パワードスーツのマント
シュレイノリアのパワードスーツの組立終わると、シュレイノリアが収納魔法から何かを取り出していた。
出てきたものは黒い布の様だ。
それを手に取るとシュレイノリアはスーツの背中にその布を取り付け始める。
それを見たジューネスティーンが尋ねる。
「おまえ、何しようとしてるんだ。」
「マントを付ける。 魔法職にはマントは必須。」
そういうと、右肩から背骨の部分にマントを付けていく。
マントは2枚あって首元から肩、そして背骨のところまでで、右用・左用になっているのでスーツ開け閉めには影響が出ない。
また、腕の前は二の腕の途中から下まで切れ込みが入っていて、腕が出せる様になっている。マントと言うよりポンチョを右用左用に切った様な形になっている。
各部のパーツを作っている時に、シュレイノリアが、首や肩のところに細かな細工を要求してきたのだ。
なんで、首や肩の辺りに、突起の様な加工をするのか不思議に思っていたのだが、ジューネスティーンは、シュレイノリアに言われるがまま、加工を施していたのだ。
それが何なのかとも思ったが、対して気にもしていなかったのだが、今、シュレイノリアが取り付けているのを見て、マントの固定用だと分かったのだ。
シュレイノリアがパワードスーツに取り付けているマントには黒地に黒の糸で刺繍が施されている。
模様は胸というより首筋の少し下に薔薇の花があり、薔薇の花の下枝葉がデザインされたものだ。
左右の切れ込みを中心に左右対象に刺繍が施されていて、所々にボタンが取り付けてある。
見たところボタンを入れる穴がどこにも無い事から飾りボタンだと分かる。
「そのマントは今使っているのと同じなのか。」
「施されている魔法は同じ、防御と魔法効果の向上に寄与する魔法を施してある。 それと、音を相殺する機能を持たせた。」
ジューネスティーンは、その話の中に自分の知らない内容が出てきた。
「音を相殺って、何。」
「スーツを動かす時に出る金属の擦れる音が気になったから、その音を消す魔法紋を描いた金属を飾りボタンとして付けている。」
それを聞いたジューネスティーンが顎に手を当てて考え込む。
パワードスーツは、ベアリングを使って動きをスムーズにさせてはいるが、動かした時にどおしても金属が擦れる音がする。
ガチャガチャとフルメタルアーマーの様にパーツが揺れて当たる様な音では無いが、金属が擦れる様な音は、この世界では聴き慣れない音なのだ。
不自然に感じるなら、人はそれが何なのか、興味本位で思わず見てしまうだろう。
それは、人の無意識に働きかけてしまう事になり、不必要に人目に晒す事になる。
音を消す事ができるなら、音を聞いて振り返る事も無くなる。
音に敏感な魔物にも対処ができるのではないか、魔物の索敵範囲を狭める事になるなら、その音を消す魔法紋を描いた飾りボタンは、有効なパーツとなる。
そう考えながら、ジューネスティーンはシュレイノリアに聞く。
「音を消すって、どうやって行うんだ。」
シュレイノリアは、説明するのがちょっと面倒だと思ったようだ。
表情が少し曇ったが、ジューネスティーンには話しておく必要があると思った様子でジューネスティーンを見る。
この飾りボタンによって、メンバーの生存率が上がればそれに越した事は無い。
ならば、ちゃんと話しておく事にしたのだ。
「音は、いろいろな周波数の波の集まり。 波の合成をこのボタンが行なっている。 波は同じ波形を与えると、足し算されて、2倍になるが、正反対の波長を出すと打ち消されてゼロになる。 出てきた音と逆相の波を出す事で出てきた音を打ち消して聞こえなくしている。」
音波は空気中を振動して伝わる。
波の合成は、同相の波長なら2倍になるが、出ている波長と逆相の波を出すと打ち消しあってしまい消えてしまう。
音を消す方法を聞いて、理に叶った方法だと分かると、どれだけ音が消されるのか効果を知りたくなる。
「すまんが、ちょっと試してもらえるか。」
「分かった。」
そういうと、シュレイノリアは、上に着ている服を脱いで、自分のパワードスーツに乗り込むと、少し前に出て体を動かし始めた。




