ジュネスのパーティーの魔法
最後の魔物をヴィラレットが仕留めた。
予定していた数以上の魔物だったが、2パーティー12人が総掛かりで対応したので、Bランクの魔物、20数匹を撃退できた。
ジューネスティーンは、ヴィラレットの太刀筋が気になっていた。
上段から袈裟斬りにした後、振り下ろした刃を上に向けて直ぐに下から逆袈裟に切り上げる。
振り下ろしたら振り下ろしてから、次の動作に入って攻撃をしていた自分の太刀だったが、ヴィラレットの太刀は連続した太刀になっていた。
振り下ろした後、下に太刀が達する前に、引き上げる動作に入っており、振り下ろした腕が限界まで振ったと思ったら、直ぐに上に逆袈裟に振り上げていた。
その動作に感心している。
少し話を聞かせてもらおうかと思い、とりあえず、ユーリカリアに声を掛けてからヴィラレットに聞こうと思う。
ジューネスティーンは、アリアリーシャとレィオーンパードに周囲の警戒とコアの回収を頼むと、ユーリカリアに声を掛けながらユーリカリアの方に行く。
「最初は数に驚きましたけど、何とか無事に倒すことができましたね。」
「ああ、お前の所のバックは優秀だよ。 魔法付与の矢にも助けられたな。 一矢で3匹倒せたのは助かったよ。」
アンジュリーンの炎の火魔法付与と、カミュルイアンの雷魔法付与の矢は、一矢で複数の魔物を倒すことができた。
通常の付与魔法であれば、矢が刺さった1匹に付与された魔法が発動するのだが、アンジュリーンの炎は1匹を延焼させると、その炎が別の魔物にも移っていった。
また、カミュルイアンの雷魔法付与は、矢が魔物の近くを通過する際に、周辺の魔物全てに矢から出た雷が魔物に当たっていた。
雷魔法の付与も、矢が当たれば矢の電撃が伝わって、雷に打たれた様になるが、近くを通過しただけで、倒すなんて事は聞いたことがなかたのだ。
その疑問は、また、シュレイノリアの魔法なのかと思い、ユーリカリアは仕事が終わってジューネスティーンの下にきたシュレイノリアに聞く。
「あの付与魔法もシュレイノリアがやっているのか? 」
戦闘が終わったので、全員がユーリカリアの周りに集まってきていたので、ユーリカリアはシュレイノリアに尋ねた。
「いや、あれはエルフの2人が自分で付与している。」
ユーリカリアは、ジューネスティーンとシュレイノリアが魔法を使えるだけかと思っていたのだが、シュレイノリアは、2人が魔法を付与したと言った。
ジューネスティーン達パーティーには、魔法が使えるメンバーが4人居る事に驚く。
「メンバーの中に4人も魔法が使えるのか。」
ユーリカリアは、驚く。
しかも、アンジュリーンもカミュルイアンも、普通のパーティーでは使えそうも無い様な、付与魔法を使っていたのだ。
シュレイノリアの魔法に驚かされ、ジューネスティーンの魔法は見た事が無いが、かなり詳しいと聞いているから、シュレイノリアとは言わなくても、その辺の魔法職を凌駕する程度の腕はあると踏んでいた。
だが、2人以外にも魔法が使えるメンバーが2人も居る事に更に驚いた。
ユーリカリアが魔法が使えるメンバーが4人も居ると驚いていると、シュレイノリアが、不思議そうにユーリカリアに聞く。
「魔法がどうかしたのか? それと、うちのパーティーで魔法が使えない者は居ない。 魔法なら全員使える。」
今まで、そんなパーティーを聞いた事が無かった。
魔法は、適性がなければ使えないと言われていた。
魔法が使えるのは稀で、しかも、攻撃に使える様な魔法を使えるのは更に少ないと言われている。
だが、このパーティーは全員が魔法を使えると言う。
信じられない事を聞いたと、唖然としているユーリカリアをシュレイノリアは不思議そうに見る。
「あなたのメンバーも、全員魔法が使えるのだろ。」
そう言われてユーリカリアは、そんな事はあり得ない。
何度か使える様にならないかと、魔法を試してみたことがあったが、何度やってもできなかったのだ。
その時の事を思い出して、首を横に何度も振る。
ユーリカリアのパーティーで魔法が使えるのはウィルリーンだけで、他は誰も魔法が使えない。
ウィルリーンにレクチャーしてもらって、使える様にならないかと思ったが、誰も魔法が使える様にはならなかった。
そんな事があったので、メンバーは全員が魔法が使えないものだと思っていた。
そんな思いを胸に秘めて、シュレイノリアに答える。
「うちで魔法が使えるのは、ウィルリーンだけだ。」
それを聞いてシュレイノリアは更に不思議そうな顔をする。
「あなた達のメンバーは、全員魔法が使えるのに、なんで魔法を覚えないんだ。」
それを聞いて、できなかった事を話そうとして思いとどまる。
ユーリカリアは、カインクムの事を思い出した。
魔法が使えないから鍛冶屋になったと言っていたが、このパーティーが訪ねた時に魔法を使える様になったと言ったのを思い出した。
それと、何で自分達メンバーが全員魔法が使えると言い切れるのか、その理由が知りたいと思うと、思いとどまって、全員が魔法が使えると言う理由を聞く事にする。
「あのー。 すまないが、私達に魔法が使えると言うのはどうしてなのだか教えてもらえないか。」
ユーリカリアはシュレイノリアに恐る恐る聞く。
魔法が使えないと思っていたカインクムが使える様になった。
それに今、シュレイノリアは、自分達全員が魔法を使えると言った。
これは、メンバー全員が魔法を覚えるチャンスなのではないかと、頭をよぎったのだ。
魔法については、ウィルリーンに全てお任せだったが、残りの5人も魔法が使える様になれば、攻撃の手数も増える。
特に遠距離で倒せる魔法ならリスクはかなり低くなる。
そう思ってシュレイノリアに尋ねた。
シュレイノリアは、何を当たり前の事を聞くのかという顔をしているが、ユーリカリアの質問に答える。
「さっき、全員ホバーボードに乗っていた。 魔法紋を発動できるということは、魔法も発動させられる。 だから、あなたとあなたのメンバー全員、魔法が使える。」
シュレイノリアは、ユーリカリアとメンバー全員が魔法を使えると肯定する。
「それは、さっきのアイスランスの様な魔法が自分達全員が使えると言う事なのか? 」
「そうだ。」
ユーリカリアの質問にシュレイノリアはあっさりと当たり前の事を何で聞くのだと言う様に答える。
その答えにユーリカリアは更に驚く。
だが、これはチャンスと思うと、シュレイノリアに聞く。
「どうやれば、うちのメンバー達、ウィルリーン以外も魔法が使える様になるんだ。 その方法を教えてくれないか。」
シュレイノリアに迫るユーリカリアを見ると、シュレイノリアはジューネスティーンに顔を向ける。
シュレイノリアは、お前の出番だと、目で訴える。
ただ、ジューネスティーンには、またか、そんな表情が見受けられる。




