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リズディアとイヨリオン


 イヨリオンは、身分の低い側室の第5皇子である。


 身分の低い母から生まれたイヨリオンは、他の側室とは違った後宮でも、別邸での生活を強いられていた。


 その日陰の皇子をリズディアは、表に出す事を考えていた。


 今まで、見向きもされてなかったイヨリオンを、帝国の為の人材としての価値を出させる事を、リズディアは提案した。


 第5皇子のツ・リンウイ・イヨリオンは、母が宮廷仕えの使用人だった事もあり、早くから皇位継承権を放棄しており、後宮の小さな家でひっそりと暮らしていた。


 リズディアより3歳年下のイヨリオンは、母が身分が低かったこともあり、家庭教師を付けてもらえる事も無かったので、このまま、ひっそりと暮らすだけだと思っていたのだが、リズディアの一言で話が一変したのだ。




 ツ・リンウイ・イヨリオンとしては、自分の成績次第で、姉であるリズディアの将来が決まってしまうという事に驚いた。


 イヨリオンにしてみれば、学校の授業について行くのが、やっとと言ったところで、落第せぬ様に必死だったのだが、リズディアの言い放った一言によって、母子共に、リズディアの屋敷に移動させられたのだった。


 イヨリオンにしてみれば、皇子だった事で、学校にはいかせてもらえていたので、なんとか卒業して成人後には、母と一緒に後宮を出て、ひっそりと暮らそうと思っていたのだ。


 ただ、落第スレスレの自分なので、何処までの学校に居させてもらえるか心配ではあったのだ。


 別の兄弟達には、立派な家庭教師がついていたので、彼らが、落第する危険は無かったので、その事が羨ましくも思っていたのだ。


 また、リズディアの様な姉を羨ましく思っていた。


 そして、母親と自分の待遇にも、不満があった。


 皇城に使用人として雇われていたのだが、皇帝の都合で、手付きになり、自分を産ませたのだが、貴族でも無い自分の母親は、他の貴族から嫁いだ側室達から蔑まれて見られていた。


 そのため、後宮の敷地には有るが、小さな別邸に押し込まれてしまったのだ。


 その後は、母子2人の生活になるのだが、皇族の様な煌びやかな生活は営めず、一般臣民程度には暮らせる程度だった。




 リズディアの申し入れは、イヨリオンにとって有り難かった。


 今の家を出て、リズディアと同じ屋敷に住めるのなら、母にも楽をさせられると考えたのだ。


 そして、成績を伸ばす為の話が持ち上がったことで、イヨリオンは、喜んだ。


 成績上位に入れる様になれば、将来、卒業後に待っている職業なら、母子で暮らすにしても、母に楽をさせられる事になるのだから、願っても無い話だったのだ。


 その後は、リズディアの指導もあるのだが、イヨリオン自身も、研究熱心だった事もあり、後宮の奥でひっそりと暮らしていては読めない書物も、リズディアの屋敷に入ったことで読む機会を得た事もあり、イヨリオンは、一気に成績を伸ばしている。


 結果として、1年も経たずにイヨリオンは、成績を上位にしてしまった事もあり、その当時のリズディアの縁談は無くなってしまった。




 その頃にもリズディアとイルルミューランの交流は、イスカミューレン経由でも続いていたが、時々、リズディアが、イルルミューランを呼び出しては、イルルミューランの勉強を見てくれていた。


 その甲斐あって、イルルミューランも学校で主席とは言わないが、かなり上位を維持していた。


 その時の呼び出す理由としてリズディアは、周りにこう伝えている。


 ただ、その顔には、少し恥ずかしさが有ったのでか、顔を赤くして語っている。


「私は、帝国の学術的な面を伸ばすために勉強しているのです。 ですが、覚えただけでは、それが実って来ないでしょう。 今度は、教える事を考えなければならないので、まずは、イルルミューランとイヨリオンを使って、自分の教える力をつけます。 彼らなら、私が失敗しても他には言いふらす事も無いでしょうから、皇室の恥になることもありません。」


 そう言って、自分の教師としての実験台としてイルルミューランを指名したのだ。


 そのため、イルルミューランは、学校が終わった後、直ぐにリズディアの元に行って、夕方までの短い時間ではあるが、リズディアの家庭教師を受ける事になった。


 その後も何度かリズディアの縁談は有ったのだが、その都度断っていた。




 リズディアは、帝国の大学を主席で卒業した後にも縁談話があった。


 学校を卒業して仕舞えば、リズディアの言い訳も通らないと思ったのだろう。


 しかし、リズディアは、南の王国の大学に進学すると言い出した。


 その頃には、イルルミューランにほのかな想いを寄せていたと思われるが、年齢と身分の違いもあった事で、口には出さず、口実として王国の大学へ進学すると言い出したのだ。


 皇帝も仕方が無く、娘の意見を受け入れたが、一人で王国へ送り出すことも出来ないので、数名の学生を一緒に送る事にした。


 その中に、その年に大学に入れる年齢になったイルルミューランも、その一人として送り込んだ。


 そして、留学生の中にイルルミューランがいる事を、リズディアが知り秘かに喜んでいたのだが、その人選には、イスカミューレンが皇帝に珍しく願い出たという事だった。


 エイクオンにしても、リズディアに寄り添う弟の様なイルルミューランなら構わないと思ったのだろう。


 その申し入れを受け入れ、イルルミューランも一緒に国費留学生として南の王国へ送っている。




 また、帝国に戻れば、すぐ、結婚話になってしまうと考えたリズディアは、大学卒業後、更に大学院に進学している。


 結果としてリズディアは29歳までの7年間を王国で過ごすこととなり、その間に皇女と釣り合いが取れそうな相手は帝国内から無くし、自分の息子であるイルルミューランをあてがおうと考えていた計画も大詰めを迎えていた。


 イスカミューレンの20年以上掛けて、リズディアをイルルミューランの嫁に迎えるための策略を行なったのだ。


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