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「あれ、さゆさん足どうしたの?」
「・・・・・・なんで気付くかな」
「うん?」
「ちょっと階段で捻った」
「大丈夫?保健室行ったほうがいいんじゃない?」
「これくらいなら平気」
ほとんど普通に歩いているように見えるがいつもよりかすかに足をずっているように見えて心配になったらしい。
たまに鋭いユウだった。
「気を付けてね?」
「ん」
「ん?階段?なんで階段使ったの?」
ここは一階でトイレもこの階にある。
前の授業もこの教室で行っていたため特に階段を使うようなことはないはず。
「職員室に行ってた」
「あぁ、そうなんだ。何かあったの?」
「課題忘れしたのかと勘違いされただけ」
「む、それはひどい。誰なのその先生」
「渡部さんだからしょうがない」
「あー、あの人か。それじゃ何も言えないね」
「うん」
渡部と言うのは物理の教師だが少しぽややんとした感じで忘れっぽいタイプの先生だった。
もうみんな諦めかけているところがある。
「ユウ」
「ん、何?」
「最近うわさとか何か聞いたことある?」
「うわさ?なんの?」
「ん、いや知らないならいい」
「え?なんのこと?」
「別に」
「いや、何かあったの?それだけじゃよくわからないよ」
「なんか怪談が流行ってるらしいんだよ」
「怪談かぁ。前からよく聞くやつならわかるけど最近はあんまり聞かないや。さゆさん怪談とか好きなの?」
「うん」
「なるほどね。また誰かに聞いてみるよ」
「いや、そこまでしなくていいよ」
「そう?」
「別にネットで調べればどれだけでも出てくるしそこまで必要とかじゃないから」
「そう。まぁまた何か情報収集とかで手が必要なら言ってよ。なんでも手伝うからさ」
「ありがと」
きっと小説の題材とかに使ったりするんだろうなぁとぼんやりと考えながら何気なく教室の外を見る。
人通りが激しい。
少ない休み時間だから人の動きが激しいのかもしれない。
そんな中おかしな動きをする人が数人。
この教室の中を見てこそこそと話している。
「んん?」
「どうしたの」
「いや、あのグループなんか教室の中見てこそこそ話してるからなんだろうと思って」
「気のせいじゃないの」
「そうかなぁ」
そう言うさゆさんが見たときにはもうすでにその少女たちは人ごみにまぎれて見えなくなっていた。
休み時間が終わる。
なんだか妙に嫌な予感を感じつつどうすることも出来ないまま時間が過ぎていった。