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剣 〜メイリルダの憂鬱〜


 メイリルダは、久しぶりにギルドの寮で、ジューネスティーンとシュレイノリアの部屋に泊まることにした。


 備え付けの浴室を3人で使うのだが、久しぶりだったこともありジューネスティーンが少し恥ずかしそうにしていた。


 ただ、直ぐにうちとけ昔のように3人での入浴を楽しんでいた。


 入浴が終わり、メイリルダが肌の手入れをしていると、ジューネスティーンとシュレイノリアの2人は一緒のベットに入っていった。


「あら、まだ、2人は一緒に寝ていたのね」


 シュレイノリアは寮に入った時から、いつもジューネスティーンと同じベットで寝ていた。


 それが、今でも続いていたようだ。


 11歳のジューネスティーンと9歳のシュレイノリアなので、メイリルダは大して気にする様子もなく2人が一緒のベットに入っていくのを見ていた。


「ジュネスは、私の抱き枕だ。それに、とても暖かい」


 シュレイノリアは、ジューネスティーンの腕を抱えながら答えた。


(まあ、この位の年齢なら男女一緒でも構わないでしょうし、……。あっ、そういえば、さっき、私も普通にジュネスと一緒にお風呂に入っていたわ)


 メイリルダは、顔を少し赤くしていた。


 そして、気持ちよさそうにジューネスティーンの腕を抱いているシュレイノリアを見ると、どうしようかというように天井を見た。


(シュレの、この癖は、仕方がないわね)


 メイリルダは、今度は恐る恐るシュレイノリアを見ると少し青い顔をした。


(まさか、シュレのこの癖って、私のせい?)


 シュレイノリアは、当たり前のようにジューネスティーンと同じベットに入り、当たり前のようにジューネスティーンの腕を抱いて、体をピッタリとくっ付けるように寝ている。


 メイリルダは、シュレイノリアの転移の時の事を思うと心細いかと、そして、医務室を出た後、常にジューネスティーンにくっついていたので、初日の夜、良かれと思って3人で寝ていたが、その後は、ベットが狭い事もありメイリルダが別のベットを使い2人を同じベットに寝させていた。


 一緒に暮らさなくなったら、近いうちに別々のベットを使うようになるだろうと思っていたのだが、未だに2人は同じベットで寝ていた。


 メイリルダが、この部屋で暮らすのを止める前に、ちゃんと説明して別々に寝させるようにしておくべきだったと反省するように2人を見て苦笑いを浮かべていた。




 翌日、メイリルダは、不安な様子でギルドに出勤していた。


 それは、シュレイノリアから、縫製用の工房を使わせてもらうことも、そして、生地等の材料や道具の提供の依頼もあったが、それを決済するのは、ギルドマスターのエリスリーンになる。


(あー、ギルマス、許可してくれるのかしら? 一応、面会の予定は入れておいたけど、簡単に私みたいなヒラが、ハイそうですかって、会って話すような人じゃないのよ。それなのに、許可を取れって、無茶な事言わないでよ。まったくもう)


 メイリルダは、少し膨れたような表情で、自分の今日の業務内容を確認しつつ何かを考えていたようだ。


(あの子達、夕食の時は縫製工房について、色々要求してきたけど、その後は、何も言わないのよね。お風呂の時とか、寝る前の時とか。それに、朝起きて、朝食を食べて、私が寮を出るまで、シュレもジュネスも、縫製工房の事を何も言わないのよね。まあ、その方が助かるけど)


 メイリルダとしたら、シュレイノリアに縫製工房を使わせてもらう話について、自分なら何度か聞いてしまうだろうと考えたようだが、こうして、要求を受ける側となったら、それは、とても鬱陶しい事になる。


 何度も同じ事を、このような状況で言われ続けた場合、要求を受ける側としたら気分の良い訳がないので逆効果になりかねないが、2人の転移者にはそのようなことは一切無かった。


 メイリルダがエリスリーンと面会できるのは、早くても翌日の、ギルドの就業時間になってしまう事はシュレイノリアも理解しているので、余計な話をしてメイリルダのエリスリーンとの面談が終わるまでは同じ事を何度も言わないでいた。


 ただ、業務が終わったとわかったら、黙っていても聞いてくる事になるだろう事は、昨日の態度からわかりきっていた。


 メイリルダの心配は、エリスリーンと面会できるかなので、面会できずに引き伸ばしにならない事を望んでいた。


 そんな心配をよそに、メイリルダが始業の準備をしていると、扉が開いてエリスリーンが顔を出した。


「メイリルダ。ちょっと、私の執務室に来なさい。ジュネスとシュレの事よ」


 エリスリーンとしたら、メイリルダのことは転移者2人の事もあり、常に気にしていたので面談の申請があったのを確認すると、直ぐに、メイリルダの元にきた。


 メイリルダは、意外そうにエリスリーンを見た。


「え、あ、はい」


 そして、安心した様子で自分の席を立った。


 エリスリーンが、呼びに来たのだが、“執務室に来い”だけだと、周囲は、何か自分達が聞いてはまずい事、特に叱責される可能性を考えてしまうのだが、エリスリーンは、ジュネスとシュレの事だと付け加えているので、周囲は、あの転移者の事なのかで終わってしまう。


 メイリルダの立場も考えつつ、エリスリーンは言葉を選んだので、メイリルダは気兼ねなく、その場を立ってエリスリーンについていく事ができた。


 メイリルダが、立ち上がるのを確認すると、エリスリーンは、もう一言加えた。


「鍛治工房の使用の件は、ジュネスに伝えたのか?」


 自分の方に向かってくるメイリルダにエリスリーンは話しかけた。


「はい、ジュネスは、工房を使えると喜んでいました」


 そんな話しをしつつ、メイリルダは、エリスリーンの居る扉に近づいて来たので、周囲は、その話の内容を何気なく聞き流していた。


 エリスリーンの上司としての配慮が、周囲に無用な誤解を招かないようにさせていたので、近づいてきたメイリルダを見て、そのまま、廊下を歩き出すと、メイリルダは、受付の扉を閉めて後を追うように歩いていった。


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