多対1 〜エルフ達の課題〜
流れている水に、棒が差し込まれたら、棒は水の流れに逆らうことになるからその周りに水の流れを妨げられた事で水面に波紋ができる。
そう言ったことを言っているのだとすると、魔素の流れを見る事ができれば魔物を見つける事が出来ることになる。
(魔素の流れ。)
そう念じるが、思った様にイメージ化できないでいると、シュレイノリアが、突然話しかける。
「あっ、動き出した。」
そう言うので、先ほど見つけた監視者の方を見ると、蹲ってゆっくりと起き上がろうとしているのが、遠目で見えた。
あまり、見続けて監視者に気がついたことを悟らせない為、ジューネスティーンは目を逸らす。
(成る程、魔素の流れを感じると、周りの動きが手に取るようにわかる。 じゃあ、さっき倒した魔物のコアも探せるのか。)
そう思うと、シュレイノリアに、聞いてみる。
「なあ、それだと、今倒した魔物のコアの場所も簡単に見つかるのか? 」
そう尋ねると、シュレイノリアは、ニタァとして答えてくれた。
「そんなこと、雑作もない。 直ぐに分かる。」
(成る程、自分の見付けたい物も探し当てる事が出来るのか。)
魔法の有用性を考えていると、2人のやりとりを、じっと見つめているメンバー達、その中で痺れを切らしたアンジュリーンが、ジューネスティーンとシュレイノリアの話に入ってきた。
「ねえ、どういった魔法だか分かった? 分かったら私らにも説明してもらわないと、この娘の魔法はあんたの通訳無しで通じないんだから。」
そう言われて、我にかえるジューネスティーンが、アンジュリーンに詫びを入れる。
「あぁ、すまん。 大体分かった。 魔素の流れを感じる事が出来れば、ほとんどの物が見える。 これが出来れば魔物は全て見つけられる。」
「分かったから、どうするのか教えてよ。」
せっつくアンジュリーンに、ジューネスティーンは普通に答える。
「魔素の流れを感じればみれるらしい。」
そういうと、前衛の2人、レィオーンパードとアリアリーシャが、試そうとして目を瞑るが、そのうちに唸り出す。
アリアリーシャが、大きく息を吐く。
「ダメですぅ。 よくわかりません。」
「姉さんもかぁ。」
そう言って、諦めモードでレィオーンパードも言う。
エルフの2人も試してみた様だが、表情からダメだと判断する。
「魔法はイメージが大事だからな。 イメージした時点で魔法が発動してもおかしくは無いんじゃないのか。」
自分の疑問を自問自答する様に言葉にする。
「分かったわ。 そういうものだと思うことにする。 ここで、魔法概念についての講義をしてもらうわけにもいかないから。 それより、避けても追い掛ける魔法ってどういう事なの、それって私の矢にも応用が効くのかしら。」
アンジュリーンとカミュルイアンについては、こちらの魔法の方が重要である。
弓矢は真っ直ぐに向かって行くので、避けられたらそれまでだが、避けられたら避けられた方に向きを変えて矢が向かって行ったら百発百中ということになる。
この前の街道沿いでの魔物との対決で何度も矢を避けられたが、避けても避けた方向に向かっていけば、あの時の魔物も自分達だけで十分に倒せたことになる。
2人にとっては、火魔法や雷魔法を付与して、威力を上げているのだが、避けられてしまうことで必殺の矢も当たらなければ何の意味もない。
ただ、魔法付与の矢を放っただけで、相手にダメージは与えられませんでした。
なので、相手に向かって行く魔法は、非常に興味が有る。
「じゃあ、次ね。 どうやったら、魔法が全部、魔物に当たるの。」
アンジュリーンがシュレイノリアに尋ねる。
「魔法を魔物の魔力に放った。 ただそれだけ。」
キョトンとした顔で話すシュレイノリアに、理解不能の言葉を喋ったと思ったアンジュリーンが、ジューネスティーンにお前の出番だと言う様に睨みつける。
