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剣 〜焼き入れの準備〜


 ジューネスティーンが試作した剣は、焼き入れの実験用に行おうと考えていたが、10本の剣を焼き入れ前までに仕上げると、1本でも無駄に焼き入れをおこなってしまう事が勿体無いと思ったようだ。


 その事をシュレイノリアに話すと、シュレイノリアは考え出してしまったが、直ぐにジューネスティーンに向いた。


「とりあえず、1本を焼き入れしてみよう。曲がる方向の確認は行おかないと焼き入れの方向性が決まらなくなる」


 シュレイノリアの言葉を聞いて、ジューネスティーンも頷いた。


「そうだな。焼き入れの入りやすい刃側に反るか、焼き入れを遅らせる峰側に反るかを見極めないといけないな。捨ててしまうのは勿体無いから、方向性だけは最初の1本で試してみるよ」


 最初の1本によって曲がる方向を確認し、その後の方針を決めようと思ったのだが、その言葉には、何だか捨ててしまう事になるのは面白くなさそうだった。


 実際に、どんな物でも自分が作った物であれば、多かれ少なかれ愛着は湧くものである。


 それが、ジューネスティーンには、大きいと思えるようだ。


 その言葉を聞いたシュレイノリアは、仕方なさそうな表情をした。


「それより、ジュネス。使う泥はどうするのだ?」


 その言葉に、ジューネスティーンは困ったような表情をした。


 シュレイノリアは、そんなジューネスティーンをジト目で見ていた。


「まあ、仕方がない。剣を作ることに集中していたのだからな。とりあえず、中庭の土を使ってみようか」


 そう言うと、シュレイノリアは悩むような表情をした。


「なあ、ジュネス。剣に土を塗って焼き入れの速度を遅くするのだぞ。そうなると炉の中で高温に熱する必要があるぞ。熱していたら、その辺の土だとボロボロと剣から落ちてしまわないか?」


 そう言われて、ジューネスティーンも中庭の土を思い出したようだ。


「そうだな。あそこの土は、サラサラしているな」


「そう、ここは砂漠が近いから、どちらかというと砂土だ。熱くしたらボロボロと剣から落ちてしまいそうだ」


 シュレイノリアとジューネスティーンは、周囲の土の粘度が緩いことに気がついた。


「そうなると、食器とかに使う陶器だな。あの辺りの土を使えば、いいんじゃないのか?」


「うーん、そうだな。この辺りの土なら多分無理だろうから、それが一番都合がいいだろう」


 2人は、焼き入れ用の土についての方針も決まってきた。


 だが、ジューネスティーンは、浮かない表情をした。


「また、ギルドにお願いするのか」


 ジューネスティーンの依頼については、シュレイノリアとは違い決済が必要となっており、そして、許可が下りるかどうかも定かではない。


 今回の話をギルドにして許可して手配してくれるのか気になったようだ。


「そうか、お前は、許可が下りない事もあるのだな」


 シュレイノリアもジューネスティーンの考えていることが理解できて、少しがっかりしたような表情をするが、すぐに、ジューネスティーンを見た。


「おい、ジュネス。剣に塗る土というのは、どの位の厚みを考えているんだ?」


「ん、ああ、数ミリ? 一番厚い場所だって、2ミリなんてあるのか……」


 シュレイノリアの質問に答え始めると、ジューネスティーンは考え出したので、シュレイノリアは、その様子を面白そうに見ていた。


「うん。そうだね」


 ジューネスティーンも、シュレイノリアも、お互いに考えていることが理解できたというように、お互いの顔を見た。




 ジューネスティーンは、焼き入れの時に使う土についてギルドの担当に手配を頼みに行った。


 それを聞いた担当者は、嫌な顔をして土の話を聞いていた。


「ジューネスティーン君」


 担当者は、一言言うとガッカリしたような表情をした。


「君は、剣を作っていたんじゃないのか? それが、何で陶器用の粘土が欲しいとなるんだ! 鍛治の後は、花瓶でも作ろうって言うのか? 花壇の花でもいけようって言うのか?」


 その答えを聞いたジューネスティーンは、何だという表情をしたので、依頼を聞いていた担当者が、イラついたような表情をした。


「だから、お前の鍛治に何で粘土が必要なんだ。鍛治に粘土が必要なんて聞いた事がないぞ。お前は、何を考えているんだ」


 ジューネスティーンは、困ったような表情をした。


 ジューネスティーンとしたら、焼き入れの際に焼き入れの度合いを変えるために粘土を使って温度が下がる事を遅らせるつもりでいたのだが、その説明をジューネスティーンの手配担当に伝えても、今までに無い発想だったので、ジューネスティーン達の考えた事が上手く伝わらなかった。


 担当者としたら、ジューネスティーンが鍛治に関する要求について吟味して、その内容に問題が無かったら要求内容の手配を行う事になっていた。


 この担当者は、鍛治に関しても精通している事もあるので、ジューネスティーンが要求した粘土について理解できなかった。


 担当者は、イライラした表情をした。


「悪いが、この申請は認められない。お前は、ちゃんと鍛治をすることを考えるんだ!」


 担当者は、ジューネスティーンの申請した粘土について許可を下さなかった。


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