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火魔法ができないユーリカリア

 

 ジューネスティーンは、シェルリーンの状況から、火魔法については、もう少し火になれさせる必要があると考えたのだ。


 時間が掛かりそうな火魔法を後にして、別の魔法を覚えさせる事にする。


「じゃあ、ちょっと別の魔法を試してみましょう。 火は苦手だったみたいですけど、これなら問題無いと思いますので、ちょっとみてください。」


 そう言うとジューネスティーンは、地面にしゃがみ込んで右手をつく。


 すると、ついた手の前の土が盛り上がってくる。


 左右に50cm、幅10cm、高さ1m程の石の壁ができあががる。


「ストーンウォール? 」


 その石の壁を見て、シェルリーンはつぶやいた。


 土を利用して防御に使うには都合が良い魔法である土魔法であるが、この程度の大きさでは、大した効果は期待できないのだが、つかみだけでも出来る様になれば、後は鍛錬で何とでもなる。


 コツだけ覚えてもらえれば、ユーリカリアのパーティーには、ウィルリーンも居るので、徐々に大きな壁も作れる様になると、ジューネスティーンは、考えているのだ。


「とりあえず、この程度から始めれば良いと思います。 慣れてくれば、もっと大きなものも作れる様になります。 それと、この魔法は、土魔法なのか、錬成魔法なのか微妙なんですよ。 周りの土を集めて形を変えるだけなので、属性が土属性なのか無属性なのか微妙なんですよ。」


 よくみると、壁になっている周りが少し凹んでいる様に思える。


 周りの土を集める様にして壁を作っている事が、出来上がった壁の周りを見るとよく分かる。


「多分、さっきの空気の中から、水分や燃える成分だけを抽出するより、こっちは、目に見える部分の土の形を変えるだけですから、簡単だと思います。」


「そうですね。 周りが僅かに凹んだ様になっていますから、周りの土を集めて壁を作っているのですね。」


「そうなります。 ある程度は、魔素によって形作られるのですけど、その時に、不足している物質なのか、ある程度、周りの土を使っている様なのです。 だから、土を魔法で作り出しているとも、形を変形させているとも言えるので、土魔法なのか無属性魔法なのか微妙な魔法になっているんです。」


 魔法は、イメージしたものを魔素を使って具現化する。




 だが、全てが魔素だけで具現化できるかというと、微妙に足りなかったり、形作るときに具現化する物質を使う事で、生成する速度を上げるために周りの物質を取り込む。


 また、イメージを具現化するので、土属性の魔法なので、周辺にある土を使った方がイメージしやすい。


「最初は、周辺の土を集めて形を変える事をイメージすれば、さっきの水魔法の様に集まってくると思います。 それが出来れば、後は、魔素を反応させて不足する部分を補う様にして、徐々に実際の土を使わない様にすれば、土の生成は完成です。 それと、石には砂岩と言って押し固められて作られた石がありますので、集まった土を圧縮する様にイメージすれば、硬くなると思ってください。」


 それを聞いた3人は、早速、しゃがみ込むと地面に手を付く。


 言われた事を直ぐに実践し始める。




 3人の様子を見ていると、土魔法も直ぐにできる様になるだろうと思うと、ユーリカリアの方を確認する。


 ユーリカリアは、1人で火魔法の習得を頑張っている。


 ただ、今にも唸り声が上がりそうな程、顔を顰めて手を上にかざしている。


 明らかに火魔法が使えそうには見えないのだ。


(ユーリカリアの感じは、シェルリーンとは違うなぁ。 見た感じで火魔法が使える様に思えいな。)


 ジューネスティーンは、ユーリカリアが使えない理由を探さなければ、火魔法は使えないだろうと考えたのだ。


「すみません。 ユーリカリアさんは、火って苦手ですか? 何か、今までに火で怖い思いをしたとかありませんか?」


 ユーリカリアは、使えるようにならなそうな火魔法の練習の手を休めて答える。


「ああ、村を出る時に家が火事になった。 その時に火傷を負っている。」


 そう言うと、ユーリカリアは自分の包帯で巻いてある左手を見る。




 そんな話をしていると、土魔法の練習をしていたフェイルカミラが話しかけてきた。


「リーダーの左腕の包帯って、火傷の痕を隠すためだったんですか。 てっきり、カッコの良さを追求してだと思ってました。」


「お前、私がそんな安っぽい理由で巻いてたと思っていたのか。」


 ユーリカリアは、真剣に左腕を見る。


 その目には、何とも言えない思いが詰まっている様に見えた。


「この火傷は、家族を失った時に受けた火傷なんだ。 火傷を見たらその時の事を思い出すから、忘れる為に隠してるんだ。」


 そう言って、遠くを見る目をする。


 フェイルカミラは、不味い事を言ってしまったと思ったのだろう。


 気不味い雰囲気を作ってしまった事を後悔している様な顔になる。


「リーダー。 済みません。」


「いや、いいんだ。 話しておかなかった、私が悪いんだ。 気にしないでくれ。」


 ジューネスティーンは、ユーリカリアの話を聞いて、火について過去のトラウマが有ると感じたのだ。




 ユーリカリアが、火事で家族を失って自分自身も大火傷を負っているのであれば、火に対する何らかのトラウマを持っていてもおかしくは無い。


 自分自身で、それ程感じていないと思っても、深層心理で、火に対する嫌悪感のような物があるのかもしれないとなると、直ぐに火魔法を使えるとは思えなかった。


 それならば、ユーリカリアに火魔法を習得させるのは、時間をかけて火に対するトラウマを取り除きながら教えて行く必要が有るのだ。


 対応するにあたり、ウィルリーンにその辺りを言い含めておいて、徐々に火に慣れさせれば良い事になる。




 火魔法が使えないユーリカリアを見て、無意識下の部分に僅かに残っている火に対する恐怖があるのであれば、今は、それに拘る事はないと思った様だ。


(出来ない火魔法に時間を掛けるより、別の魔法を覚えてもらった方が、ユーリカリアさんのためにもなるだろう。 それについては、ウィルリーンさんに話をしておいて、ゆっくりと出来る様にして貰えばいいだろう。)


 現に水魔法の習得は、叶っているので、火に対するトラウマを取り除けば、使える様になるとジューネスティーンは思ったのだろう。


「それなら、ユーリカリアさんも土魔法の習得をした方が良いと思います。 火魔法についてはゆっくりと習得する必要があると思います。 隣のシェルリーンも火には慣れてないみたいですから、2人でゆっくりと、火に慣れて貰えば習得できると思います。」


「まあ、そう言う事なら、土魔法の方に移ってみるか。」


 ユーリカリアも納得したので、ユーリカリアとフェイルカミラにも土魔法を教える事にする。


 先程と同じ様に土魔法で壁を錬成する。その姿を見せて2人にも土魔法を練習させる。


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