第8話 週末に妹たちと合宿③
布団の中の妙な違和感に気づき、目が覚めた。
「玲華……?」
そう言えば、一緒に寝てたんだったな。と言うか、玲華ってこんなに寝相悪いのか。俺は仰向けに寝ている。その上にうつ伏せの状態で玲華が乗っかっている。何をやったら俺の上に乗っかって来るのだろうか。とりあえず起こさないように起床した。
今日が、合宿最終日。しかし、窓の外を見てみると大雨だ。天気予報は晴れだったが、豪雨と言えるほどの量の雨が降っている。ここまで降ってると帰るのも面倒臭そうだな。そんな事を考えてると、愛美さんから電話がかかってきた。
「もしもし」
「はい。なんですか?」
「優たちって今、合宿みたいな事してるんだっけ?」
「はい、そうですけど」
「今そっちって雨降ってるんでしょ?」
「土砂降りですね」
「良かったら、車で迎えに行こうか?」
「え、いいんですか?」
「うん。暇だしね」
「じゃあ、お願いします」
「了解。じゃあ今から向かうね」
「はい」
部屋にいてもやる事がないので、リビングに向かう。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。って、葉月だけか。凛はまだ寝てるのか?」
「さっきまで起きてたんですけど、色々あって三度寝中です」
「三度寝って……」
「そう言えば、玲奈ってお兄さんといる時はあんな感じなんですか?」
「やっぱ気づいた?」
「そりゃ、気づきますよ」
「確かに家ではあんな感じだな。結構ベタベタくっついてきたりする」
「へー、そうなんですか」
「葉月も大幹と二人暮らしなんだっけ?」
「はい、そうですよ」
「やっぱ、二人暮らしって大変じゃないか?」
「ほんと、大変ですよ。お兄ちゃん家ではダラダラしてるし」
「あー、なんかダラダラしてそうだな」
「飯とかも葉月か作ってるのか?」
「基本はそうですね」
「家事やるって大変だよな」
「お兄さんも家事してるんですか?」
「ああ」
「玲奈って家事しないんですか?」
「めちゃくちゃたまにしかしないな」
「へー、意外」
葉月と話をしていると、華がやって来た。
「おはよー」
「おはよう」
「そういえば、玲奈消えてたけど、もう起きてるの?」
「ああ、玲華なら俺の部屋で寝てる」
「え……まさか兄妹でそんなことするなん……」
「いやただ一緒に寝ただけだぞ!?」
「ほんとに〜?」
「仮にそうだったとしても、玲華から俺の部屋に来たんだぞ?」
「それもそうか」
「てか、玲華からだったら良いのかよ」
「何となく、お兄さんからってよりは」
くそ、何て不平等な世界なんだ。
「なんで、一緒に寝てたんですか?」
「玲華が寝付けないって、俺の部屋に来て一緒に寝ようって」
「なんか、可愛いですね」
「そうだろ」
「……それで、今日雨降ってるけど、どうするの?」
「なんで無視されたかは、ほっておいておくが……愛美さんが迎えに来てくれるらしいから、適当に帰る準備しながらこの別荘の中で待機だな」
「へー、愛美さん優し」
みんな同じ高校に通ってるから、愛美さんのことはみんな知っている。
「だから、とりあえず片付けしとけよ」
「はーい」
「じゃあ、俺は玲華たちを起こしてくるから」
「わかりました」
リビングを後にした時、こんな話し声が聞こえた。
「高校生の妹って、兄と一緒に寝るもんなのかな?」
「いや、寝ないと思う」
だよな。そうだような。玲華の距離感がおかしいんだよな?
自分の部屋に戻ると、玲華がうとうとしながらベッドに座っていた。
「おはよう、玲華」
「んん……おはよ、お兄ちゃん……」
玲華は、寝ぼけていたりすると『お兄ちゃん』呼びになる。昔は『お兄ちゃん』って呼ばれてたが、中学頃から呼び方が変わった。中学に入学したタイミングで『お兄ちゃん』は子供っぽいし、『兄さん』は冷たい感じするしってことで、名前で呼ぶことになった。
「あれ……何で私優くんの部屋にいるの……?」
「寝れないって、玲華が来たんだろ?」
「あ、そう言えばそうだった。変なことしてないよね……?」
「してねーよ」
その後、昼頃に愛美さんがやってきてみんな車で帰った。
順番に家にメンバーを送り届け最後が俺と玲華になった。電車ではなく車だったため、帰りが少し遅くなってしまった。そのせいか、玲華は俺の肩に寄りかかり眠ってしまった。妹の寝顔をこんなに間近で見られるのは兄の特権だろう。
「着いたよ」
愛美さんの声で、玲華は目を覚ました。
「今どこ……?」
「丁度家に着いたところだ」
玲華は欠伸をしながら、小さく伸びをする。
「じゃあ、私はこれで」
「はい、ありがとうございました」
「ありがと、お姉ちゃん。また明日?」
「そうだね」
結局雨は、車に乗ってすぐに止んでしまった。
読んで頂きありがとうございますm(_ _)m
面白かったから、ブックマークや評価をして頂けると嬉しいです。