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ジュネスの剣とパワードスーツ


 ジュエルイアンは、パワードスーツを組み立てたカインクムに、どんな感想を持ったのか気になっていた。


 それを直接聞く事ができるのは、ジュエルイアンとしても面白いのだ。


「ところで、組み立てたあれ、どうだった。」


 ジュエルイアンはジューネスティーン達のパワードスーツのについてカインクムに聞く。


「技術的には、この世界の遙に先の代物だ。 何十世代先の技術って言っても過言じゃ無い。 俺にとっては、色々と盗める技術だらけだった。 それと、話さなかったが、兄ちゃんの持っている剣、あれは画期的な剣だ。」


 ジュエルイアンは、やはりなと予想通りの返事に納得すると、カインクムに話しかける。


「その剣、作れるか? 」


「作り方は聞いた。 ちょっと待ってな。」


 そう言って、曲剣を一振と素材の鉄を持ってきた。


「これが、ジュネス達が持っている剣と同じ物なのか。」


 そう言って、カインクムが作った剣を抜いて確認するジュエルイアン。


「鉄を2枚を貼り合わせる。 硬い素材と柔らかい素材なのだが、柔らかい素材に硬い素材をコの字に巻いて剣にする。 刃は硬く、芯は軟らかくして、斬った時の衝撃を芯の軟らかい素材が受ける。 今まで刃幅の広い剣と対等か、それ以上の性能がある。」


 抜いた剣を見て、カインクムの話を聞きながら答える。


「軽くて強度の強い剣になるのか。」


「そうなる。」


 ジュエルイアンは商人なので、冒険者や鍛治職人程、剣に付いて詳しくは無いが、見た目の鮮やかさに見惚れつつ、話を聞いただけで、同じ様なものを作ってしまったカインクムの技術の高さに感心する。


「そう言えば、うちの娘もにいちゃんの剣を作ってなかったか。」


 慌ててカインクムをみるジュエルイアンが、なんだと言うかおで睨みつけた。


「あんたの娘、ジュネス達の剣と同じ物を、もう、作っているのか。」


「あんちゃん達の話だと、あんちゃんと初めて会った時に剣の事、根掘り葉掘り聞いてたって言ってたから、もう、作っているんじゃなかったのか。」


 ジュエルイアンは、そこまで詳しく聞いていなかったようだ。


 エルメアーナの剣が、軽くて良く斬れる剣だと聞いていて、売れているとは聞いていたが、その剣がジューネスティーンが絡んでいたことまで聞いていなかったようだ。


 ジュエルイアンは、あっけに取られた顔をしたのだった。


「迂闊だった。 それでか。 一応、報告は受けていたが、剣の受注が生産に追いつかないからと言われて、助手を紹介して欲しいと聞いた。 それは、この剣のお陰だったんだな。」


 ジュエルイアンは、エルメアーナの剣が、冒険者に人気が出て、生産が追いつかない事を、秘書のヒュェルリーンから聞いていた。


 その際に、店番に若かったが、商売上手で、気にかけていた女子を1人送っている。


 ただ、その店番のお陰で、受注に生産が追いつかないという話も聞いていた。


 その後、また、鍛治の手伝いの出来る職人を送って、何とかしたのだが、売れる剣だとは聞いていたが、それがジューネスティーンが絡んでいたとは聞いていなかったのだ。


 ジュエルイアンの答えに、カインクムは、意外な回答だと思った。


「お前にしては、後手に回ったな。」


 珍しい事もあると思って言った。


 それを聞いて、ジュエルイアンは少し機嫌を損ねていう。


「うるさい。」


 少しムッとして、返してしまうが、剣の作り方が外に漏れる事が気がかりになる。


「それより、この剣の作り方は他には漏らすなよ。」


 カインクムは、当たり前の様な顔をして答える。


「そのつもりだ。 だが、俺が作って売る分には問題無いな。 お前さん、この剣の事は何も知らなかったみたいだからな。」


 苦虫を噛む様な顔をするジュエルイアン。


 この剣をカインクムが売ることに関して、何かを言う権利はジュエルイアンには無い。


 契約を取って独占販売をすれば、かなりの利益になると思ったのだが、その契約を結んで無い以上、何も言うことはできない。


 しかし、気がかりな事がありそれをカインクムに確認をする。


「なあ、その製法だが、剣を見ただけでは分からないものか? 」


 その質問を聞いてジュエルイアンも剣の複製ができるのか心配になった。


「俺も、見ただけでは思いつかなかった。 恐らく剣を見ただけで、硬軟の違いが分かるのは、そうは居ない。 それにこの弧を描く曲線なんだが、出来上がるまでは直剣なんだよ。 最終工程で曲げるなんて製法まで考え付く人間は・・・、居ないと思う。 あれは、あのあんちゃんだから思いついたと思っていい。」


 それを聞いてジュエルイアンは、安心する。


「あんたがそう言うなら、大丈夫だな。 それより、あんたもその剣を作るんだったな。 人が必要になったら、こちらに連絡してくれ。 直ぐに手配する。  それと、申し訳ないが、情報が漏れない様にする必要があるので、雇うのは亜人の奴隷としてくれ、表向きは、あんたの奴隷になるが、お前達夫婦のことだから、扱いは人と一緒になるだろうしな。」


 奴隷として売られている亜人をジュエルイアンは奴隷商から買い取る。


 通常は、ジュエルイアンの店で、奴隷紋の解放を行なって、自分の店の従業員として使い、給与も支払う。


 この世界で不当に扱われている亜人や奴隷を、そういった境遇から救う事もジュエルイアンは行なっているのだ。


 ジュエルイアンは、従業員として、買われた奴隷達の中に、鍛治技術に興味の有った数名を、エルメアーナの店に派遣している。


 ただ、奴隷商人に買われた亜人達は、奴隷紋を消した後、普通に人と同じに働いていても、拐われる事が多い。


 治安の悪さと、人属に対して亜人・エルフ・ドワーフの人口差によって、数の多い人属から格下の様に見られがちな亜人は、奴隷から解放された後にも奴隷商人の誘拐対象とされている。


 その為、その保護も出来そうな人属も送り込んでいる。


 また、大ツ・バール帝国の様に、亜人の奴隷を認めている国では、金糸雀亭の亜人の様にそういった奴隷商人から保護するために奴隷紋を刻まれている亜人も、このギルドのある第9区画では、少なくない。


「ああ、その時はお願いする。」


 カインクムは、ジュエルイアンの意図を感じつつ答える。


(しかし、困った問題だ。 ある程度の技術の流出は仕方が無いが、機密の塊だな、あの連中は。 少しは自覚してくれ。)


 そう思いつつ、2種類の金属を眺めるジュエルイアン。


 そうこうしていると荷馬車が、工房の裏につけられる。



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