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リズディアのイルルミューラン


 大ツ・バール帝国 第21代皇帝、ツ・リンクン・エイクオンの正室から子供は生まれてないが、10人の側室から、女子12人と男子8人を授かっていた。


 当初、続けて男子を2人の後、3人目で女子を授かり、その皇女の名前を、ツ・レイオイ・リズディアと名付けた。


 長男次男と、このリズディアは、才能に恵まれていた。


 男子2人は、武芸も必要とされたが、リズディアは、女子ということで、武芸は免除されていた。


 その空いた時間をリズディアは、宮廷内の図書室で過ごしていた。


 皇族という事もあったが、リズディアは、知識欲が強く、書物からの知識と、人から知らない話を聞くのが好きだった。


 リズディアの知識欲は、帝国経済についても、そして、帝国のアキレス腱とも言える、東の森の魔物についても把握し、対応策も少女時代に考えに及んでいた。


 そして、父である第21代皇帝のツ・リンクン・エイクオンの、古くからの友人である、下級貴族のスツ・メンヲン・イスカミューレンに目をつけた。


 イスカミューレンは、父、エイクオンの幼馴染みであり、帝都で商会を営んでいるので、宮廷に訪れては、エイクオンの話し相手をしていた。


 リズディアは、イスカミューレンから、帝国の経済について知りたいと思い、機会を窺っていたのだ。




 ある時、エイクオンが面会中に、公務で呼び出された。


 その時、イスカミューレンが、1人部屋に残された隙間を狙って、リズディアが、父の代役と偽って、イスカミューレンの話し相手をしたのだ。


 リズディアは、帝国の置かれた立場、世界の情勢について、正確に把握していた事もあり、イスカミューレンとの話は、かなり高度なものになっていた。


(殿下は、本当に、勉強なさっている。 東の森の魔物についても、詳しく知っている。 これは、本物かもしれない。)


 イスカミューレンは、大人の話に平気で付いてくるリズディアに驚いた。


 その後も、リズディアは、イスカミューレンとエイクオンの面会に同席するようになり、2人の話を面白そうに聞いていた。


 ただ、時々、子供には聞かせられない話がある場合は、断られてしまうのだが、リズディアが、煩く参加を迫ると、イスカミューレンが、息子のイルルミューランを連れてくるようになった。


 リズディア10歳、イルルミューラン6歳の時に、2人は初めて出会っていた。


 エイクオンの頼みで、イスカミューレンが気を利かせてイルルミューランを連れてきて、そのお守りをリズディアに頼むことで、厄介払いしたのだ。




 そんな日は、仕方がないので、リズディアは、イルルミューランを連れて、後宮の散歩をする。


 イルルミューランとしても、美人で聡明な年上の美少女であるリズディアと一緒に居られる事は、とても嬉しいことなので、父の頼みで宮廷に行くことが、とても楽しみであった。




 ある日、2人が、後宮を散策していると、男の子の言い争う声が聞こえてきた。


 その声をリズディアが聞くと、ムッとしたような表情をした。


「あら、ルインカンとイヨリオンの声だわ。」


 ツ・リンワト・ルインカンは、第4皇子で、もう1人のツ・リンウイ・イヨリオンは、第5皇子だった。


 第5皇子のイヨリオンは、母親が、宮廷の下働きの女性だったので、皇位継承権を返上している。


 そして、第4皇子のルインカンの母は、貴族の出身ではあるが、継承権第4位では、上位の皇子が結婚して子供ができれば、更に継承権順位は下がる。


 結果、第4皇子程度では、余程の事件が無い限り、皇位が回ってくる事はないが、第6位以下なら、他の貴族に婿入りする目的で、皇位継承権を返上するのだが、第4位は微妙な順位でもあり、ルインカンは、返上する事もなく常に上の兄達を羨んでいた。


 その腹いせを、早々に皇位継承権を返上した、貴族の家系でもない弟に向けられていたのだ。


「また、ルインカンたら、イヨリオンをいじめているわ。 イヨリオンも、やられるだけだから、付け上がられるのよ。」


 リズディアが、放置して、その場から立ち去ろうとすると、イルルミューランが、その手を引っ張った。


「どうしたの、イルル。 行くわよ。」


 もう一度、引っ張るが、イルルミューランは、動こうとしない。


「お二人を止めなくて、よろしいのでしょうか? 」


「イヨリオンが、やられっぱなしになるから、いけないのよ。 反撃すれば、ルインカンも、次から控えるわよ。」


 そう言って、歩き出そうとするが、動かない。


「それは、リズディア様が、ルインカン様のお姉様だからです。」


 その答えに、リズディアは、何を言っているのというような表情をする。


「どういうことなのよ。」


「リズディア様は、ルインカン様より、立場が上です。 イヨリオン様は、お母様も貴族ではなく、皇位継承権も返上してます。 立場的に、ルインカン様に、口答えも歯向かう事はできないのです。」


 そう言われて、リズディアは考えた。


「そういう見方もあるわね。 ・・・。 わかったわ、ここで、待ってなさい。」


 そう言うと、リズディアは、ルインカンを止めに入った。


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