シュレの魔法
戦闘を始める前に、ジューネスティーンはメンバーに作戦を伝える。
「じゃあ、今度は俺達の番だ。 ゆっくりと進んで集団で襲ってきた魔物を弓と魔法で数を減らすのは今見た通りだが、撃ち逃した魔物は前衛2人が左右に分散させてくれ。 残った魔物を俺が仕留める。 仕留めた後は囮の魔物を順番に俺の方に向かわせて欲しい。 優先順序は数の少ない方からになる。 囮に付いた魔物が俺と接敵したら囮が合流して、また、魔物の分散をしてくれ。 こっちが倒したら、また、同じ事の繰り返し。 それと魔物を引き回している時は、魔物に側面を中衛と後衛に晒されるようにしてくれ。 弓や魔法の様な遠距離だと横移動の標的に当てるのは難しいかもしれないが、上手く数を減らしてもらえれば助かる。」
それを聞いて5人が頷く。
「じゃあ、始めようか。」
そう言ってジューネスティーン達メンバーは前にすすむと、ユーリカリアが声をかける。
「くれぐれも魔物のコアが落ちているところまでで、その先には行くなよ。」
ユーリカリアは周りに居る魔物の数から10体以上の魔物が寄ってこない様にと声をかけたのだ。
それに答えると、ジューネスティーン達もゆっくりと歩いていく。
ジューネスティーン達、6人がゆっくりと、シェルリーンとウィルリーンが倒したコアの近くに寄っていくと、6体の魔物の集団がジューネスティーン達を睨みつける。
ゆっくり歩いていく。
落ちている魔物のコアまで、1m と迫った所で、6体の魔物が一気に走り出して向かってくる。
アリアリーシャとレィオーンパードがホバーボードに足を掛けて、直ぐに魔力を込めて動ける様にする。
それを見てジューネスティーンが、メンバー達に声をかける。
「じゃあ、さっき言った通りに初めて。」
そう言うと、カミュルイアンとアンジュリーンが弓を構えるが、ジューネスティーン達と魔物の間に光の魔法紋が現れると、そこからラクビーボールの様な氷の塊が現れる。
現れると同時に、ジャイロ回転を始めると、直ぐに消える。
高速に撃ち出された為、消えたように思えたのだが、一気に魔物に向かって飛んでいったのだ。
その氷の塊は、回転を始めて消えたと思った瞬間に、先頭にいた魔物の頭にヒットすると魔物の頭を吹き飛ばす。
先頭の魔物の頭が吹き飛ぶと同時に光の魔法紋から同じ氷の塊が現れると、同じ様にジャイロ回転を初めると直ぐに消える様に飛んでいき、もう1匹の魔物の頭を粉砕してしまう。
魔物が動き出してジューネスティーン達との距離を半分に詰める頃には6匹の魔物は倒されてしまった。
弓を構えていたアンジュリーンとカミュルイアンは引いていた弦を戻し、出番の無かった事に、少しがっかりしている。
ジューネスティーンは、今の魔法について考えていると、レィオーンパードが声をかけてきた。
「にいちゃん。 俺、出番無かった。」
「ああ。 俺もだ。」
「これってぇ、シュレイノリアだけでぇ倒してしまいましたぁ。」
前衛の3人が唖然としていると、中衛の2人も寄って来て3人に声を掛けた。
「私も狙いを付けていたら終わってしまったわ。」
「うん。」
そう言うと、5人は、後ろをゆっくり振り返る。
何食わぬ顔のシュレイノリアが、5人に合流する。
ジト目で見つめる5人に、シュレイノリアは不思議そうな顔を向ける。
「どうした? 何かあったのか? 」
メンバー達の反応を見て不思議そうにシュレイノリアは質問する。
それを聞いてジューネスティーンが、シュレイノリアに聞く。
「なあ、あの魔法はなんだったんだ? 」
「アイスランスの変形版。 氷の塊を少し大きくしてみた。」
シュレイノリアはジューネスティーンに質問された事について、素直に答える。
「うん。 そうだったね。 しかもすごいスピードだったね。」
スピードの事を言われて、シュレイノリアは、勝ち誇ったように胸を張る。
「音速を超えたスピードで撃った。 魔物には避ける事はできない。」
シュレイノリアはドヤ顔で答える。
成功したことを褒めて貰いたいと思った子供の様な顔をする。
「なんで、全部、倒しちゃったの?」
シュレイノリアは、不思議な事を聞かれたと思う。
ジューネスティーンの趣旨が何なのか測り損ねている。
「それは、たまたまだ。 今回は範囲攻撃は無しだった。 なので単発の威力を上げて、魔物に避けられない様にアイスランスのスピードも上げてみた。 照準に入って射てば、多少動いていても外れる事は無い。 1000m 位なら誤差はアイスランスの弾丸の大きさより誤差は小さくて済む。」
それを聞いて、確かに初めに言った事は守っている事がわかる。
「前回は、形も悪かったし、回転も無かった。 だが、今回は、形も綺麗に整え、ジャイロ回転させた事で、直進性能がアップした。 風の影響を受けなければ、かなりの距離の狙撃も可能になる。」
ジューネスティーンは、少し前に時間潰しに帝都付近で行った狩の事を思い出したのだ。
その時、シュレイノリアは、単発のアイスランスを撃っては頭を抱えていたのだ。
その散々だった精度を、シュレイノリアは、修正してしまい、確実に当たる様にしてしまったのだった。
ジューネスティーンは、また、説明の必要が有ると思っているとシュレイノリアが続けて話す。
「東の森の魔物対策だ。 小さなアイスランスを数多く撃つより、大きな砲弾を撃ち込んだ方が効果的かと考えた。 Bランクの魔物で試せたのは大きな収穫だ。」
確かに大きな氷の塊を音速で当てて、頭を粉砕できたのは大きな収穫だ。
案外頭も硬い魔物だと言う話だったので、その魔物で試せたのだ。
魔法の有効性が証明できた事になるのだ。
そんなシュレイノリアの言い分は正しいのだが、ユーリカリア達の前で、初披露されてしまって、威力も見せてしまったのだ。
向こうにもウィルリーンという、魔導士も居るのだから、派手な魔法は控えさせようとしたのだが、それが裏目に出てしまったのだ。
ただ、前回戦った、東の森の魔物は、腕で急所をガードして防いでいたのだから、今回の魔物の様に腕にシールドが有るとは思えない。
だが、今回の様なアイスランスなら、アイスランスが現れた瞬間にガードに入られたとしても腕は粉砕できる。
その後の第2射によって、今の魔物の様に頭を粉砕する事も可能かと考えられる。
その証明ができたのは良かったのだ。
だが、見たこともない魔法の力をユーリカリア達に見せてしまった事には変わりはない。
どうしたものかと思っていると、魔物を倒したのでユーリカリア達がこちらにきた。




