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多対1 〜マルチ攻撃〜


 ジューネスティーンは、対処方法を考える。


 魔物は、シュレイノリアに向かって走ってくるのだが、数が多いのだ。


 流石に、弓や剣では、対処しきれない数の魔物なのだ。


「仕方が無い。 シュレイノリア、魔法で数を減らしてくれ、撃ち漏らした魔物は5人で対応する。」


 シュレイノリアは、自分の出番が来たとご満悦の様だ。


「やっと、私の出番。 私が全部仕留める。 心配要らない。」


 そう言ってロットを頭上に掲げる。


 それを見て、シュレイノリアが、魔物以外の事を考えているか心配になって、慌てて声をかける。


「ちょっと待て、周りに人が居る可能性も忘れるなよ。」


 慌てって、帝国の監視が何処かにいる可能性を示唆する。


「そうだった。 じゃあ、ちょっと待て。」


 どんな魔法を使おうかと悩みだす様に、顎に手を当てて考えだす。


 それを見たジューネスティーンには、シュレイノリアが、考えていた魔法に心当たりがあったのだろう。


 ジト目でシュレイノリアをみると、直ぐに質問してきた。


「お前、この周りにドーナツ状の炎の海でも作ろうとしたな。 アイスランスで構わないから1体毎に対応してくれ。 ここまで来る魔物の数を減らして貰えればそれで構わない。」


 慌ててジューネスティーンが言うと、シュレイノリアは、何かを思いついた様に、右手の拳を左の掌にポンと当てる。


「分かった、アイスランスで対応する。」


 そう言うと、ロットを片手で持った状態で、両手をV字の様にかざすと詠唱する。


「アイスランス、マルチ、ワイルド、ビースト、シューティングス」


 珍しくシュレイノリアが声を出してそう唱えると、ジューネスティーン達に向かってくる魔物の上空に幾つもの魔法紋が現れる。


 上から見たら、ジューネスティーン達のいる中心部に一直線で向かってくる土煙と、その途中にドーナツ状に魔物の数と同じ数の魔法紋の光が見えただろう。


 その向かってくる魔物の上空の魔法紋が、氷の塊りを作り出し一気に魔物に向かって放たれる。


 ただ、一部の魔物はアイスランスに気が付いた物もいたり、前の魔物を避けようと左右に移動した物もあったのだが、アイスランスは、寸分違わず魔物の頭や心臓にヒットしていた。


 どの魔物も上空から降り注いだ氷塊が突き刺さり、倒れて、魔物特有の黒い霧が舞い上がっていく。


 一瞬で向かって来ていた魔物は黒い霧に変わっていったのを見ている。




 ジューネスティーンが、見ている方向に動いている魔物は見当たらないので他に聞いてみる。


「周りの状況はどうだ。」


 ジューネスティーンがそう言うと、周囲を警戒していた4人が、少し緊張を解いた様にしながら答えてきた。


「こっちの魔物はいなくなったわ。」


「私の方も、問題ないですぅ。」


「オイラの方も魔物は居なくなった。」


「俺の見る限りでは大丈夫だと思う。」


 最後にレィオーンパードが全周を見渡してから、そう言うと、全員が肩の力を抜いて、剣を鞘に収める。


「少し攻撃を躱して向かってくるかと思ったけど、まさか、全部倒してしまうなんて思わなかったわ。」


 アンジュリーンが、シュレイノリアの攻撃に感心する。


「問題無い、魔物に攻撃が外れない様にした。」


「そうは言っても、全方位に一度に攻撃って、目で見なくても当たるって、頭の後ろにも目があるんじゃ無いのか。」


 レィオーンパードが言う。


「頭の後ろに目は無い、だけど、魔物の魔力が分かったから、どの位置に居ても問題無い。」


 ジューネスティーンが怪訝な顔をする。


「後ろの魔物も分かるなんて、あんた、魔物の不意打ちに会う事ないわね。」


 アンジュリーンは呆れた様に言うと、シュレイノリアは、右手の親指を立てて自慢げに言う。


「問題無い。」


 シュレイノリアがアンジュリーンに答えると、アリアリーシャが、疑問に思った事を聞く。


「あのぉー、後ろも見えるって事は、隠れている魔物も見えるのですかぁ? 」


 恐る恐るシュレイノリアに聞くと、視線をアリアリーシャに向けて、また、右手の親指を立てて言う。


「問題無い。 魔物が居るだけで魔素の流れに変化が生じる。 私も反省した。 以前は、木や建物のノイズが邪魔だったが、それを除去する方法を編み出した。 魔物の魔素の変化を感じるだけだから、何に隠れていようとも問題は無い。」


