トラウマによる影響
彼女達には、ちょっとまずい事をしてしまったと、ジューネスティーンは、反省している様だ。
「ただ、炎の制御は、最初から上手くはいかない事の方が多いですよ。 最初は集めた気体を燃やすだけにしないと、制御に失敗して爆発なんて事になることもありますので、今以上の被害を被ることもありますから、最初から制御については言わなかったんです。」
言っていると、2人から刺さる様な視線を感じるので、最後の方は少し声が小さくなってしまった。
女子の容姿に関する事に影響を及ぼすときは、説明には十分に注意しようと心に誓っている様だ。
ただ、一応フェイルカミラとフィルルカーシャの炎の感じも聞いておきたかったのだが、火に油を注ぐ事になりかねないと思うと、2人に炎の状況を聞く気にはなれなかったのだ。
「あのー、一応、火を使いますから、少し離れたところで炎を出すようにしてください。」
一応注意を促す。
水魔法の時の様に手順を説明しようかと思ったが、さっきの様に手順をもう一度説明しながら進めようかと思ったのだが、今の2人を見ていると直ぐにできるのでは無いかと考える。
フェイルカミラとフィルルカーシャが直ぐにできて、レクチャーをしている間にヴィラレットも火魔法が使えるようになったので、残りは、リーダーのユーリカリアとエルフのシェルリーンとなった。
3人が2人に魔法を教えるようにしている。
先程は、直ぐに全員が水魔法を使える様になったので、それぞれが、思い思いに水魔法を練習していたのだが、今回は、2人が遅れているので3人が2人の魔法を見てくれている。
シェルリーンについては、弓の軌道が見えると聞いていたので、案外直ぐにできるかと思ったが、以外に手こずっている。
手を翳して自分の上空に炎を作ろうとしているが、なかなか、できずに顔を引きつらしながら唸っているのを、ヴィラレットとフィルルカーシャが左右から指示するようにしている。
様子を見ていたが、なかなかできそうも無いのでジューネスティーンは声をかけてみる事にする。
「どおですか? 」
声を掛けると、直ぐにフィルルカーシャは、ジロリとジューネスティーンを見る。
まだ、前髪の事を気にしている様だ。
その視線を見て、それ以上言うことができなかった。
少し困った様に思っていると、シェルリーンが声を掛けてきた。
「ちょっと、これは、上手くいきません。 火が出ないんです。」
真剣に困った様な顔でジューネスティーンに言う。
水魔法ができているので、火魔法もコツさえ掴めれば簡単に使える様になる。
それなら、状況を確認していけば、どこに問題があるか見えてくる。
ポイントさえしっかり掴めば、簡単に使える様になる。
「それじゃあ、どんな感じでイメージしているか教えてもらえますか? 」
「えーっと。 そのーっ。 言われた様に、臭う気体をイメージしてそれを集めるようにしました。 そこまでは何となく掴めるんですよ。 さっきの水魔法の原理と一緒の様にしていたのですけど、燃えるってところがいまいちなんですよ。 火を付けるのって、私はあまり得意じゃ無いので、上手くイメージできないって感じなんです。」
ジューネスティーンは、火を付けるのが苦手なところが気になった。
「あのー。 火を付けるのが苦手なんですか? じゃあ、キャンプの時とか火を付ける事はしないのですか? 」
「ええ、火は、ウィルリーンさんにつけてもらってます。 私は、その火にかかっていた鍋とかを取るだけでした。 だから、火は付けたことがないです。」
それを聞くと、ひょっとすると、シェルリーンは、火に慣れてない様に思える。
(火を見ることはあっても、火を自分で使ってないのではないか? それなら、火を付けたり消したりして慣れてしまえば、火を付けることも可能になるかもしれないな。 それなら、少し火を付ける事をすれば、使える様になるかもしれない。)
火に慣れてなくて、具体的に着火のイメージが出来ないのなら、後で、着火するところを見て貰えば良いと思ったので、ジューネスティーンは、シェルリーンの火魔法は後回しにしようとする。
「多分、火に慣れてないみたいなので、それで、火が付かないのかもしれませんね。 それなら火魔法は後にして、別の魔法を覚えてみませんか?」
シェルリーンは、不安になる。
自分には、火魔法の適性が無いと判断されたのでは無いかと思ったのだろう。
さっきアンジュリーンの炎の矢を見て、自分の矢にも炎を纏わせて放ちたいと思ったのだ。
自分にも使えるチャンスだと思ったのだが、下された結論は、自分には、火魔法の適性が無かったなのかと思うと、気持ちが落ち込んでしまう。
「あのー。 それは、私に火魔法の適性が無いから、諦めろって、暗に言っているのでしょうか? 」
シェルリーンはストレートに聞いた。
ジューネスティーンは、女子がそんなに自分の悪い部分を直接的に言ってきたことに少し驚いた様子だ。
通常ならもう少しオブラートに包んで言うように思えるのだが、シェルリーンはストレートに聞いてきた事に少し驚いたが感心もした様だ。
だが、それは、当人が進歩を望んでいるから言えたことだと考えたのだろう。
「ああ、火魔法の適性が無いとか、そう言う事じゃ無いんです。 今の話を聞いていて、どうも、火に慣れてない様に思えるのです。 だから、後で、お茶でも飲むときに火を付けたりして、火に慣れてからと思ったんですよ。 なので、その前に別の魔法を使えるようになって欲しいかなって思っただけです。」
シェルリーンはそれを聞いて、自分に火魔法の適性が無いと判断されたのでは無いと安心する。
ただ、火に慣れてないから火が付かないと言われて、そんなものなのかと思う。




