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人の成長について


 ウィルリーンは、ジューネスティーンの、人の成長は坂道を登る様に上がらないと言われて、不安そうな表情をする。


「それは、人は成長できないと言う事なのか? 」


 話を聞いて、ウィルリーンの表情が曇っている事に気がついた。


 上手く伝わらなかったと感じたのだ。


 ジューネスティーンは、今の坂道の話を詳しく話す必要があると感じた様だ。


「ああ、すみません。 成長出来ないのではなくて、成長の過程の話です。 人の成長というのは、一つ一つ覚えるのでは無いのです。 一つの事を覚えると、その一つの事に付随した3・4個の事も理解してしまうのですよ。 だから、一瞬で多くの事を理解してしまうのです。 そしてその理解ができてしまうと、停滞してしまうのです。 理解は、新たな疑問が現れるのです。」


 そこまで話すと、シェルリーンの様子を見つつ、理解が及んだかどうか様子を見てから、また、話を始める。


「その疑問に当たると、その疑問を理解するまでは、新たな理解はありませんから、停滞なのです。 停滞している時は、試行錯誤の連続で、どうやっても前に進めないのですが、何かのきっかけで、一つ理解すると、また、それに付随した3・4個の事まで理解できてしまうのです。 だから人の成長というのは、多くの事を理解して一気に上がる時と、停滞した時の繰り返しなのですよ。 だから、人の理解というのは、坂道を登るのではなく、階段を登るように理解が深まるのです。 その事を踏まえていないと、停滞期に投げ出してしまいます。 停滞期はキツイ状態ですので、それを乗り越えれば、新たな発見から理解が深まります。 まあ、壁と言っても良いかも知れませんね。」


 ウィルリーンにも、階段式に成長する経験が有ったのか、ジューネスティーンが、そこまで話すと理解できた様だ。


「そうかもしれませんね。 でも、あなたは、その辛い停滞期をどうやって凌いでいるのですか? 」


 ジューネスティーンは、少し困った様に考えるが、直ぐに応える。


「そういう時は、それについて誰かに話をするとか、今までやってきた事を誰かに説明するとかかな。 説明をするって事は、自分の頭の中で物事を整理しますから、話をしているうちに、ヒントが見つかったり、相手から、別の視点からの話が出たりしますので、発想の転換になります。 素人に話をする時とかは、特に気を使って、基本的な事から説明しなければならないので、見直し箇所が多くなる事と、当たり前だと思っていた事が原因で失敗していた、何て事もありますから、見直しをするには、知識の無い人に理解をさせると、新たな発見があったりします。」


 それを聞いて、少し驚く。


(素人に話すなんて事、考えた事も無かった。 私は、てっきりシュレイノリアと話をして、新たな方法を見出したのかと思ったが、ジューネスティーンは、そうではなかったのか。)


 師に当たる人や、自分と対等な人で無く、その事に対して素人にも話すとジューネスティーンは言う。


 自分には思い付かない方法を、ジューネスティーンは言ったのだ。


「なら、あなたの様にシュレイノリアの様な人が居なくても、知識を深める事ができると言うのか? 」


「ああ、自分は、時々、このレオンに話してました。 当人には嫌がられてたかもしれませんが、その事に興味が無い人でも、話を聞いてもらえれば、それなりに自分の理解も深まりますし、それに自分自身は、色々な視点から考えていたつもりでも、話を聞いてくれた人には、別の視点が有ったりします。 自分では当たり前だと思っていても、聞いてくれたレオンには、 “何でそうなるの? ” 何て言われる事も有りました。 自分の考える視点を見直す良いきっかけになったりしましたよ。」


 レィオーンパードは、転移後は、常にジューネスティーン達と一緒に生活していたのだ。


 パワードスーツの設計や製作、それにシュレイノリアの魔法について、2人から習う事はなくても、側に居てみていたのなら、ずぶの素人とは言い難い部分がある様に、ウィルリーンは思った様だ。


(素人に話すのは、視点を変える為、そんな人になら、細かな部分から、丁寧に教える必要があるわね。 魔法職には魔法職の視点が有るが、戦闘に特化した人からは非常識に見える可能性がある。 それをジュネスは、レオンを使って、相手に理解させられる様に説明をしてきたのか。 確かに、話す事で自分自身の頭の中を整理する事になるが、専門外の人には細部まで丁寧に説明する必要が有るので、その説明によって、相手が理解できる様になれば、専門外の視点で話を考えてくれるという事なのだな。)


 その時に、ヒントが見える事なのかと、ウィルリーンは結論づけるのだった。


「そうなのか。」


「ええ、新しい物を作る時とか、1発で上手くいくなんて事は有りませんからね。 失敗を何度も繰り返して、その度に見直して、原因を探して、対策して、また、失敗して、同じ事を繰り返す。 新しいものを作る時はそれの繰り返しなんです。 何度も失敗を繰り返すと、結構、凹みますよ。」


 ウィルリーンは、それを聞いて少し安心する。


「あなた方を見ていると、成功者の様に見えますが、苦労されいたのですね。」


「そうですよ。 試行錯誤の連続でした。 一つの成功の影には、100とか1000とかの失敗が隠れているものですよ。」


 今まで話を聞いていただけだったユーリカリアが口を挟んできた。


「その下積みが有ったらから、東の森の魔物を倒せたって事かな。」


 ジューネスティーンは、にが笑いをする。


 ユーリカリアの話を聞いて、ウィルリーンは納得する。


「あの魔物を倒したのは、日々のそういった下積みがあったからなのか。 地道な努力の賜物だったと言うわけか。 私にはそれが足りなかったという事なのだろうな。」


 そう言って、ウィルリーンは、自分自身の事を思い直して反省をしている様だった。


 だが、今までの様に凹んではおらず、自分自身の課題を見付けたといった感じで、課題と向き合う姿勢が表情から窺える。


 さっきの様な、ダメダメなウィルリーンとは誰が見ても違う。


 それをユーリカリアは頼もしく思った様子になった。


 これなら、ジューネスティーン達と一緒で無くてもウィルリーン自身で、新たな魔法の開発や威力の上昇もできる可能性が出てきたのだ。


 そして壁に当たったら自分一人で悩む事も無く、自分達にも話してくれるだろうし、それよりも近くにジューネスティーンやシュレイノリアも居るのだから、その都度周りからヒントを得たり、時には正解を聞く事もできる。


 そうなれば、自分達のパーティーレベルも大きく上がる事になる。


 ジューネスティーン達パーティーとはいかなくても、今以上の能力を得る可能性が開けたとユーリカリアは確信した様だ。


 それならば、今日はウィルリーンの魔法力を上げるため、シュレイノリアに今のアイスランスについて指導してもらった方が良いのかと考えているが、ジューネスティーン達はそれを望んではいない事なのだろうとユーリカリアは考えている様だ。


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