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剣 〜ギルドの工房の話〜


 ジューネスティーンとシュレイノリアは、刀剣を扱う刀鍛冶屋から相手にされることは無かった。


 1日回って、工房を使わせてくれる鍛冶屋は無かったので、翌日には、別の鍋や鎌といった日常品を作る鍛冶屋を回ろうとしていた。


 そして、時間になったこともあり、ギルドの寮に戻り夕食を食べる事にした。


 2人の世話係としてメイリルダがついていたが、言葉が話せるようになったということで、一緒に暮らすようなことは無くなったので、今は、ジューネスティーンとシュレイノリアの2人の生活となっていた。


 ただ、11歳のジューネスティーンと9歳のシュレイノリアでは、幼い兄妹が慎ましく生活しているような状況だった。


 また、特に、メイリルダの世話役が、終わってしまったのは、言葉を覚えたと思っていたら直ぐに図書館に通うようになり、本を読むことも可能となってしまったことから、通常より早く世話役から外れていた。


 しかし、2人にはギルドから監視を兼ねた護衛がついていたが、2人の生活に干渉するようなことはなく遠巻きに行動内容の把握と、他国からの誘拐に対する護衛を兼ねていた。


 そして、誘拐に対しては事前に処理する事を求められていた。


 2人に対して、ギルドとして一部署が動いているのだが、それもギルドとして魔物のコアの召喚術を独占した事によって、莫大な利益を得ていることから大掛かりな人材を2人のために投入することも可能となっていた。




 ギルドは、召喚した魔物によって、農業、土木作業、建設作業等の労働力を提供し報酬を得ている。


 ギルドが、人や亜人、そして、奴隷から重労働を解放し、さらに労働力の増強を可能にした。


 それは、ギルドが行う魔物の召喚によって、取って代わったので産業構造が大きく変わっていた。


 ただし、この大陸において、大ツ・バール帝国の一国を除いてだった。


 この大ツ・バール帝国は、建国したツ・バール国時代のバール暦85年、ギルド暦532年に亜人奴隷を認めた事によって、ギルド支部設立が止まってしまった。


 この亜人奴隷制度を認めた事によって、ギルド支部設立について、ギルド側から交渉を打ち切られてしまっていた。


 その結果、大ツ・バール帝国にギルド支部設立が決定されるまで264年の歳月がかかった。


 帝国暦349年、ギルド暦796年に、大ツ・バール帝国の第1皇子のツ・リンケン・クンエイの働きかけによって交渉が始まった。


 それは、ジューネスティーン達が転移してきたギルド暦801年より5年前のことになる。


 大ツ・バール帝国は、ギルド支部を設立するにあたり、過去に無い大掛かりな帝都第9区画の拡大工事をギルド支部建設のために行った。


 それは、大ツ・バール帝国としてギルドへの自分達の本気を示すための意思表示でもあり、そして、亜人奴隷制度廃止への足掛かりにすることを約束していた。


 しかし、大陸の他国はギルド支部を設立していたこともあり、ギルドから召喚された魔物の労働力によって、莫大な利益を得てはいるが、それ以上に、ギルドの労働力には魅力があった。


 ギルドの提供する労働力を利用したインフラの整備は、人や亜人の労働力を遥かに上回っていた。


 ギルドと各国の関係もだが、商会から個人に至るまで、ギルドの召喚する魔物を利用することが多くなり、その召喚される魔物は、ギルドが冒険者から購入する魔物のコアを使っているらしい事は理解されているのだが、どのようにしてギルドが魔物を使役できて、それを一般に提供できるのかは、ギルド本部以外が知る事は無かった。


 ギルドが、魔物の召喚について独占したことによって、ギルドは莫大な利益を得ることになった。




 メイリルダは、ギルドの受付嬢としての仕事が終わった後に、ギルドの寮に来ていた。


 食堂にジューネスティーンとシュレイノリアが入ってくると、メイリルダは直ぐに手を振って2人を呼んだ。


「こんにちは。……?」


 ジューネスティーンは、挨拶をしてから考えていた。


「おお、メイ。元気そうだな」


 ジューネスティーンとは全く違い、シュレイノリアは、上からの物言いだったので、ジューネスティーンが恐縮していた。


「もう、シュレは、相変わらずな物言いね。もう少し敬語とかも使えるようにしてね。それと、ジュネスは、微妙な時間だから、こんばんはでもこんにちはでも、なんとでもなると思うわよ」


 そう言って、窓の外を指差した。


 窓の外は、夕日で赤くなっていて日が入り掛けていた。


 メイリルダは、空いている席に座った。


「ねえ、2人とも、鍛冶屋を探しているんだって」


 2人は、鍛冶屋を回っていたが全て断られていた。


 そして、明日、雑貨などを作っている鍛冶屋を訪ねようとしていたのだが、鍛冶屋を回ったのは今日の事なのに、それをメイリルダが指摘してきたので、その情報の速さに2人は少し面食らっていた。


「ああ、あなたたちはギルドが保護しているのだから、今でも影ながら護衛をしているのよ。だから、あなたたちが今日何をしたのかは、エリスリーンは、全て知っているわ。私は、エリスリーンからの指示を受けただけよ」


 ジューネスティーンとシュレイノリアは、特に今の話しを気にするような様子もなく聞いていた。


「エリスリーンは、ギルドで所有している鍛治工房を使うようにって言ってたわよ」


 だが、この提案には少し驚いた様子でお互いの顔を見比べてから、また、メイリルダを見た。


「あなた達のような人は、過去にも居たのよ。だから、ここにも鍛治の工房は用意されているのよ」


 2人の探していた鍛治工房が、直ぐ近くに有った事から考えていた硬鉄で覆われた軟鉄の剣の試作と、直剣を曲剣に曲げるための焼き入れの実験を行う場所の確保ができたのだ。


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