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エルメアーナの剣とジュエルイアン


 ジュエルイアンは、各国に支店を持つ南の王国の大物商人である。


 ユーリカリアも話だけは聞いている大物である。


 ジューネスティーン達と会食をしようと思っていただけなのに、その席に南の王国の大物商人がいたので困惑しているようだ。




 ユーリカリアの本音としては、シェルリーンから、せっつかれてカミュルイアンと接触する機会を持つ、その話にウィルリーンも乗ってきて、夕食を一緒にと思って来たのだが、こんな大物商人に出会えるとは思わなかったのだ。


「は、初めまして。 ユーリカリアと言います。 帝国で冒険者をしてます。 他は、自分のパーティーメンバーです。」


 ユーリカリアが代表して挨拶をするが、かなり緊張気味に答えた。


「今日は、私が、ジューネスティーン達を招待して、夕食を楽しもうと思っていたのですよ。」


 そう言われて、ユーリカリアは、邪魔をしてしまったといった思いが顔に出したので、それを見たジュエルイアンはフォローに入る。


「ああ、私がジューネスティーン達を食事に誘ったのは、あなた方と面識を持ちたかったので、知り合いのジューネスティーンに話を聞こうと思っていたのですよ。 そこにあなた方が現れたので、この会食に招待しようと思ってお呼びいたしました。」


 その言葉を聞いて、少し警戒をするユーリカリア、南の王国の商人が、自分たちに何の用事があるのかと考えてしまったのだろう、その顔には疑問が浮かび上がっていた。




 そんなユーリカリアに、ジュエルイアンは、一つカードを切る。


「カインクムの剣は、いかがでしたか? それと、南の王国でエルメアーナが作る剣も見たくはありませんか? 」


 それを聞いて、ユーリカリアの顔色が変わる。


 カインクムの娘である、エルメアーナが、南の王国で鍛治をしており、その剣の噂はユーリカリアも聞いている。


 エルメアーナの剣と、同等の物がカインクムが作れる様になったのも、元を正せばジューネスティーンの持つ剣となる事を突き止めたので、他にも何か無いかという下心を隠しつつ接触しているのと、ついでに、メンバーのエルフとカミュルイアンと交流させようと思って、食事に誘いに来たのだ。


 それが、どうも、この大物商人ジュエルイアンも何やら絡んでいる。


 しかも、エルメアーナとも面識がありそうだ。


 カインクムに剣を発注してはいるが、完成していない。


 それに、噂で聞いているエルメアーナの剣についてジュエルイアンは見たくはないかと聞いてきた。


 冒険者ならそんな噂の剣を見たいと思うのは当たり前の事ではあるが、初対面の自分に何でそんな事を言ってくるのかが、気になったのだ。




 その怪訝そうなユーリカリアを見て、突然すぎたかと思うので、自分が何でエルメアーナの剣を見せられのかを説明する必要があると判断する。


「ああ、エルメアーナを南の王国に招いたのは、私なんですよ。 カインクムの再婚の時にエルメアーナの面倒を私が見る事になって、南の王国で店を持たせて独立させたのです。」


 それを聞いて、横に居たウィルリーンが、疑問をジュエルイアンにぶつける。


「彼女は、大の男嫌いのはずです。 それをよく説得できましたね。」


 ジュエルイアンは思っていた通りの質問だと思うが、その理由もしっかり伝える事で、このパーティーの不信感を無くすには丁度良いと思う。


「実は、私は、カインクムとフィルランカの件で色々あった時に、たまたま、商談にカインクムの店に伺ったのですよ。 私は、彼女の父親のカインクムとは、面識があったので、今の鍛冶屋に移転の話を持っていった時に、ゴタゴタに巻き込まれてしまって、その時にエルメアーナを南の王国に招きました。 まあ、身の回りの事は、私ではなく、秘書の女性が行なっていますし、南の王国へ行く事も全て彼女が取り仕切ってくれました。 私は、場所と資金を提供しただけです。」


 ジュエルイアンは、エルメアーナを引き取った時の話のつまみだけを話す。


 秘書の女性が、どう言った人なのかは分からないが、カインクムと面識があり、フィルランカの事も知っている。


 その結婚の際に、エルメアーナの身の振り方を、取り図っている様にユーリカリア達は思った様だ。




 フィルランカの押しかけ女房の話は、帝都では有名な話だ。


 親友の父親を寝取って、親友を追い出してしまったという事で、酒場での、酒のつまみになっているので、誰もが知っている話だ。


 ウィルリーン自身も、そんな話を何度も聞いているのだ。




 怪訝そうな顔をしていたウィルリーンに、ジュエルイアンは、もう少し説明が必要と判断した様だ。


 直ぐに説明を追加する。


「あの時は、カインクムに、この第9区画に移転の話を持って行った時だったんです。 その時は、うちのエルフを連れて行ったので、本当に助かりました。 彼女が、エルメアーナを宥めてくれたので、なんとか話がまとまったのです。 まあ、親友と父親が、一緒のベットで裸でいた所を目撃してしまったのだから、エルメアーナはかなりショックだったみたいでした。 秘書から後で聞いた話だと、泣きやめさせるのに相当苦労した様です。」


 エルフの女性というのは、ジュエルイアンの筆頭秘書のヒュェルリーンの事を言っているのだが、ユーリカリア達には関係のない話だったので、名前は出さなかったのだろう。


「あの時、彼女が居なかったら、円満に解決はできなかったでしょうね。」


 ジュエルイアンは、しみじみと話をした。


 一方、ウィルリーンは、話の辻褄は合っている気がするのだが、あまりに出来すぎた話に、何とも言えない顔をする。


 だが、ジュエルイアンが、カインクムもエルメアーナを知っていて、なおかつ、エルメアーナの後見の様な事をしているなら、エルメアーナの剣を融通できてもおかしくは無いのかと考えているのだ。




 それなら、エルメアーナを知っていても問題無いとウィルリーンは思ったのだろう。


「そうだったのですか。」


 ウィルリーンは、納得する。


「ええ、あの剣の販売が始まった後は、店番やら、助手やらと、人手が足りないとかで、大騒ぎになった話を、私は秘書から聞いてました。 でも、今は、落ち着いてきてますしたから、何本か打ってもらった物を持ってきているのです。 なので、融通は出来ます。」


 ジュエルイアン自身も、これだけ有名になった剣なので、持ち歩ける様に手配していたのだ。


 だが、流石に今回持って来れたのは、これ一本だけだったのだが、商人としての大きさを見せつけるために、複数持っている様な話をしたのだろう。


 ただ、パワードスーツを3台納品した事で、エルメアーナの仕事は、現在発注されている剣の製作になる。


 今まで、パワードスーツの製作に付きっきりだったが、今は、剣の製作に入っていて、予定より多くの剣が作られている事を知っている。


 万一、ここで、残りの剣の購入の話が出たとしても、今見せている剣以外を見せられない理由も用意してあるのだ。


 ジュエルイアンは、ギリギリのところで、ユーリカリア達との駆け引きを行っている。


 商人としては、どうということでは無いかもしれないが、Aランクの冒険者達との駆け引きは、それなりに楽しんでいるようだ。


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