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ジュネスのアイスランス


 身長120cmのフィルルカーシャと、身長180cmのジューネスティーンでは、周りから見たら親子と思われる程の身長差がある。


 フィルルカーシャとすれば、今まで、これだけ身長差があると、無意識的に見下す様にされることが多く、自分の不安な部分を隠す事なく言うジューネスティーンを珍しいと感じた様だ。


 ジューネスティーンは、アリアリーシャよりも10cm小さいフィルルカーシャを見ると、同じウサギ系の亜人でも個人差があると思ったのだ。


 ウサギ系の亜人では、フィルルカーシャの身長が、標準的なのだろうが、メンバーの中で一番小さい事に引け目を感じているのかもしれない。


 でも、その引け目から何かを得ようとしている積極性は感じるのだ。


「じゃあ、ちょっと試してみますね。 まあ、氷も水も同じものですから、水を集めて凍らせるだけなので・・・。」


 そう言って、自分の胸の前に水を集める。


 20cm程の球体の水が出来ると、形がラクビーボールの様になり、少し小さくなった。


 少し、小さくなった状態を維持すると、元の大きさに戻る。


 すると、それが一瞬で固まる。


「おっ、上手くいった。 とりあえず、砲弾型アイスランスは、こんな感じかな。」


 ジューネスティーンは、胸の前に氷でできたアイスランスを作る。


 それをフィルルカーシャは見上げて、一部始終を見ていた。


 作る前は、不安そうに、出来るかどうか分からない様な事を言っていたが、実際に作ってみたらら、一発で作ってしまった。


 ジューネスティーンもシュレイノリアと同様に、魔法の天才だとフィルルカーシャは実感したのだ。


 目の前に出来た砲弾型アイスランスを、フィルルカーシャは、食い入る様に見ている。


「すごい。 直ぐに作れてしまうのですね。」


 フィルルカーシャは、感心しているが、直ぐに今のアイスランスについて質問をする。


「あのおー、このアイスランスなのですが、最初は水の球でしたけど、それが長細くなったところまではいいんです。 でも、凍る前に、一瞬、小さくなった様に見えたのですけど・・・。」


 フィルルカーシャは、目の前に出来た水球が、形を変えていく様を、一部始終見ていたのだ。


 その時に気がついた事を、ジューネスティーンに質問したのだ。


「ああ、今のは、水魔法で水を集めて、砲弾の形にしたんだけど、その後に凍らせるのは、圧縮してから膨張させてみたんだ。」


 ジューネスティーンの話を聞いて、何のことなのかとフィルルカーシャは首を傾げて不思議そうな顔をする。


 その顔を見て、圧縮と膨張の温度変化について説明した方が良いかもと思った様だ。


「ああ、さっきの着火の時に少し話したけど、圧力を加えると温度が上がって、圧力を下げると、温度は下がるんだ。 さっき、水の球が小さくなったって言ったけど、小さくなった時に少し温度が上がる。 その時に水の熱を大気中に逃がしてやった。 それから、圧力を戻すんだ。 水の圧力が戻ったら温度が下がる。 常温から0℃以下になる様に圧力を落とす様に膨張させた。 だから、一瞬圧力を加えていたから、水の球が小さくなった様に見えたんだろう。」


 フィルルカーシャは、感心する。




 自分の知らない、自然科学について詳しい、ジューネスティーンならではの発想だとフィルルカーシャは思った様だ。


 その恩恵を、自分が、今受けているのだと思うと、この合同の狩りが自分を大きく成長させられる。


 最初に出会って、2人のエルフの我儘で、このパーティーメンバーとの会食だった。


 面倒な事だと思ったのだが、今、こうして自分にも魔法が使えるようになった。


 あの時は、たかが新人、東の森の魔物を倒したとは言っても、1匹を6人で対峙したなら、運や偶然で倒せる事もあるだろうと思っていたのだが、先程の戦い方、自然科学に精通したその知恵と教養が、魔法や戦闘に活かせているので、それが実力として現れ、結果として東の森の魔物を倒したのだと認識できたと思えるのだった。


「圧力が変わると、温度が変化するんですか。 それも自然科学なのですね。」


「ん? ええ、そうですね。 圧縮すれば、温度は上がって、膨張させれば、温度は下がります。 概念的な事として覚えてただけなので、公式とかはよく覚えてないんです。 だから必要以上に圧力を加えていたかもしれません。 公式から計算して圧力や温度をもっと詳しく考えれば、もっと効率良く魔力を使えると思います。 だけど、今は、大体こんなもんかなって感じでやってみただけなんです。 上手くいったのは偶然です。」


 ジューネスティーンは、フィルルカーシャの言葉が、真剣に話してくれていると感じたのだろう、何だかくすぐったい様な気分になってしまったのか、少し言い訳ぽい答え方をしていた。


「偶然でも作れるって凄いです。 法則性を知っているから出来たんですね。 私は、圧力によって温度が変わるなんて、聞いた事も考えた事も無かったです。 その知識が、魔法の成功に大きく貢献しているって実感できました。」


「そうだね。 この世界の魔法はイメージと魔素が融合して具現化するけど、自然法則にも則っているから、それを覚えるだけでも魔法は威力が増すと思うよ。」


「それが、さっきのオナラだったのですね。」


 フィルルカーシャは、火魔法の時に集める気体としてオナラを上げた事を言う。


 そう言われてジューネスティーンは、火魔法を教えた時に悪い事をしたと思い、困った顔をする。


「大丈夫です。 髪の毛は時間が経てば新しいものが生えてきます。 でも、この時間は、魔法を覚えられたこの時間は、今だけです。 これから先に同じ様に、あなた方から教えを乞うことが、出来るかなんてわかりませんから、髪の毛程度なら平気です。 でも、さっきは少しびっくりしましたけど、今はもう平気です。」


 ジューネスティーンは、少しホッとする。


 髪の毛に影響が出た事で、悪い事をしてしまったという思いが少し緩和された。


「それよりも、今のアイスランスを覚えたい。 その思いの方が強いです。」


 そう言うと、フィルルカーシャはジューネスティーンに笑顔を向ける。


「今の話を聞いて、私にも何だか出来そうな気がしてきました。 水魔法で水を集めて形を作る。 それを氷にする。 水と氷についても圧縮して膨張させるなんて事で温度を下げて氷にするなんて発想は私にはありませんでしたが、見せてもらって原理を教えてもらえたので、何だか出来そうです。」


 すると、フィルルカーシャは両手を胸の前に、手のひらを合わせると、そのまま左右に開く。


 手のひらの間は30cm程開ける。


 手のひらの間にフィルルカーシャは意識を集中させる。


「ウォーター。」


 手のひらの間に20cm程の水球ができると、直ぐに形がラクビーボールの様になり氷に変わる。


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