諦めるウィルリーン
ノリノリのウィルリーンと、引き気味のユーリカリアとそのメンバー達を見て、ジューネスティーンはどうしたものかと思い、シュレイノリアを見る。
「どうしよう。」
ジューネスティーンは困った様にシュレイノリアに言う。
ノリノリのウィルリーンを見て、残りのメンバー達がかなり緊張気味になってしまったのだ。
そのプレッシャーの中で、魔法を教えても上手くいくとは思えないのだ。
それで、シュレイノリアに何か打開策が無いかと思って聞いたのだ。
「そうだな。 この精神状況で魔法が発動するとは思えない。」
そう言って、ウィルリーンと他のメンバー達を見比べる。
原因は、ウィルリーンの態度に有るとシュレイノリアは考えると、ウィルリーンをじっと見つめる。
ウィルリーンもシュレイノリアに見つめられている事に気がついて、ニコニコしながらシュレイノリアに視線を向ける。
(あら、シュレが、教えてくれるのかしら。 すごく楽しみだわ。 一体、どんなふうに教えるのかしら。)
魔法適性の無い人に魔法を使える様にする方法を目の当たりにできる思うので、ウィルリーンは、新たな発見を目の当たりにできるという興味からワクワクが止まらないのだ。
「うん。 そういう事か。」
シュレイノリアに、見つめられていたので、見つめ返していたウィルリーンは、嬉しそうにする。
今度はジューネスティーンではなくシュレイノリアが、その時を見せてくれるのだろうと思うとでも考えているのだろう。
だが、シュレイノリアは、ウィルリーンの手を取ると、スタスタと歩き始める。
ウィルリーンは、何事かと思い、喜んでいた顔が不安に変わる。
シュレイノリアに引きずられて歩き始めるが、世紀の発見を見逃してしまうと思ったのだろう。
不安そうにシュレイノリアに聞く。
「あのー。 何で、私達は彼女達から離れるのでしょうか? 」
「あそこにお前が居たら邪魔になる。 だから引き離す。」
それを聞いて、ウィルリーンは、ゾッとする。
今、自分は、魔法適性の無い人が、魔法を使える様になる瞬間に立ち会える。
そんな喜びの中に居たのに、それをシュレイノリアは邪魔になるからと言ったのだ。
慌てて止まろうと引っ張られている手を離そうとするが、強い力で振り解けないので、しきりと戻ろうとする。
「何でですか? 私は彼女達が魔法を使える様になる瞬間を目撃したいのです。 ただそれだけなんですけど! 」
そう言ってシュレイノリアの手を振り解こうとするが、シュレイノリアもそうはさせじと握る手に力を込める。
「だめだ。 あそこにお前が居ては、彼女達はお前のプレッシャーで、魔法発動させられない。 それにお前には課題がある。 砲弾型アイスランスの練習だ。 お前は魔法適性の無い人が魔法を使える様になる方法を理解したのだ。 これから先、何度もその場面を見る事ができる。」
「でもぉ。」
「デモもクソも無い。 お前のその知識欲が彼女達の邪魔をするんだ。 だから今は黙って見守るんだ。」
そう言われると、ウィルリーンも振り解こうとしていた手の力を緩めた。
「そうですね。 私が居て彼女達が魔法を使えなっかったら、私のせいですよね。 魔法発動には、自分が魔法を使えると信じることが重要なら、私が見ている事で、5人が、出来なかったら、どうしようって思ってプレッシャーを受けたら、魔法の発動する事は絶対にあり得ないですものね。 残念ですけど、彼女達が魔法を使える様になる場面に立ち会う事は諦めます。」
案外、簡単に納得してくれたので、ラッキーだと思うが、意外とチョロいのだとも、シュレイノリアは、思った様だ。
「そうか。」
「それより、彼女達が魔法を使える様になっただけで、さっきの魔法の発動条件は証明されますから。」
それを聞いてシュレイノリアは安心する。
「じゃあ、ここで彼女達が、魔法を使える様になるのを見守るか? 」
「いえ、私には私の課題が有ります。 だから、この後の事は、ジュネスにお任せします。」
ウィルリーンが意外に切り替えが早いと思う。
「そうか。 なら、アイスランスの練習だ。 綺麗な形にする事と、回転させる事、音速を超える速さで撃ち出す事、命中率を上げる事。 お前の課題は山積みだ。」
それを聞いて、ウイルリーンは、やっぱり戻ろうかと思ったのだろう、顔に嫌そうな表情が出ている。
ただ、口に出したら、何をされるか判ったものでは無いと考えているのだろう、ウィルリーンは、引き攣った笑いをしながら、言われた事を始める。
ジューネスティーンと、ユーリカリアの残りのメンバー達は、シュレイノリアがウィルリーンを別の所に連れて行ってくれてほっとしている。
ジューネスティーンだけは、アリアリーシャに視線を送る。
アリアリーシャと目が合うと、シュレイノリアを見て、顎をしゃくる。
ここには魔物も居るのだから、一応警戒をさせる。
2人のアイコンタクトを見ていたレィオーンパードは、自分にも何かあるかと思って、ジューネスティーンを見ていると、やはり目でシュレイノリア達の警戒に当たらせたいようだったので、アリアリーシャの後を追う。




