シュレイノリアの魔法概念
シュレイノリアの話から、誰でも魔法は使える様になるという事は、高等学校の教授では理解不能なのだろうと、考えた様だ。
(高等学校の教授達がダメなら、ギルド本部の研究員とシュレ達を引き合わせる必要が有るってことか。 だったら、計画が終わった後に機会を設ける必要があるな。)
ジュエルイアンは、結論を伝える。
「ギルド高等学校には、俺から伝えておく。 帝国内では、魔法の話はこれ以上広めない様に。」
「わかりました。」
「他の連中も一緒だからな。」
全員が肯くと、ジュエルイアンは話の本題に入る。
「なあ、俺にもカインクムの台車が軽く感じたってことは、俺にも魔法は使うことができるのか? 」
真剣な顔で尋ねる。
ジューネスティーンは、カインクムにも魔法が使える様になった事もあり、ジュエルイアンにも魔法が使える様になると思って肯定する。
「使えると思います。」
その答えに、複雑な思いを寄せつつ、ジュエルイアンは、話を進める。
「それなら、後で、教えてもらおう。 ただ、今後は、帝国内で魔法を教えるのは控えてもらいたい。 お前達が教えると、誰でも魔法が使える様になってしまう。 便利になるのは良いが、魔法の悪用に繋がる可能性が高くなる。 何処の国でも魔法適性を持つ人の管理が行われているが、お前達が安易に魔法適性の無い人にも魔法を使える様にしてしまったら、管理システムが崩壊しかねない。 だから、帝国内で魔法のレクチャーは行わないで欲しい。」
確かにジュエルイアンの言うとおりだ。
魔法を覚えたがる人は何処にでもいる。
その力を悪用しない様にと魔法適性のある人は国として把握している。
しかし、魔法適性の無かった人が突然使える様になってしまったら、国の管理から外れた人がどの様に使うのか?
力を得た人は、その力を使いたがるものだが、力を得た事で人は奢りが出る。
何でも許されてしまうと考えがちになり、傲慢な態度を取る。
それがエスカレートしてしまうと、犯罪を犯しても自分だけは許されると錯覚してしまうものが中には居る。
そういった事を抑えるために、魔法適性のある人には、道徳的な事をどこの国も教える様にしている。
魔法を使った犯罪を抑えるためと、個人の魔法適性を調べる事で、個人の魔法を確認する事で魔法による犯罪が行われた際に追跡が容易になる様にしている。
それが、シュレイノリアとジューネスティーンによって、覆られようとしているので、ジュエルイアンはそれを未然に防ごうとしている。
ジューネスティーンは、ジュエルイアンに答える。
「わかりました。 今後は、不用意に魔法を教える事は行わない様にします。」
「そう言ってもらえると助かるよ。」
ジュエルイアンは少し安心する。
「それから、魔法紋を描く魔法なのだが、それに付いて、契約書を作る。 近いうちに誰かを使いに出すから、サインをして欲しい。 それと、これは、その魔法に対する契約金の一部だ。」
そう言って、革の袋を出してジューネスティーンの前に置く。
ジューネスティーンは、中を確認すると、金貨10枚が入っていた。
中身を確認すると、ジューネスティーンはシュレイノリアにその革袋を渡す。
ジューネスティーンが確認すると、ジュエルイアンは、契約に関する概要を説明する。
「今後、その魔法を使う度に使用料を支払う事になる。 月毎にまとめて支払う事になる。 それについては、シュレイノリアのギルド口座に振り込む。 それで問題無いな。」
「ええ。」
ジューネスティーンは肯定しつつシュレイノリアを見ると、シュレイノリアは、少しムッとした様な顔つきでいる。
今の話を聞いたシュレイノリアは異議を唱えるのだ。
「その支払い先は、ジューネスティーンの口座にして欲しい。 それと、残りの契約金はジューネスティーンに渡してほしい。」
ジュエルイアンに告げる。
ジューネスティーンとジュエルイアンは、何事だと少し驚いていると、
「パワードスーツの開発にはお金が掛かる。 それ以外にも新たな開発を行うにも費用が必要。 その時の資金にする。 だから、ジューネスティーンの口座に入金。」
ジュエルイアンはなる程と思いつつ、一つの思考に行き当たる。
ひょっとしてと思ってジューネスティーンに聞く。
「お前、何か新しい事を思いついたのか? 」
鋭い目つきで尋ねるので、ジューネスティーンは、慌てて首を横に振る。
「い、いえ、今は、そんな事は思い当たりません。」
それを聞くが、ジューネスティーンが嘘を言ってないか覗き込む様にジュエルイアンはジューネスティーンを見る。
ジューネスティーンは、ジュエルイアンの眼力に気圧されてしまい、渋々答える。
「そういった事があった場合は、直ぐに相談する様にします。」
それを聞いて、少し安心するジュエルイアンだが、それを100%信用はせず、わずかに疑う部分を残している。
「ああ、よろしく頼む。」
そう答える。
すると、ドアがノックされて、金糸雀亭の奴隷のメイドの中では一番年下のリアミーシャが入ってくる。
リアミーシャは、ウサギ系の亜人であり、胸に奴隷紋を付与してある。
身分は奴隷ではあるが、子供の頃から金糸雀亭で生活をしていた。
その為、ルイセル達からは妹の様に扱われていたので、扱いは普通の従業員と同じか、家族の様に扱われている。
ルイセルの親が亡くなった際に新たにルイセルと奴隷契約を結び直して金糸雀亭で雇われている。
身分は奴隷はあるが、帝国内で奴隷で無い亜人は誘拐の危険があるので、不用意に誘拐されることを無くすためにルイセルと奴隷契約を結んでいるだけなので、扱いは奴隷ではなく家族の様に扱われている。
そのリアミーシャが、ジューネスティーンの後ろに行くと、耳元で囁いた。
「ジューネスティーン様にお客様がお見えです。」
そう言われても、約束は無かったので、どうしたものかと思いつつも、誰なのかを聞く。
「済まないが、その客は誰かわかりますか? 」
尋ねると、直ぐに、、リアミーシャは答えてくれた。
「先日、お見えになったユーリカリア様とメンバーの方です。」




