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ウィルリーンの変化


 ユーリカリアが必死になってウィルリーンを説得するのを、横で聞いていたジューネスティーンが、ウィルリーンに言う。


「あのー。 今のアイスランスですけと、多分、形を作るのは、それ程面倒では無いと思いますよ。 試しに作ってみてはいかがですか? 多分、さっきの話の内容なら、殆ど自然科学の分野の応用ですから、原理がイメージできれば、直ぐに出来ると思いす。」


 そう言うと、シュレイノリアが、付け加える。


「あなたは、深く考え過ぎているだけだ。 考えるより、行動に移してみた方が良い。 出来なかったら、出来なかった時の理由を探す様にしたら、あなたの魔法の威力は今の10倍以上の力が出る。 思考がイメージを否定してしまっているから、威力が落ちているだけだ。」


 シュレイノリアの指摘に、ウィルリーンは怪訝そうな顔をする。


 思考がイメージを否定しているとは、どう言う事だと思ったのだろう。


 ウィルリーンは、気になった様子でシュレイノリアに聞く。


「それは、どう言うことですか? 」


「多分、無意識のうちに、自分の魔法はここまでしか出来ないと、上限を無意識の部分の思考が設定してしまっている。 そのせいで、威力も速度も規模も落ちてしまっている。」


「私自身が、自分の魔法の威力を抑えているのですか? 」


 自分の魔法の評価をされるなんてことは、今までに経験の無かった。


 逆は有ったのだが、人に自分の魔法について批評されたのは、自分の師匠に教わっていた時だけで、師匠の下を離れてからは、そんな事は無かったのだが、今初めて、師匠以外から自分の魔法について批評された。


 その事にウィルリーンは愕然とする。


 だが、シュレイノリアは、ウィルリーンの心の内を気にせずに話す。


「多分、そうだ。 教えてもらった魔法を忠実に再現しようとしている様に思えた。 だが、魔法は人それぞれの個性が出る。 しかし、あなたの魔法は、威力も範囲も数も速度も、何もかもを忠実に再現している様に思える。」


 ウィルリーンは図星を突かれた。


「私は、教えてもらった師匠の魔法を使ってます。」


「その師匠の魔法を、忠実に再現しているのか? 」


「ええ、そうです。」


「それが出来ているなら、その魔法を破らなければ前には進まない。 そして師匠の魔法から離れる。 新たな域に向かう時期に来ているのだ。 あなたは、 “守破離” の “守” の部分にいる。 それでは師匠を超えることは出来ない。 自分自身が、新しい物を求めれば、2板目の “破” には直ぐに至る。 見たところ教えてもらった魔法が上限だと感じていた様に思える。 それが、“破” に至らない理由だと思う。」


「私の魔法の師匠は、国の魔法省に指導をしていた事も有った人です。 私はその教えを忠実に覚えて、それを実行してきたのです。 今の話を聞いていると、なんだか、自分が、師匠の魔法を否定する様な気になってしまったのです。」


 シュレイノリアの話だけだとウィルリーンの考えが、シュレイノリアの考えとは違う方向に進んでしまっていると思ったジューネスティーンが、シュレイノリアの話のフォローを始める。


「そうでは無いと思います。 それでは進歩が無いと、シュレイノリアは言っているのだと思います。 世の中は常に進歩している。 これで、もう技術的に上限に至るなんて事は無いので、新しい発見が有れば、その発見から新たな技術が生まれる。 しかし、それは過去に積み上げてきた技術があって、初めて生まれてくる事なので、決して過去の技術を否定するのでは無く、その技術を活かして、新たな技術を生み出せと言っているのだと思います。」


 ジューネスティーンは、ウィルリーンの表情を確認しつつ、話を進めている。


 あまり、急ぎすぎてパニックになっても困ると思ったのだろう。


 そう思いつつ、話をづつける。


「現にシュレイノリアが使った魔法は、アイスランスで、通常なら長細い氷の槍の様ですが、それの形を変えて空気抵抗を減らしただけで、撃ち出す時に回転を加えたりして、スピードに耐えうる様にしただけと言って良いと思います。 だから、あなたの魔法を否定したとは言えない。 同じ魔法に工夫を加えただけだと言って良いと思います。 確かに、シュレの自然科学に関する知識は豊富だと思います。 それなら、貴女も、その自然科学を取り入れた魔法にすれば、シュレが放ったアイスランスは使えると思います。 これまで師匠の魔法を忠実に再現していたのであれば、そろそろ、“守破離” の “破” つまり、護ってきたものを使って、新たな境地に入っても良いと思います。」


 ウィルリーンはジューネスティーンに言われた事を考えてる様だ。


(確かに師匠に言われた、いや、教わった通りの魔法を忠実に再現することだけを考えて使っていた。 それでは限界にきている事も薄々は気付いていた。 今までの魔物で有れば自分の魔法でも通用していた。 だが、自分達メンバーだけで、最悪と言われている、東の森の魔物に対峙して、ジュネス達の様に倒せるのかと考えると、自信は無かった。)


 たった今、見たシュレイノリアのアイスランスなら、自分にも東の森の魔物と対抗できる手段が、増えるかもしれないのだ。


(そうだ。 このパーティーと共同の狩をするのは、彼らの技術やノウハウを覚えるために、リーダーは考えたのだ。 教示してもらえなくても、戦い方を見ていれば、技術やノウハウが、盗めるかもしれないと思っていたのに、なんで凹んでいるんだ。 あの時、カインクムの店で凹んで、シュレイノリアの魔法を見て凹んでいたら私はなんのためにこのパーティーに居るんだ。 諦めたら全てが終わる。 貪欲に魔法の知識を得るために参加したんだ。 その事を思い出せ! )


 ウィルリーンの顔付きが変化する。


 諦めモードの顔が、貪欲に獲物を狙う肉食動物の眼に変わってくる。


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