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「なるほど」
「え、もうわかったの?」
「いや、まずユウは料理しない方がいいよ」
「デスヨネー。よく言われるんだよ。なんでかわからないけど」
「見てればわかるよ」
ユウはこの前のさゆさんとの話で料理を教えてもらうためにさゆさんの家に来ていた。
そしてまず料理の腕を見るということで玉子焼きを作ることになったのだが。
「見事に失敗してる」
「うまく巻けないんだよねー」
「そういう問題じゃないよ」
「ごめんなさい、さすがに自分でもわかる」
「わたしは玉子焼きを作ってって言ったんだけど」
「ん?玉子焼きを作ったけど」
「うん、ユウはまずその感覚がおかしいね」
「え?」
さゆさんはため息をつきながら皿に盛られたそれを差し出す。
「これは玉子焼きとは言わない」
ユウが作った謎の物体は白くもったりとしたよくわからない物体だった。
「玉子焼きっていうのはたまごとせいぜい砂糖やしょうゆ、だしを使うくらいなんだよ。小麦粉とかバター入れて一体何を作るつもりだったの」
「違うの?」
「ユウはまず感覚がおかしすぎるよ。普段からきっと作るところとか見てないんでしょ。さすがにこれはないよ」
「うーん」
思い返してみれば親が料理をするところをじっくり見た覚えはない。
「でも食べれるものしか入れてないよ」
「そういう問題じゃないよ」
「よくわからない・・・・・・」
「今からわたしが玉子焼き作るから見てて」
さゆさんがてきぱきと用意していく。
それを見ていると本当に料理に慣れているんだなぁとユウは感心してしまう。
用意されたのは卵とおわんと砂糖としょうゆ、菜ばし。
フライパンはさっきユウが使ったものをそのまま使うようだ。
「玉子焼きはすごく簡単な料理。けれどそれがゆえに工夫でだいぶ変わる」
「料理の基本とかも聞くよね」
「まぁよっぽど失敗しにくいものだしね」
「普通は巻くのに失敗するくらい、かぁ」
「小麦粉入れる人は初めて見たよ」
「料理しないからなぁ」
「前は何作ったの」
「粉ふき芋」
「あれもあんまり失敗しないと思うんだけど・・・・・・」
「なんかすごいものが出来たよ」
「想像できない」
「黒くてどろどろした感じ」
「何したの・・・・・・」
「え?いや、味付けた方がいいのかなって」
「それで?」
「味噌としょうゆと片栗粉」
「ユウは粉が好きだね」
「粉をかけた芋じゃないの?」
「きょとんとそんなことを聞かれるのがびっくりだよ」
「だってわからないから」
「なんで聞かないの。そもそも片栗粉とかあん以外ではほとんど料理に使わないよ」
「そうなんだ」
「少なくとも粉ふき芋にそんな奇想天外なことをしたのはユウだけだと思うよ」
「ごめんなさい」
「いや、まぁぜんぜんしない人はしょうがないのかも。とりあえずわたしがユウに料理の基本から教えていくから」
「ありがとう。助かるよ。教えてくれる人がいないからさ」
「一人暮らしとかするかもしれないんだから覚えておいて損はないしね。このままじゃ怖いよ」
「返す言葉がないね」
「ある程度基本さえわかればあとはレシピさえあればなんでも作れるから」
「がんばる」
「まさかわたしが教える立場になるとは思わなかったよ」
「うん?」
苦笑い気味にそんなことをこぼすさゆさん。
何か変な思い出でもあるんだろうか?
ユウはそんな風に首をかしげる。
「わたしも最初から料理が出来たわけではないよ」
「そうなの?」
「ユウほどではないけど、あんまり器用じゃないから苦戦したものでね。うちの母はあなたは料理に向かないなんて苦笑いしてたけど。まぁ今じゃ一人暮らしで自炊できるようになったし成長するものだなって。そしてユウに教える立場になってるしね」
「そう。じゃあぼくもそんなさゆさんに教わればきっと上達するね」
「ユウの努力次第だよ」
「がんばるよ」
「わたしに出来ることはするから」
「ありがと」
そんなこんなでユウはさゆさんから料理を教わることになったのだった。