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剣 〜刀鍛冶の補助〜


 11歳のジューネスティーンは、まだ、腕の力が足りていなかった事から、鍛治仕事をするにも、叩く力が足りなかった。


 その弱い力の違いをシュレイノリアの強化魔法によって補っていた。


 鍛治仕事を行う際、シュレイノリアに付与魔法を掛けてもらい強化魔法の持続時間の影響によって効果が無くなると、隣の縫製工房に行き、シュレイノリアにもう一度強化魔法を掛けてもらっていた。


 ただ、それも、直ぐに終わる事になった。


 縫製工房を使っていたシュレイノリアは、一番最初に行ったのは、ジューネスティーンの鍛治仕事用のシャツだった。




 シュレイノリアとジューネスティーンは、その日の仕事を終わらせると、寮に戻るが、その日は、シュレイノリアの帰りが少し遅かった。


 ギルドの敷地内にある工房と寮を移動するだけなので護衛が付くことは無い。


 ジューネスティーンは鍛治仕事をするので、いつも汗だくになっていた事もあり寮に戻ると直ぐに浴室に行って汗を流すために風呂を使っていた。


 ジューネスティーンは、いつものように汗を流して軽く湯に浸かった後に出てくると、シュレイノリアも縫製工房から戻ってきていた。


 いつもなら、後からでも風呂に入ってくるシュレイノリアなのだが、今日は、そんな事もなく部屋で待っていた。


「おお、ジュネス。待っていたぞ」


 シュレイノリアは、ジューネスティーンが風呂から出て来ると声をかけてきた。


 そして、満足そうな表情でベットの上に置いてある布を指差した。


「これを着て鍛治をするといい」


 そう言うと、一番上の布を取り上げジューネスティーンに渡した。


 それは、七部丈のシャツだった。


 ジューネスティーンは、受け取ったシャツを広げて見ると、背中と肩の部分、それと腕の部分に同じ色の糸で魔法紋の刺繍が施されていた。


 その刺繍をジューネスティーンが確認するように見ると、シュレイノリアはドヤ顔をした。


「その魔法紋は、筋力強化の付与魔法が施されている。今までは、私が魔法を付与していたが、このシャツを着たら、この魔法紋が魔法を施してくれるから付与魔法が切れる事はない。それと、風魔法の付与が有る。シャツと体の間を風が通るようになっているから暑さも凌げるはずだ」


 鉄は、温度を上げていくと赤くなり、そして白色になる。


 その温度は、800〜1200度となるので、鍛治仕事は暑さに耐える必要がある。


 シュレイノリアは、筋力強化の付与魔法を施し直していた事を、魔法紋を付与したシャツで、付与魔法の施し直しの手間を無くし、ついでに熱対策を施してくれた。


 ジューネスティーンは、早速、渡された1枚を着てから魔法紋に魔力を流してみた。


 シャツに施されている魔法紋が僅かに輝くと、シャツがなびいて体とシャツの間に風が流れた。


 風呂上がりのジューネスティーンには、その風が清々しい風になっていた。


「これ、凄くいいな。ほてった身体が癒されるよ」


 それを聞いて、シュレイノリアは更に嬉しそうにし自慢げに両腕を組んで仁王立ちするように立った。


 身長の小さいシュレイノリアは、ジューネスティーンを胸を張って見上げるような格好になった。


 シュレイノリアは、ジューネスティーンの反応がとても嬉しかったようだ。




 ジューネスティーンにとって、この風魔法によってシャツと体の間を風が通ってくれるのはありがたい。


 鍛治は、1000度前後の鉄を叩くので、炉の温度の高さによる放射熱と叩く素鉄の放射熱によって、いつも汗だくになって仕事をする事になっていたので、ジューネスティーンは、シュレイノリアのシャツを着て嬉しそうにした。


「ああ、これも1枚は、ギルドに渡す事になっているが、それは済んでいる。それにジュネスは鍛治だから、どんなに魔法を付与したとしても汗はかくだろうから、たくさん用意しておいた」


 シュレイノリアの言葉で、ベットに置いてあったシャツをジューネスティーンはみた。


「ここに帰ってきた時、管理人に1枚渡しておいた。ギルドに届けてくれているはずだから、ここにあるシャツは、全部、ジュネスが使って良いぞ」


 それを聞いて、ジューネスティーンは納得した表情をした。


 シュレイノリアの作る物は全部1枚多めに作り、それをギルドに提出する事になってた。


 それと引き換えに縫製工房を使わせてもらい、材料も道具も供給してもらうようになっていた。


 そのため、今回のシャツの生産にも、1枚をギルドに提出しなければならなかったのだ。


 それを寮の管理人に頼んで提出してもらったので、ここにあるシャツは全部ジューネスティーンが使う事ができる。


「助かるよ。鍛治は素鉄も炉も熱くて大変だから、このシャツがあれば暑さにも耐えられそうだよ」


 ありがたそうにジューネスティーンが言うと、シュレイノリアは更に嬉しそうにと言うより偉そうな態度をしていた。


 それは、もっと褒めろと態度で言っているようだった。


「ありがとう」


 ジューネスティーンは、困ったような表情でシュレイノリアにお礼を言った。


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