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転移した時

 

 対抗する、ライバル視する、ウィルリーンはシュレイノリアをそんなレベルでは無い、むしろ遥かな高みの頂点に佇んで、こちらを遥かなる高みから見下ろしている様に思えるのだ。


 対抗意識を持って挑んだとするなら、蟻が象を踏み潰そうとして片足を上げている様なものである。


 自分が彼女に対抗しようとするのは、そういったことなのだと思ったら、滑稽に思えてしまい、馬鹿馬鹿しく感じてしまい、むしろ、このジューネスティーン達のパーティーと出会えた事を幸運とさえ思えたのだ。


 彼女の魔法に関する事の断片でも自分の物にできれば、今以上の魔法を扱える事となるからだ。


 なら、少しでも彼女の高みに近付こうと思ったのだ。




 周りが、ウィルリーンが笑い出した事に困惑している。


 ユーリカリアにおいては、ウィルリーンが壊れてしまったのではないかとでも思ったのだろう。


 青い顔をしている。


 その顔を見てウィルリーンも肝が据わった様だ。


 ウイルリーンの表情が変わる。


 今度は、貪欲な目をしてシュレイノリアに迫った。


「すごい。 どうやったら、覚えられるんだ。 それだけの魔法紋は! 」


 ウィルリーンの態度が明らかに変わったことに、シュレイノリアは戸惑う。


「パワードスーツの開発の時、要求が複雑、実験しては変更が多かった。 何度も描き直しているうちに覚えてしまった。」


 そう言ってジューネスティーンを見る。


 ジューネスティーンは、自分に話を振られたと思い、少し慌てつつも、その時の事を思い出す。


「そういえば、パワードスーツの開発には、色々と魔法紋を描き直してもらってました。 毎日? いえ、多い時は起動して10分もたたないうちに直してもらってましたし、1日に数十回描き直した事もありました。」


 ジューネスティーンに、言わせると、シュレイノリアは、ドヤ顔で答える。


「数を熟せば、覚えてしまう。」


 それを聞いて、ウィルリーンは愕然とする。


「魔法紋のヘッダーファイルの考え方は画期的な考え方です。 それにそのヘッダーファイルを3000も覚えているってことも凡人には不可能に近いかもしれません。 私も同じ事をしてもそれだけの数を覚えられるのか、わかりません。」


 それを聞いて、不思議そうに、シュレイノリアが答える。


「話をする言語は、そんな数じゃすまない。 言語は覚えられるなら魔法紋も同じ事。 新たな言語を覚えて喋るのと一緒。」


「ほーっ、言語として覚えているのか。」


 面白い話だと思ったのだろう、ジュエルイアンも話に入ってきた。


「そういう訳ではない。 言語と同じ様なものと言った。」


「まあ、確かに言語を一つ覚えると思えば、魔法紋の術式を、色々覚えることも、可能なのかもしれませんね。」


 50年の間、大陸を歩き回っていたのだ、ユーリカリアやウィルリーンにしてみれば、その国の言語をその都度覚える必要があった。


 方言の様な違いしか無かったり、全く違っていたり、言語については、その都度覚えてきたのだ。


 魔法紋も言語と考えれば、同じ事なのかと思えるような気になったようだ。


 そんなユーリカリア達とは別に、ジュエルイアンは、転移者は、この世界の言語を喋れない事を思い出したのだろう。




 ジューネスティーンにしてもシュレイノリアにしても、言葉の通じない場所に来て、最初に教わるのは、言語だと聞いた事を思い出したようだ。


 この世界に来て新たに言語を覚えたのなら、もう一つの言語を覚える程度は、簡単なのかと思ってしまったようだ。


「そうだな、お前達は、転移後に言葉を覚えたんだからな。 それを覚える事を考えれば、魔法紋を覚える位ならなんとでもなるか。」


「それで、新しい技術とかに精通しているのか。」


 ユーリカリアは、ジューネスティーンの剣が、どれだけ優秀なのかを知っている。


 転移者なら、その程度の技術などは、どうと言うことではなく、泉の様に湧き出てくるのかと思ったのだろう。


 だが、ジューネスティーンは、そんなに沢山の技術に精通しているわけではないのだ。


 少し買い被りすぎているように感じたようだ。


「いえ、覚えているのは、断片的な事だけですので、転移前にどんな生活をしていたとかは、全く覚えてませんし、今では、転移してきた時に喋っていた言語はほとんど喋れません。 と言うか、もうほとんど覚えていませんよ。」


 それを聞いてユーリカリアは、少しがっかりした様だ。


 何か面白いものでも覚えていてくれたらと思ったのだろう。


 殆どと言うより、全く覚えてないのなら、もっと、新しい剣や、ジェスティエンの武器の様なものを作ってくれるのではないかと思った様だったのだが、それは無理そうだと思って、少しがっかりした様だ。




 ジューネスティーンの転移してきた時の話を聞いて、アンジュリーンも自分の転移してきた時の事を思い出した様子で、話に入ってきた。


「そうね。 私も転移前の言葉なんて今では覚えてないわ。 それにその頃は、私もアイツも身長100cm位だったからかなり子供だったわ。」


「あなたはぁ、みんなよりぃ、倍はこの世界でぇ、生活してますものねぇ。」


 年齢の事をアリアリーシャに指摘されると、睨みを利かせるアンジュリーン。


 それに目が合うと、アリアリーシャは直ぐに目を逸らしてしまう。


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