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剣 〜シュレイノリアの要求〜


 メイリルダによって、ギルドに工房があり鍛治ができると伝えられた。


 ギルドとしては、転移者の有用性が大きいことは心得ているので、この始まりの村の設備は整えられている。


 ギルド暦802年になることもあり、それまでに何十人の転移者を迎えているので、その間にギルドは転移者のために様々なものを提供してきた。


 その中には、鍛治の工房も用意されていた。


 ギルドは、転移者のもたらす物や技術に興味があったのは、転移者が作り出す物を独占して製造と販売を行う事によって利益を得ている。


 召喚して労働力として提供する魔物の労働力の他に、大きな成果を出しているものもあった。


 ギルドは、転移者を保護した転移者の技術を使って新たな事業を興し、その技術の権利を転移者に還元する事と転移者の保護をギルド本部がおこなっている。


 新たな製品を開発してくれる転移者もいれば、そうでない転移者もいる。


 中には、一般の人々と何ら変わらぬ転移者もいたが、ジューネスティーンの前に現れた転移者のジェスティエンのような火薬や銃を作ってしまった転移者は異例と言えた。


 ギルドとしては、火薬が世界に広まる事で世界が大きく変わると判断したため、ジェスティエンの技術の拡散を警戒したこともあり保護対象とし、火薬と銃の扱いをどうするのか迷っていたが、暫定的な処置としてジェスティエンから火薬と銃弾の生産を受け持ち提供することとした。


 提供する弾丸の製造は秘密を守るためにギルド本部が行うこととなり、ジェスティエンには、南の王国内で冒険者として活動することを許し冒険のためのメンバーも用意した。


 ギルドは、ジェスティエンにメンバーを与えたのは護衛を兼ねて一緒に行動させていた。


 だが、それは、ギルドが創設されてから初めての事だった。


 それ程、ジェスティエンのもたらした火薬と銃については扱いにに戸惑っていた。




 それ以前は、ジェスティエンのような、世界の在り方を変えてしまうような発明をおこなったものはいなかったが、鍛治に興味を持つ転移者もいたので転移者用に鍛治工房も用意されていた。


 始まりの村のギルドとして、ジューネスティーン達にギルドの敷地内にある鍛冶屋を使わせることにしたのだ。


 それを聞いて、ジューネスティーンは拍子抜けしたようだったが、シュレイノリアは何か思いついたようだ。


「おい、鍛冶屋以外には何か施設はないのか?」


 シュレイノリアが、突然メイリルダに食ってかかるように聞いたので、メイリルダは少し驚いた様子でシュレイノリアを見た。


「縫製を行える施設はないのか」


 何事かとメイリルダは思ったようだ。


 シュレイノリアとしたら、ジューネスティーンが使えるような鍛治施設があるなら他にも何か有ると考えたようだ。


 そして、自分の欲しいと思う縫製作業を行える場所が有るだろうと想像した。


「え、ちょっと、シュレ。あなた、ドレスでも作りたいの?」


 メイリルダは、シュレイノリアの勢いに押されて、やっと答えたといった感じだった。


「違う。私の欲しいのは、魔法付与された服だ。マントも帽子も、支給されたものは良いものだったが、私なら、これ以上の魔法付与が可能だ。それには、裁断から完成まで全て作れる場所が欲しい」


 その言葉で、メイリルダもシュレイノリアの考えている事が納得できたようだ。


「あ、あら、そうだったの。だったら、聞いておくわ。確か、有ったはずだから、エリスリーンなら、きっと、許可してくれると思うわ。多分」


 それを聞いて、シュレイノリアは嬉しそうな表情をしたが、施設の使用許可は、全てエリスリーンが決済することなのだ。


 そして、今回、なんで鍛治工房を使えと連絡をメイリルダにするように言われたのか、ジューネスティーンが鍛治工房を探していたことも知らなかったのに突然言われて伝えただけなのだ。


 そのためメイリルダが、エリスリーンに話をして施設の利用許可を得られるのか気になったため、メイリルダの言葉の最後に“多分”が付いていたのだ。


 しかし、シュレイノリアは嬉しそうにしていた。


 シュレイノリアは、魔法に関する知識を図書館に求めていたが、その本の内容と実際に自分で試してみた事に相違があったりすると、何度も同じ事を繰り返してでも原因を追求していた。


 その甲斐あって、シュレイノリアは、書物に書かれた内容は全部理解して自分でも使えるようになっていた。


 ただ、その魔法の威力は書物のものより強い魔法になっていた。


 そして、エリスリーンの見せた失敗作のスクロールを簡単に問題点を見つけてしまっていた。


 この一年でシュレイノリアの魔法に関する知識も魔法力も、一般的な魔法士と比べられないほどになっていた。


 それは、一緒に居るジューネスティーンにも言えることなのだが、魔法に関してシュレイノリアという巨星がいるため、一般的な魔法士を超える魔法力を持っていたのだが、その巨星の影に隠れてしまっていた。


 しかし、シュレイノリアとしてみたら、自分の装備として使う衣類に関して自分でデザインから完成まで行えるようになれば、支給されたものよりはるかに性能の良いものが作れるはずなのだ。


「メイ、使う生地なのだが、それは、ギルドから支給してもらえるだろうか? あと、道具もだが、どうだろうか?」


 シュレイノリアは、縫製工房が使えるつもりで、材料についてもメイリルダに聞いてきた。


(え! 何? まだ、施設の使用許可も降りてないのに、材料の心配までしているのよ)


 メイリルダとしたら、まだ、工房を使う許可も得てないのに、使う前提で材料について聞かれて困った表情をしていた。


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