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剣 〜工房を使う2人の評価〜


 ジューネスティーンの鍛治工房を使用する話から、シュレイノリアの縫製工房の使用の話が出てきたことで、始まりの村のギルド支部の職員達は、今度の転移者から新たな恩恵を受けられると考えていた。


 シュレイノリアの魔法能力の高さから、魔法付与された衣類は防具としての効果が期待された。


 冒険者は魔物と戦うが、その際、防具を取り付け魔物の攻撃から身体を守るのだが、全てが防具で覆うことは不可能であり、シュレイノリアが衣類に防御的な魔法付与を考えてくれたら、今まで防ぎきれてなかった部分を衣類の魔法付与によって補える可能性があると職員達は考えた。


 冒険者のケガは、その怪我の大きさによっては長期休業、場合によっては引退に追い込まれる。


 防具のある場所を、魔物が牙や爪で貫くことは難しいが、防具のない部分には違う。


 シュレイノリアが縫製工房を利用すると言い出した事から、衣類に関する何かを作ろうとしている事と、魔法について極めてしまい現在の魔法を凌駕してしまっているシュレイノリアが、魔法付与した衣類を作ったらと考えると冒険者の致傷率が大きく減る可能性があると考えられた。


 職員達の間でそんな話が流れるようになった。


 そして、シュレイノリアの魔法付与された衣類用の材料や道具等が、エリスリーンの方から必要なものは全て手配するようにと言われており、要求された通りに手配するようになっていた。


 書類等は事後処理で構わないので、急いで渡せるようにとギルドマスターであるエリスリーンからの指示が出ていた。


 シュレイノリアに対する期待は非常に大きかった。




 しかし、それに対してジューネスティーンの斬る剣に対しては、大した期待はされてなかった。


 いまだにジューネスティーンは、オマケのようにギルド支部の職員からは思われていた。


 ジューネスティーンとシュレイノリアの2人は鍛治工房と縫製工房を使うことを許可されたのだが、その際、シュレイノリアは請求されたものは全て許可されて直ぐに用意されたが、ジューネスティーンには材料の提供は許可制となっていた。


 ジューネスティーンが欲しい材料も工具も、常に許可制となっており材料を入手するにも時間がかかっていた。


 そして、許可が降りないことも有った。


 周囲の職員からは、ジューネスティーンの評価は低い事から、シュレイノリアとの対応の格差が大きかった。


 そんな状況でもジューネスティーンは、自分の剣を作るために鍛治工房に通っていた。


 通常なら一緒にいるシュレイノリアの待遇と大きく違う事で、やる気を無くしてしまうだろうが、ジューネスティーンには、そんな様子は無かった。


 ただ、ひたすら剣を作るために何度も金槌を振るっていた。


 そんな中、ギルドの職員達が気になったのは、常に2種類の素材を要求してきたこと、そして必要とする材料の量が通常の半分以下だった事だ。


 ジューネスティーンの作る剣は、一般的な斬る剣とは全く違う。


 そして、長い間工房で素材を金槌で叩いていた。


 ただ、叩くにしても11歳のジューネスティーンでは、力が足りないはずなのだが、どうも様子が違っていると、工房を使い始めてから徐々に職員達は思い始めていた。


 それは、一般的な刀鍛冶とは違い、かなり長い期間、その金属を叩いていることに周囲は気がつき始めた。


 当初は、子供だから時間がかかるのだろうと思われていたのだが、鍛治仕事を行う際に、シュレイノリアが、筋力強化の魔法を行っていた事から一般的な大人よりも力が強くなっていた。


 最初は、子供の力では非力なために叩く時間が長いのだろうとなっていたが、シュレイノリアの魔法によって、大人以上の力を出せるように強化されている事を聞くと、ギルド職員の中から疑問の声が出始めた。


 それは、何で素鉄の状態で何度も叩くのか気になり始めていた。


 少し鍛治を知っている人達から、ジューネスティーンの鍛治が、一般的な鍛治と違うと言われ始めた。




 ジューネスティーンは、何度も素鉄を叩くのは、素鉄の不純物を取り除くため行っていた。


 素鉄は、何度も叩いて広がるので、広がると素鉄を折り曲げて同じ大きさに戻す。


 そして、また、叩いて同じように広げる。


 それを繰り返し行うことで、不純物を取り除き純度を上げるていた。


 それを、周囲の職員達は様子を見に来ると、何でそのような事をするのか理解できずにいた。


 鍛治に詳しい職員にもジューネスティーンの叩いて折り曲げて重ね合わせて叩く事が、何でなのか理解できずにいた。


 ジューネスティーンの鍛治の方法が、一般的な方法からかけ離れている事から、また、ジューネスティーンの評価は下がっていた。


 周囲は、ジューネスティーンが普通に剣を作っていたら、それなりに見られただろうが、何度も叩いて伸ばしたら折り曲げて、また、叩くを繰り返す回数が、尋常では無かったことが、不必要に余計な作業をしていると思われてしまっていた。


 ジューネスティーンとしたら、不純物を取り除くために行っていたのだが、周囲は気がついてくれなかった。


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