうな表情をたまに見せたりすることはあったりするのでユウとしては気にしてくれてるんだなと悟ったりはしていたが。


「そう。ならいい」

「うん。まぁ相変わらずファンクラブとかわけのわからない追っかけさんに付いてこられたりもするけどまぁあれは前からだし特に何かされるわけでもないから」

「迷惑なら迷惑って言えばいいのに」

「相手するのは面倒だけど、ぼくのこと気に入ってくれてるわけだから無碍には出来ないよ」

「ユウはやさしすぎる。そんな風だとその内何か起きるよ」

「何か?」

「なんとなくそう思うだけ」

「そう。でもさゆさんがそう思うなら気を付けてみるよ」

「ユウはもう少し何が大切なのか考えた方がいいよ」

「え?」

「わたしが言うことじゃないと思うけどね」

「え、どういうこと?」

「優先するべきことはなんなのか、考えてみるといいと思う」

「うん、わかった。考えてみる」

「そのために捨てなければならないものが出てきたときに迷わないように覚悟を決めておいたほうがいい」

「何か起きてからじゃ遅いこともあるしね」

「そう」

「ゆっくり考えてみるよ」

「ん」

ユウはなんだかおかしな気分だった。

いつもなら途中で切ってしまうさゆさんが最後まで語ってくれる。

何かが起きているんだろうか?

それとも心配してくれて言ってくれてるんだろうか?

なんにしてもさゆさんの言う通り確かにそれはきちんと考えるべきだ。



家に帰ってから自分の部屋でリラックスしながら考える。

その方が考えがまとまると思ったからだ。



ユウは自分が鈍感だと気付いている。

だからこそ気付くのが遅くなっても判断のせいで間に合わないなんてことがないように悩むのだ。


自分にとって何より大切なのはなんだろう?

人に嫌われるのは怖い。

誰からも必要とされなくなるなんて絶対に嫌だ。

でも、それって誰でもいいのか?

この前の委員長みたいな人にでも必要とされてればいい?


いや、なんか違う。

そういうことじゃないんだ。

ぼくは必要とされたい。

けれど、それは誰でもいいわけじゃない。



あぁ、なんだ、そうか。

簡単なこと。


ぼくはぼくの大切な人たちから必要とされたいんだ。


そのためならなんだって出来る。

他の誰もに嫌われたってぼくはなんでもしてやる。


それさえわかっていれば、ぼくはなんにだって負けやしないだろう?

「うん」

覚悟は決まった。

ぼくは大切なものを守るためになら戦える。

他のすべてを捨てることだって出来るから。


さゆさんはぼくが守ってみせる。



ユウはそんな強い決意を胸にその日は床につくのだった。

その気持ちがどういう意味を持っているのか、そこまで気が行かないままに。

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