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魔法紋の業界


 ユーリカリアもウィルリーンも見た目は若い、どちらも、23歳前後に見えるが、実年齢は、どちらも85歳と長く生きている事、ジュエルイアンの40歳を考えれば、倍以上の人生経験を持っている。


 特にこの2人を、上手く取り込む事で、ジューネスティーンとシュレイノリアの暴走を、帝国内で抑えてもらえればそれに越した事はない。


「私は、彼らの何気ない行為が、大きな波紋を生む事を懸念してます。 既得権益を阻害されたとなれば、どの様な攻撃を受けるか、分かったものではありません。 なので、魔法について詳しい方に彼らが暴走してしまわない様に、見張っててもらえると助かるのです。」


「あのー、魔法紋の付与を魔法で行うのって、そんなに大変な魔法じゃ無いように思うのですけど。」


 ジューネスティーンが言うと、ジュエルイアンは、ジューネスティーンが事の重大性に気がついてないので、ジューネスティーンに解説する。


「じゃあ、武器や装備の魔法紋付与について、お前達以外はどうやって付与するのか知っているか? 」


「確か、魔法屋とかに武器とかを持っていって、スクロールで付与するはずです。」


「そうだな。 そのスクロールを使って魔法を付与する。 じゃあ、そのスクロールはどうやって作っているか知っているか? 」


「羊皮紙に魔法紋を描いているとだけ聞いた事が有ります。」


「うーん。 まあ、概ね正解かな。」


 ジュエルイアンは、これ以上の話になると、魔法を使えない自分では詳しく話せないと思い、ウィルリーンに助けを求める様に視線を向ける。


 それに呼応する様に、ウィルリーンが、ジューネスティーンに魔法紋の話をする。


「魔法紋は、専門の職人によって描かれるのです。 特に剣や槍の様に細長い武器には、小さな魔法紋にする必要があるので、魔法紋のサイズが小さくなります。 しかし、魔法の内容はそれなりに多くの情報を書き込むことになりますので、小さな魔法紋にその情報を書き込まなければなりませんから、かなり小さく描く必要があります。 これが鎧の様な大きさなら、それ程小さくする必要はないのですけど、それでも魔法紋を描くには大変な技術が要ります。」


 ウィルリーンは、一通りの説明を終えると、ジュエルイアンを見る。


 ジュエルイアンは、ウィルリーンの話を受けて、話し始める。


「今、説明してもらった通りなのだよ、魔法紋を作るにしても、専門の職人が丹精位込めて作るのだから、それなりの時間がかかる。 その時間を、お金で買っているのだ。 だが、カインクムに描ける様な魔法紋付与の魔法が突然現れ、普及してしまったらどうなる。」


 ジューネスティーンは聞かれて思いついた事を答える。


「それは、スクロールを買う人は居なくなります。」


「そうなるな、そうなると、今まで魔法スクロールを作っていた連中は、スクロールが売れなくなってしまって、食いっ逸れることになる。 その理由は、お前達が、魔法紋付与の魔法を誰でも使える事を広めたからだ。 そうなれば、その連中から恨みを買うこともある。」


 それを聞いて、少し納得がいった様な顔をする。


「そう言うことですか。」


「何を呑気な事を言っている。 魔法は国家で研究が進められているのだ。 魔法紋スクロールの団体の中には、国家や貴族と繋がっている連中もいる。 今まで売れていた物が売れなくなってしまったら、繋がっている連中に助けを求めるだろ、正当な手続きで処断するより、お前達を消してしまった方が簡単と考える連中も中にはいると思え。 そんな連中と渡り合いたいのか。」


 ジューネスティーンが、呑気に答えたので、まだ、分かってないと思ったジュエルイアンは、確信的な部分をストレートに言った。そこまで言われると、合点がいった。


「・・・。 そうですね。 今後は、気をつけます。」


 ジューネスティーンの態度を見て、ジュエルイアンは、やっと分かってくれたかと思いつつ、ユーリカリア達に向かって話だす。


「こんな連中なんだよ。 だから、この世界の事が分かっている人に、見ておいてもらいたいんだよ。」


「そうですね。 人の暗部に触れた事が無い様ですね。 彼らは。」


「ああ、始まりの村に現れてから、あの田舎で冒険者を始めて、王都のギルド高等学校を卒業した程度だからな。 人の悪意に触れる機会なんて、ほとんど無かったんだ。」


「そう言う事なら、私達の方も、そう言う事を弁えて付き合うことにします。」


 自分と同じ意見を持ってくれた事に感謝する。


「そう言ってもらえると助かるよ。 そうしてもらえるなら、さっきの剣は高いものでは無いのだよ。 それに、こいつらの仲介役として、私の商会で、彼らの技術で作られた利益の一部を、手数料として支払う事にする。 私としても、彼らの技術流出を防げれば、こちらから、その業界にアプローチして怨みを買わない様にする。」


 それを聞いて、ジューネスティーンが、ジュエルイアンに聞いてくる。


「でも、商人の世界は、弱肉強食なのでは? 新たな技術に、ついていけなかったら潰れるしかないのではないですか? 」


 ジュエルイアンは、またかと思いつつ答える。


「だから、困るのだよ。 その時、自分の商会が潰れていくのを、指を咥えてただ見ているだけなら良いのだが、それだけで済まない事だってある。 中には権力を使って排除する事だってありうるんだよ。 余計な敵は作らない。 そういった事も必要なんだよ。 余計な敵を作れば、狩に出た時に変な横槍や魔物のトレイン、遠距離から攻撃されること、街中を隣を歩いている人が、突然お前達の脇腹に、剣を突き刺してくる事だって考えなければいけない。 封建社会というのはそういうところなのだよ。」


 そういう事なのかと思いつつ答える。


「その為の、調整を行う必要があるんですね。」


 ジューネスティーンは納得した様に言う。


「ああ、そういう事だ。 面倒な相手なら、死んで貰った方が良いと考える連中だっている。 そういった連中と、折り合いを付ける必要も有るんだ。 武器を自由に持てるというのは、持つ人におごりをうむ事が多い。 持っただけで、技も無いのに、強くなった気になって、力の差がある相手にでも立ち向かっていく事だってある。 普通の判断が出来なくなってしまう。 力を持つ者は、自分の力を過信せず、周りにどの様な影響を与えるのかを考えなければならないのだよ。」


「・・・。」


「お前達は、誰も敵わない力を持っているのだ。 それをもっと自覚しろと言っても、当事者にはよく見えない事もある。 だから、一歩下がったところからお前達を見てくれる人が必要なのだよ。」


 そう言われて、ジューネスティーンは、ウィルリーンを見る。


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