ジューネスティーンの説明
ジューネスティーンは、シュレイノリアと突然、目が合う。
何だと思っているとシュレイノリアが話しかけてくる。
「お前の出番だ。」
突然、ジューネスティーンに話を振るシュレイノリアに驚く。
2人の話の内容を聞いていただけだったのだが、シュレイノリアが、ジューネスティーンに話を振ってきたのだ。
話の流れから、自分に自然科学について説明をしろと言ったのだろうと、ジューネスティーンは考えた。
それを、もしシュレイノリアが説明した時の事を考えると、ウィルリーンが不憫に思えてきたのだ。
恐らく、シュレイノリアに自然科学とは何かを説明させたら、ウィルリーンの思考がパンクする可能性があると考えられるのだ。
ジューネスティーンは、シュレイノリアに突然話を振られて、困った様に話だす。
「うーん。 自然科学っていうのは、この世のことわりみたいなものなんです。 当たり前の事と考えている事を論理的に説明するみたいなものなんです。 さっきの話で石を持った手を開いて石が落ちる。 落ちる石の速度も時間と共に早くなりますよね。 それを説明するみたいな事です。」
それを聞いて、ウィルリーンは考え出す。
(ジュネスが、さっき地面に数字を書いて計算していた。 あれの事か。)
すると、ウィルリーンは、ジューネスティーンの目を見る。
「さっきの計算とかが、自然科学になるのか? 」
「まあ、そんなところです。 さっきの計算した公式が有るのですけど、突き詰めていくと、そういった公式も出てきます。 ただ、あの公式は恐らく前世の記憶だと思います。 単純な事から考えていくと自然科学の知識は広がると思います。」
ジューネスティーンの重力加速度による弾道の落下距離の計算と、今の煙の話を思いながら考える。
当たり前の事を当たり前と思わず、それがどうなって起こっているのかを考えているのだ。
(その現象に法則性があれば公式も見えてくるのか。)
そんな事を思いつつウィルリーンは答える。
「それが、さっきの焚き火の煙の話なのか。」
「まあ、そういう事だと思って良いと思います。 当たり前の事を当たり前として片付けるのではなく、その現象がどうやって起こるのかを考える事で理解は深まります。 放り投げた石は地面に落ちる。 それは何でなのかと考える。 考えていたら法則性がある。 時間と共に速度が増す。 その法則性を見つけて実験をする。 実験器具が無ければ、探すか作るかして実験してみる。 データを見て法則性が分かれば、それを数値化すれば、公式も見つけられるでしょう。 一つ一つそうやって考えれば新しい発見が出てきます。 そうしたら、また、同じ様に調べる。 うーん、ちょっとこれは大学の教授や博士の仕事かな。」
ジューネスティーンは、少し、くど過ぎる話をしてしまったと反省している様な様子を見せるが、ウィルリーンは少し落ち着いた様だ。
「ありがとう。 私にはちょっと難しい内容なのかもしれないが、これからは当たり前を当たり前で終わらせないで、もっと、考える事にするよ。」
ジューネスティーンはウィルリーンが真剣に聞いてくれたと思ったのだろう。
安心した様に、ホッとする。
(自然科学についてなら、学校に専門の教授が居るな。 ウィルリーンは名の知れた魔法士なのだから、尋ねられた教授とすれば、ウイルリーンの魔法についての知識は聞いておいて損な話じゃない。 面識を持って損な相手では無いなら、訪ねてきたウィルリーンを門前払いにする事は無いかもしれない。)
ジューネスティーンは、ウィルリーンに提案をする。
「ああ、それと、機会があれば、何処かの大学の教授に、話を聞いてみるのも有りだと思います。 あなた程の魔導士なら、大学の教授とかでも門前払いなんて事は無いと思います。 大学の図書館には、そういった方面の書籍とかも置いてあるでしょうから、閲覧させてもらうだけでも、新しい発見があるかもしれませんよ。」
ウィルリーンは、その提案に、少し驚いた様だが、直ぐに表情は明るくなると、ジューネスティーンに答える。
「そうだな。 機会をつくる事にする。」
「それと、これは余談ですが、さっき、アンジュには呆れられましたけど、9で割り切れる数字は、全部の桁の数字を足したら9の倍数になるとか、この世界に来る前に、色々な数字を見たり、計算したりしてたのでしょう。 それにシュレは、魔法紋に描く術式とかが得意ですから、以前の世界でもそういった言語を利用していたのかもしれません。 私も魔法紋を構築しようとした事が有りましたが、シュレ程上手には作れなかったので、魔法紋の術式を書くのは苦手でした。 人には、得手不得手というものが有りますから、あまり根を詰めない方が良いです。 一度に、色々詰め込んでも頭に入りませんから、自分のペースを見つけて行う事が良いと思います。 それと、もう一つ。 人の成長は、坂道の様に、なだらかに上がってはいきません。」
そう言われてウィルリーンは、成長が出来ないのではないかと感じたのだろう。
今のジューネスティーンの話に、顔を曇られる。




