第一皇女の2度目の縁談と、陰謀の予感 2
リズディアは、高等学校の卒業を控えている。
後宮では、高等学校入学時に、家庭教師をする事を約束したイルルミューランと、第5皇子のイヨリオンが、一緒に生活している。
イヨリオンは、幼年学校を卒業することになっており、第1区画の高等学校へ進学する予定にしている。
貴族向けの幼年学校でも、イヨリオンは、優秀な成績を残していた。
同様にイルルミューランも成績は上位に居た。
後宮内では、2人が一緒に暮らすようになった時程、あからさまにリズディアとイルルミューランを近づけようとはしないが、さりげなく、一緒にいる時間を演出するようにしていた。
年相応の反応ができるように、メイドや執事たちは、方向転換して、卑猥な演出は控えるようにしていた。
その甲斐あって、2人は、仲の良い兄弟のような様子で、生活していた。
しかし、隣同士の部屋の扉は、そのままになっており、今も、着替えの際には、メイド達が、連絡を取り合うために行き来していたのだが、リズディアとイルルミューランの2人が、周りに分からないように、その扉を使う様子は無かった。
ある日、リズディアの家庭教師が終わると、イヨリオンが、リズディアに話しかけた。
「リズディアお姉様。 私も、今年度で、幼年学校を卒業して、高等学校に入学します。 それで、私は、高等学校を、飛び級制度を利用して、帝国大学へ、一刻も早く進みたいと思ってます」
リズディアは、イヨリオンの決意を聞いて、感心した。
「まあ、えらいわ、イヨリオン」
「私は、皇位継承権も返上してますから、これからは、もっと勉強して、帝国大学で教鞭を取るか、研究する道を進みたいと思っております。 私が、独立して、そして、母様と一緒に住みたいと思っております」
イヨリオンの決意を聞いて、リズディアは、嬉しそうにした。
「わかったわ。 だったら、その方法を知っている人を紹介するわ。 その人に教えてもらって、飛び級で、帝国大学を狙いなさい」
「はい。 ありがとうございます」
イヨリオンとの話が終わると、リズディアは、イルルミューランを見た。
イルルミューランは、黙って、2人の話を聞いていた。
「ねえ、イルル。 あなたは、後1年あるけど、どうするつもりなの?」
イヨリオンより一つ下のイルルミューランには、まだ、早いかと思ったようだが、リズディアは、一応、聞いたようだ。
「僕は、父の後を継いで、商人になる予定です。 商人は、人との繋がりが大事だからと言われておりますので、飛び級ではなく、普通に高等学校に通うつもりです」
(まあ、3年間使って、人脈を得ようというのね。 イスカミューレン様から、教えられたのかしら。 イルルも、しっかり考えているのね。 それに、イルルは、やっぱり、商人になるのね。 ふふふ。 私も、その方向で学部を選んだのよ。 大きくなっても、あなたと同じ方向になるようにしてあるわよ)
リズディアは、イルルミューランも、自分の進むべき道が見えていることに、嬉しく思ったようだ。
「そうね。 学校は、それぞれの目的に応じて使い分けた方がいわね。 イルルも、イヨリオンも自分の目的を持って、しっかり、その目標を達成してね」
そう言って、リズディアは、2人に笑顔を向けた。
すると、イルルミューランが、何かを気になったようだ。
「そう言えば、リズディア様は、大学は、どの方向に進むのですか? リズディア様は、衣装を作ることがとてもお上手でしたから、その方面なのでしょうか?」
イルルミューランは、リズディアに尋ねると、リズディアは、恥ずかしそうにしたが、イルルミューランもイヨリオンも、リズディアが、何で恥ずかしそうにしたのか、不思議そうにみていた。
「え、ああ、私は、悩んだのだけど、経済を学ぶようにしたの。 帝国を良くするには、その分野の方が、ためになると思ったのよ」
(経済学には、商業に関する事も勉強するのよ。 きっと、イルルが、大学に入る時にも、助けられると思うわ。 だけど、あからさまに商業だと、周りの目があるから、経済学にしたのよ)
リズディアは、答えた。
「そうですか。 私は、卒業後に商業について、大学で学ぼうと思ってました。 ですので、私が、大学に入学するときは、リズディア様に、色々、教えてもらえそうですね」
イルルミューランも、嬉しそうにリズディアに答えた。
「あら、そうね。 イルルが、そっちの方に進むなら、その時も、私が助けることができそうね」
リズディアも嬉しそうに答えた。
「リズディアへの縁談の申し入れは、帝国から正式に断られた。 今度は、大学へ進学だと、どれほどの天才なのだ」
「そんな事は、どうでもいい、それより、通関手数料を他国と同じに取ると言い出したのだぞ。 それの方が、大変だぞ」
「ああ、通関手数料が無い事で、国内の流通価格が低い事で、国民も潤っていた。 だが、通関手数料が上乗せになったら、国民の不満が大きくなってしまう」
「ああ、そうだ」
「言い方は、丁寧な言い方をしていたが、リズディアを嫁に取るなら、通関手数料を寄越せと言っているのと同じだ」
「この通関手数料を、我が国が受け入れられないと思って、言ってきたのか」
「これ以上、リズディアを嫁に寄越せと言ったら、通関手数料を取ると言っているのだろうな」
「全く、宗主国をなんだと思っているのだ。 身の程を弁えぬのか」
「仕方がない。 ここは、リズディアを嫁に取るのは、諦めるか」
「お待ちください。 それなら、こちらから、嫁入りさせるというのはどうでしょうか?」
「それこそ、長男のクンエイにしても次男のエナエイにしても、もう、三男まで、あの国は嫁が決まっているぞ。 そこに、割り込ませようというのか」
「上の3人は無理でしょうが、四男のルインカンにです」
「あれは、未だに、皇位継承権を放棄してない。 五男のイヨリオン以下は、全て、皇位継承権を放棄しているが、あいつだけは、放棄してない」
「なるほど、上の3人に何かが起これば、次期皇帝は、ルインカンになるのか」
「そういう事だ。 皇族というものは、なぜか、早死にする者が多い事もある。 あの四男の母子は、微妙な立場になっているからな」
「うん、あの母子は、使えるかもしれないな」
「ああ、結婚の時、付き人として、数名を付けて後宮に入れる。 こちらの息のかかった人間を入れておくのだ」
「そうだな。 気がついたら、長男から三男が、他界してしまうかもしれないな」
「そうだよ。 あの国の系譜には、直系が絶えた事もあったのだ」
「ああ、四男が皇帝位を継いでもおかしくはない」
「そういうことだ」