 以前は、森の様な場所では、木々のノイズが邪魔で遠くまで見渡せないと言っていたが、今回は問題無い様子だった。


 何らかの方法で、木々の持つ魔素をキャンセルする方法を見つけた様だ。


 シュレイノリアの話に、ジューネスティーンが質問する。


「今の、魔法は、魔物を感知してアイスランスを魔物に撃ったのか。」


 肯くシュレイノリアに、更に質問する。


「魔物がアイスランスを避けたらどうなる。」


「避けたら、避けた方向に曲がるから問題無い。 魔物の魔力に反応して追いかけるから、外れる事はない。」


「・・・。」


 ジューネスティーンは、話の内容を頭の中で再確認している。


「すまないが、一つずつ整理していく。 最初に、お前は魔物がどこに隠れていても直ぐに分かるといったが、前も後ろも物陰も関係無く魔物を見つけることができるのか。」


「問題無い。 家の中でも建物の向こう側でも見つけられる。」


「魔物が魔法を回避しようとしても、魔法が魔物を追い掛けるので外す事はない。」


「そうだ、魔物の出す魔力を追いかけるから、外れる事はない。」


 魔物が何処にいても見つける事が出来る。




 隠れていても問題無く見つけられるということは、今までレィオーンパードとアリアリーシャの目と耳に頼っていた検索を魔法で感知できる。


 しかも障害物に関係無く見つけられる。


 それと建物の向こう側となると、範囲も広い。




 もう一点、魔法が魔物を追い掛けるということは、その魔法を弓矢に付与したら、アイスランスという氷塊が方向を変えられるなら、弓矢も同じ事が言える。




 ジューネスティーンは、アンジュリーンとカミュルイアンを交互に見て、この2人にその魔法を覚えさせることを考えている。


「成る程、お前、今の魔法でこの周辺の魔物が何処にいるか分かるか。」


 そういうと、シュレイノリアが、少し考える様な仕草をする。


「半径700m程の中に魔物の気配は無い。 けど、人の気配は有る。」


 それを聴くと、ジューネスティーンの顔色が変わる。


「人の気配? 」


「そう、朝、向かいの宿屋の前にいた人、多分、今は、のびている。 さっきの魔物に吹っ飛ばされていたはずだから。」


「そんな事まで分かるのか。」


 ジューネスティーンは、呆れた様に言うと、シュレイノリアはニヤリとする。


「ブイ」


 調子に乗ってVサインを出して肯定するシュレイノリア。


「その魔物を見つける方法なのだが、難しいのか? 」


「それ程難しくは無い。 誰でも出来ると思う。 探したい物をイメージすれば良いだけ、そうすれば見つけられる。 サーチの応用だ。」


 シュレイノリアがそう言うと、女性陣はイライラした顔をしており、男2人は、何を言っているのか分からないと、惚けた顔をしている。


 ジューネスティーンが質問を続ける。


「じゃあ、魔物を探したい時は、魔物をイメージするのか? それだと、見たことも無い魔物は、それでは見つける事ができないのか? 」


 そう言うと、シュレイノリアは右手の人差し指を顎に当てて空を見上げる様にして少し考える。


「そういう事で見つける事も可能。 だけと少し違う。 魔素の流れを検知している。」


 その話にジューネスティーンもピンと来ない。


「それだと、よく分からない、何かに例えられないか。」


 シュレイノリアは、考え込むと、すぐに思いついた物を言い出す。


「ゆっくりと流れる水には波紋は無いが、棒を差し込んだ時の水の流れに似ている。」


 ジューネスティーンは考え込む。


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