アンジュリーンに気押されるジューネスティーンが、仕方がないと言った感じでシュレイノリアに話しかける。
「さっきのアイスランスの全体攻撃なんだが、何かしたのか? 」
シュレイノリアは、少し考える素振りをしてから答えてくれる。
「アイスランスを作って、魔物に当たるのる様に念じた。 魔素の流れを見てそれぞれの魔物は検知出来ていたから、その魔物の魔力目掛けて放った。」
それを聞いたジューネスティーンは、額に指を当てているので、今の話を考察しているのだろう。
自分の考えがまとまった様子でシュレイノリアに、また、質問する。
「魔物に向かって放ったとしても、魔物が動いたら、当たらないだろう。 その辺はどうしたら当たるんだ。」
少し考えるシュレイノリアだが、直ぐに考えはまとまった様だ。
「アイスランスは、魔物の頭か心臓に当たる様にする。 だから、当たった時のことをイメージして放つとその通りになる。」
要するにアイスランスは、魔物に刺さった時の状況をイメージすると、そのイメージに合う様に発生して放たれると言うことになる。
その中には、数秒後の条件を予測してその位置に来る様に放たれるから外れることはない。
アイスランスが刺さった時のイメージの通りにならない時は、勝手にアイスランスが軌道を変えて、刺さってくれる様で有る。
「成る程、アイスランスが刺さった時のことをイメージして放ったらしい。 刺さった時のイメージになる様にアイスランスを発生せよみたいな感じらしいな。」
それを聞いたアンジュリーンが、自分の矢に置き換えて考えている様だ。
「それだと、弓矢を放つ位置が当たる方向に撃ち出すってことだから、私らの矢じゃ無理ってこと。」
「いや、そうとも言えない。」
ジューネスティーンが、出来ないのかと言ったアンジュリーンの話を否定した。
「弓矢の軌道を曲げる事を考えれば、同じ事が出来るんじゃないかな。」
「どう言う事。」
アンジュリーンがジューネスティーンの言葉に食いついてきた。
「ようするに、弓矢の軌道を変える付与魔法を使えば良いんじゃないかな。 つまり、付与魔法で魔物の何処に矢を当てるかを決めて放つ。 そして、魔物が動いたらその動きに合わせて向きを変える様にというか、そのヒットポイントに向かって放つ様にするってことなんだと思う。」
「でも、アイスランスって魔法で作った氷の塊だから、そう言う事が出来るんじゃない? 」
「弓矢に風魔法で方向を変えさせたらどうなる。」
「あっ。」
「風の中を進んでいる弓矢なんだから、風魔法でヒットポイントに誘導させると考えれば、曲がる軌道の矢が放てるんじゃないか。」
「そうね。 そうよね。 試してみる。」
そう言うと、アンジュリーンは弓矢を構えるのだが、視界の範囲に目標にできる物が見当たらない。
「あー、ここじゃ無理だわ。 でも、概念はなんとなく分かったわ。」
そう言うと、構えた弓を元に戻すと、残念そうな顔をするが、直ぐに引き締まった顔になると、カミュルイアンをみる。
「あんた、今の話わかったわね。 今度、一緒に練習するからね。」
引きつった顔で、アンジュリーンに肯くと、カミュルイアンは、ジューネスティーンを見る。
カミュルイアンは、不安そうに見ているのだが、その表情には、助けて欲しそうな感じが見受けられる。
「大丈夫だ。」
ジューネスティーンは、カミュルイアンにそう言う。
(これは、どこかで細かく解説してくれるというサインだ。)
お互いに対抗意識を持っている2人なのだから、アンジュリーンが分かってカミュルイアンが分からないとなると、何を言われるか分からないので、そのため、カミュルイアンがジューネスティーンに助け舟を仰いだのだ。
「今日は、この辺で戻ろう。 さっきのアイスランスの攻撃で倒した魔物のコアの回収には時間がかかりそうだから、その時間も含めて帰り支度だ。」
そう言うと、広範囲に散らばったコアを集めに入る。




