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剣 〜エリスリーンの許可〜


 メイリルダは、エリスリーンに面会の予約を入れたところ直ぐに呼ばれた。


 メイリルダのような下から数えた方が早いギルド職員が、ギルド支部トップへの面談を求めて、そう簡単に面会できるとは思っていなかったのに、朝一番で呼ばれるとは思っていなかった。


 エリスリーンの執務室に入ると、メイリルダは、シュレイノリアが服を作りたいので、縫製工房があれば使わせて欲しいということと、そして、道具と生地も提供してほしいという事を伝えた。


 ただ、メイリルダとしたら、そんな生地も道具も提供するという都合のいい要求が、そう簡単に通るのか不安そうに話しをした。


 しかし、エリスリーンは、それを最後まで真剣に聞いていた。


「なるほど、そういう事なら問題無い。縫製工房も使わせてくれて構わない」


 エリスリーンは、面白そうな表情で答えると、何か考えるような表情をした。


 しかし、メイリルダは、まだ、不安そうな表情をしていた。


 工房を使う話は了解が取れたのだが、材料の提供について、エリスリーンは何も回答してくれていない事が気になっていたのだ。


(縫製工房なら、ある程度の道具は揃っているかもしれないけど、生地とか材料は無理よねぇ)


 メイリルダは、少し諦めたような表情をしていた。


「材料の提供か」


 エリスリーンは、ポロリと言うので、メイリルダは、材料の提供はダメだと確定したと思った様子で、少しがっかりした表情をした。


 メイリルダとしたら、シュレイノリアに話した時に、どんな反応をするのか気になったようだ。


 しかし、エリスリーンは、何かの思いを含むような表情をしつつメイリルダを見た。


「いいだろう。材料もギルドが全て提供しよう。ただしだ」


 エリスリーンは許可を与えてくれたのだが、直ぐに条件を付けると面白そうにメイリルダを見た。


 メイリルダは、ホッとしたのも束の間で、その後に、どんな条件を付けられるのか気になり、不安そうな表情でエリスリーンを見ていた。


 メイリルダの様子を面白そうに見ているエリスリーンは、ギリギリまで間を作っていた。


 エリスリーンは、メイリルダをジーッと見ていた。


「シュレイノリアには、何かを作る際は、必ず1着多く作るようにさせるようにして、その1着はギルドに提供するようにしする。材料まで提供するのだから、その対価として1着をギルドに渡してもらうようにし、残りは自分で使ってくれて構わないわ」


 そのエリスリーンの言葉にメイリルダはホッとした。


 メイリルダとしては、シュレイノリアの要求は、全て通っていたのだから、その条件として作る際は常に1着多くというのなら、それ程面倒ではないのかと思ったようだ。


「はい。その条件でシュレイノリアに伝えます」


 その答えを聞いてエリスリーンはニヤリとしたが、メイリルダはエリスリーンの表情を見ても、その心の内は理解できないようだった。


 エリスリーンとしたら、シュレイノリアの考える魔法付与された衣類に興味があった。


 シュレイノリアの魔法能力の高い事は報告を受けていたので、そのシュレイノリアが、どんな魔法付与を与えるのか、それにどれだけの威力があるのか、市販されている魔法付与されたものと比べて、どれ程の違いがあるのかが気になったのだ。


 場合によっては、新たな高性能の魔法付与された製品をギルドで生産し販売する可能性が出る。


 そして、性能の高い魔法付与された服は、冒険者の生存率や負傷率を下げる可能性が高いのだから、ギルドは冒険者にそれを供給できるようになれば、その後の魔物のコアの入手率上昇に影響を与える事になる。


 また、シュレイノリアが考える新たな魔法付与の服を手に入れて複製できれば、ギルドとして魔法について大きく前進する可能性があるのだ。


 その有用性を考えたら、シュレイノリアに工房と材料等の提供など、どうという事はない。


 技術的な面で、シュレイノリアの魔法能力に、ギルドがついて来れるのかという問題はあるにしても、開発されたものがあれば研究することで、直ぐには複製する事はできなくとも研究データが残り、研究が進めば複製する事も可能になるかもしれない。


 エリスリーンは、シュレイノリアが、これほど早く結果を出せている事に満足していた。


「話は以上よ。シュレイノリアには、服を作る時に必要な物は全部ギルドが用意するけど、作る時は必ずギルドに提出用も作るように伝えておいて」


 エリスリーンは念押しするように言うが、メイリルダは、その程度ならシュレイノリアが作ってくれるだろうと思ったようだ。


「はい、伝えておきます」


 メイリルダは、何も問題ないと思った様子をエリスリーンは気になったようだ。


「ちゃんとギルド用に1着用意させるようにな」


「えっ!」


 メイリルダは、エリスリーンが更に念押ししてきた事に少し驚いていた。


「子供は、変なところで面倒臭いと思うことがあるから、伝えただけだと作り終わった後に、“ああ、忘れてた”とか言って、結局作らないで終わることもあるから、材料を渡したら常に様子を見にいくようにしておいて」


 その説明を聞いて、メイリルダは、そんなものなのかと思ったようだが、そんな態度にエリスリーンは少し不満を覚えたようだ。


「一緒に住む事は終わったけど、ギルドの寮を使っている間は、お前が面倒を見るのよ。だから、ちゃんと2人を管理するようにしておいて」


 メイリルダは、考えるように上を見て、そんなものなのかと思ったようだが、下から何かを感じた様子で視線をエリスリーンに向けた。


 そこには、お前がちゃんと管理しろというような表情をしたエリスリーンがいた。


「か、かしこまりました」


 メイリルダは、エリスリーンの視線が重いと感じ、絶対にシュレイノリアにギルド用の1着を作らせないと、まずいだろうと思ったようだ。


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