燃える気体
ユーリカリア達の表情には、有り得ない物を見る様な顔になっている。
そんな顔でジューネスティーンを見ていた。
固まってジューネスティーンを見る5人なのだが、全員が同じ疑問を抱いているのだろう。
すると、フェイルカミラが口を開いた。
「あのー、すまない。 今、火魔法を覚えようかって言いましたか?」
ジューネスティーンは、何食わぬう顔で、それを肯定する。
「ええ、火魔法を覚えてもらおうと思います。」
有り得ないと言う顔でジューネスティーンを見ている5人に、当たり前の様に答えたので、驚いて声にならないでいるのをジューネスティーンは笑顔で5人を見ていると、ユーリカリアが質問する。
「なあ、火と水の様に相反する魔法は、一般的には使う事が出来ないって、ウィルリーンの様な才能の有る魔法職が、数百年に1人しか現れないんじゃないのか? まあ、あんたらは、転移者だから、例外的に出来たのだろうけど、私達の様な一般的な冒険者で、今初めて魔法が使えた私たちに、そんなに簡単にできるのか? 」
5人が当たり前の事と思っていた疑問をユーリカリアが伝えてくれたという様に、残りの4人が同じ様な表情をする。
しかし、ジューネスティーンは、それを否定する。
「そんな事は有りません。 魔法はイメージを具現化するので、属性の影響はありません。 何か一つでも使えれば、後はイメージするだけです。 一般的に言われている相反する属性が使えない物だと言われているので、それを信じてしまっているので使えないだけです。」
(本当なのか?)
言われても半信半疑な顔つきでお互いを見る。
それを見てちょっと難しいかなって思うジューネスティーンだが、この人達なら直ぐに出来る様になるだろうと思う。
「じゃあ、ちょっと炎を出すときの感じを説明します。」
そう言われて5人はジューネスティーンの話に集中する。
火魔法が使えるか半信半疑だったにも関わらず、話をすると言った瞬間に、こっちに意識を集中するのは、流石にトップチームだと思う。
「火魔法ですけど、さっきは、空気中の水分をイメージして集めました。 火魔法も同じで、空気中の燃える気体を集めて火をつけるだけなんですよ。 水素、メタンなんですけど、それを集めて着火させます。 ただ、その時に酸素が必要なのですけど、酸素は大気中に沢山あるので、考えなくても良いでしょう。 水素やメタンはちょっと少なめなので、それを集めます。」
だが、今度は、5人共理解できないという顔をしている。
この人達に大気の成分について話しても理解に苦しむのかと、気が付いた。
どうしようかと思っていると、うさぎの亜人のフィルルカーシャが質問してきた。
「申し訳ない。 その空気中の燃える成分と言われても、目に見えない物をイメージするのは苦しいのだ。 さっきの水魔法の様に、吐いた息が白くなるとか、お湯から出る湯気とか具体的にイメージできるものがあればありがたいのだ。」
そう言われて、ジューネスティーンも納得する。
「うーん。 イメージできる物ですか。 水素は、確か、無色無臭だったはずだから、イメージするのは苦しいか、な。」
そう言って少し考える。
そのジューネスティーンの表情を見ていたアンジュリーンが、何だか少し嫌そうな顔をする。
アンジュリーンはイメージする良い物を思いついたのだろうが、それを口に出したくは無いし、ジューネスティーンに教えたいとも思わない。
できれば、ジューネスティーンに思いついてもらいたくないと思うのだが、それ以外で燃える気体をイメージするものが思い当たらない。
何か無いかと考えているうちに、眉間に皺が寄って、少し唸ってしまっていた様だ。
ジューネスティーンは、そのアンジュリーンの表情を見て、ああ、それが有ったと思った。
「有りました! オナラを集めると思えば良いです。 あの成分の中にはメタンとか硫化水素とか、案外、燃える成分が含まれてますから、それを集めると思えばいいですよ。」
ジューネスティーンは、名案だと思って話したのだが、アンジュリーンは思いついてしまったかと、少し憂鬱そうな顔をしている。
そう思っていると、ジューネスティーンが、アンジュリーンに声をかけてきた。
「お前が、唸っていたので、見たら、その顔で思いついたよ。 助かったよ。」
それを聞いて、アンジュリーンは、オナラ以外の何かが無いかと、頭を悩ませていたのを見て、ジューネスティーンがオナラの成分について思い付いたと聞いて、やるせない気分になる。
自分が必死になって、オナラ以外のものと考えている姿が、オナラを我慢する姿と被ったのかと思うと、恥ずかしくなる。
「ふん! それは良かったわね! 」
そう言って、頬を膨らませて、反対方向を向いてしまう。
ジューネスティーンには、アンジュリーンが何で怒っているのか分からないが、まあ、いつもの事だと思ってスルーする。




