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金糸雀亭の食材と料理人


 話がひと段落すると、入り口のドアが開いて、ルイセルが従業員の亜人3人と料理の乗ったワゴンを押して入ってきた。


 ルイセルは、ジュエルイアンの横に行くと、一礼してから話し出す。


「ジュエルイアン様、今日は、当店をご利用いただき誠にありがとうございます。 また、この度は、お料理が遅れてしまい、誠に申し訳ございませんでした。」


 そう言うと、ワゴンから料理の乗った皿を手に取って、ジュエルイアンの前に置く。


「いや、構わない。 追加は、こちらの都合なのだから、気にしないでくれ。」


「ありがとうございます。 それと、良い食材をお持ち下さったので、兄も大変喜んでおりました。」


 ジュエルイアンは、金糸雀亭に南の王国の食材を卸している。


 この場所に移転する際、ジュエルイアンに便宜を払ってもらったこともあり、帝国で扱っている食材以外をジュエルイアンの商会にお願いして卸してもらっているのだ。


「いや、私は、お得意様のために食材を届けただけだ。 だが、そう言ってもらえると、私も嬉しいよ。 食材を選定したのは、うちの従業員だから、選んでくれた従業員には、そう伝えておくよ。」


「ジュエルイアン様の商会から来る食材は、良い物ばかりですから、兄も料理人として腕がなるといつも言っております。 これからもよろしくお願いします。」


「いや、こちらこそ、お得意様にお褒めの言葉を頂けるなんて光栄ですよ。」


 そんなやりとりを行いつつ、ルイセル達は配膳する。


 その話を聞いてユーリカリアが、ジュエルイアンに話しかける。


「金糸雀亭の料理は、帝国の料理と違うのは、貴方が定期的に食材を届けていたからのですね。」


「ああ、ここに店を出す前からの付き合いだ。 若い時に帝国に居た時、ここの先代には世話になったのでな。 ここの開発の一部を請け負った時に、ここの店舗を使える様に手配したのだよ。 その時から帝国以外の食材をうちの商会が卸している。」


 その時の事を思い出しつつ、少し悲しいそうな顔を、笑顔で隠しつつ応対をするルイセルを、ジュエルイアンは見る。


「ここの先代の料理も美味かったが、この亭主の兄貴の料理が好きだったんだ。 無口なのに料理に対しては妥協が無いのと、どんな食材でも工夫して食べさせてくれるんだ。 何処で覚えたのか判らないが、かなりの腕だ。 誰も知らない様な食材でも、毒さえなければ、何でも料理してくれるぞ。」


「それで金糸雀亭の料理は、帝国でも有名なのですね。 今日は、楽しませてもらいます。」


 ウィルリーンが、ルイセルに言うと、ルイセルは笑顔で答える。


「ああ、それで、このお酒もあなたがこの店に卸していたのですね。 この辺りでは、ほとんど手に入らないお酒なので気になっていたのです。」


「酒は、食材と違って腐る事は無いからな。 流通ルートさえ確保できれば何とでもなる。 ただ、量はそれほど確保できないので、困るのだがな。」


「その流通ルートを確保するのが大変なのではないですか? 」


 ジューネスティーンが、口を挟んできた。


「ああ、その通りだ。 街道が整備されてきているが、魔物の脅威に備える必要もある。 以外に難しい部分も有るのだよ。」


 帝国以外にも、支店やコネクションを持つジュエルイアンなので、南の王国以外からも、各国の食材が入ってくるので、金糸雀亭では帝国の郷土料理以外の食材の料理が食べることができる。


 南の王国の食材は、いつもなら、定期便に乗せて運ばせているのだが、パワードスーツの運搬の際にわずかでは有るが開いたスペースに金糸雀亭用に食材を持ち込んでいる。


 ジュエルイアンはいつもなら、帝国の郷土料理を注文するのだが、ジューネスティーン達が居るので、そちらに合わせる様に頼んでおいたのだ。


 それが功を奏して、ユーリカリア達にも好評を得た。


 それで、今回は持ち込まれた食材も利用して作る事になったが、途中で、ユーリカリア達6人分の追加があったので、厨房はかなり慌てて料理の追加に追われたのだ。


 通常より、遅れて料理を提供する事になったので、亭主で有るルイセルが、ご機嫌伺いの為に料理を一緒に運んできたのだった。


「気に入っていただけると幸いです。 それでは、何かございましたら、お呼びください。」


 そう言うと個室から退出していく。




 会食が進む。


 会食は、ユーリカリア以外は、料理を堪能した様だ。


 ユーリカリアは、食事に手はつけるのだが、それよりもジュエルイアンが用意してくれた酒の方に気を取られてしまい、酒を飲む間に、料理には僅かに手をつけただけになってしまった。


 ユーリカリアは、その後も、安くは無いボトルを3本も開けてしまった。


 途中、ユーリカリアは、遠慮はしていたのだが、ジュエルイアンが、無理矢理用意させて飲ませていた。


 ただ、それだけ飲んでも、ユーリカリアには、酔った形跡はなく、食事の終わりの頃には、ほろ酔い気分程度にしか酔ってはいなかった。


 ジュエルイアンは、ユーリカリアの酒豪っぷりは、ドワーフなら、この程度は飲んでしまうと思っていた様だが、ドワーフを初めてみるジューネスティーンは、その飲みっぷりに驚いていた様だ。




 会食後、食堂を出ると、ユーリカリアと、残り3人の亜人達は、金糸雀亭を後にしたのだが、シェルリーンは、カミュルイアンの腕を抱いて、受付のカウンターの方に行く。


 その後を追っていくウィルリーンが、カミュルイアンの元に行って、何か話しかける。


 カミュルイアンに何かを言った後に振り返ると、少し赤い顔を向ける。


「今日もお借りします。」


 アンジュリーンやジューネスティーン達に言うと、3人で別の部屋に消える。


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