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剣 〜剣の製造について〜


 ジューネスティーンの考える新たな斬る剣の構想は完了し、後は作るだけなのだが作る場所の問題があった。


 それは、鍛冶屋が簡単に工房を他者に貸さない事にあった。


 鍛冶屋というのは、自分達の技術を他人に見せたがらない。


 特に、武器のような物に対する製造ノウハウというのは、門外不出と言われることもあり、刀鍛冶を生業とする鍛冶屋では、工房を使わせてもらうことはできなかった。


 せいぜい、遠目から様子を見させてもらう程度だったが、辛うじて鍛冶屋の工房を近くで見せてもらえたのは、日常雑貨を生業としていた鍛冶屋だけだった。


 剣の焼き入れと焼き鈍しについては、見せてもらうことはできていないのは、素材選びのノウハウと作り方については、門外不出とされている事が多かった。


 ジューネスティーンは、焼き入れと焼き鈍しについては、知識として知ってはいたが、実際に見ることはできていなかった。


 剣の構想はできたのだが、実際に焼き入れを行うことは見ることもできず、そして、焼き入れの入り方を変えることによって曲げる方法を実験によって確認しようと考えていたのだが、頼んでも工房を貸してくれる刀鍛冶は居なかった。


 自分の弟子にもならず、ただ、工房を貸してほしいと言われても使わせてくれる刀鍛冶は居ない。


 門外不出のノウハウが有るのだから、門人でもないジューネスティーンとシュレイノリアに、ギルドの頼みであっても使わせてくれるようなことは無かった。




 ジューネスティーンとシュレイノリアは、周囲の武器と防具を扱っている鍛冶屋から工房の使用を認めてもらえなかった。


 2人は、自分達の考えていた焼き入れの方法を試すつもりでいたが、刀鍛冶達から全て断られてしまっていた。


「ジュネス。刀鍛冶だけが鍛冶屋じゃないぞ。鍛治を行なっているのは鍋や食器を作っている雑貨を扱う鍛冶屋もある」


 シュレイノリアは、困った表情のジューネスティーンにアイデアを提供した。


 ジューネスティーンにとって、自分より小さく見えるシュレイノリアなのだが、話している内容は、ジューネスティーンが知らない事や思い当たらない事を指摘してくれ、そして、自分の考えをまとめるために話をすることのできる良いパートナーとなっている。


 ジューネスティーンが、アイデアに困っている時、自分の考えを声に出させて、その内容の中の足りない部分を補填してくれる。


 困った時には、シュレイノリアに相談するとシュレイノリアがアイデアを出してくれたり、シュレイノリアの言葉によってジューネスティーンがアイデアを閃かせるための手助けをしてくれる。


 そして、シュレイノリアは、知識を得るために読む事が好きだということ、話し方はそっけない話し方をするが、人の話をよく聞いて覚えていた。


 人の話をつないでいき、物事の本質に対して深く理解している事が多い。


 ジューネスティーンは、それに対して、広く浅く覚えるようにしていたことから方向性を考える事は上手なのだが、一つの事に特化した深い知識や技術については、その都度考える事にしていたので、シュレイノリアのような知識欲の高いパートナーは有難い。


「そうだな。刀を作れるのは刀鍛冶だけど、鍛治ができるのは、刀鍛冶だけじゃなくて草刈り鎌でも一般的な鍋でも作れるなら、それでもいいのか」


 ジューネスティーンは、シュレイノリアの話に納得するような表情をした。


「ただ、刀鍛冶の所に有るような焼き入れ用の水桶は無いかもしれないから、刀を入れても良いように、細長い水桶が必要になるだろうけど、その程度のものを用意するくらい容易いだろう」


 一般的な桶は丸桶なので、剣のような細長い物を入れるには、大きな丸桶か、細長い桶が必要となる。


 ジューネスティーンは、面倒そうな表情をしたので、その表情を見たシュレイノリアはムッとした。


「お前は、何のために魔法を覚えたんだ。細長い剣を入れるための水桶など、錬成魔法で作ればいいだろう。それに水魔法で、桶に水を溜めれば、直ぐに焼き入れの準備ができるはずだ」


 ジューネスティーンは、言われて、その通りだと納得したような表情をしたので、シュレイノリアは、ため息を吐いた。


「おい、ジュネス。お前は、新しい剣を作ろうとしているのだぞ。この世界に無い剣を作ろうとしているのに、それを刀鍛冶に見せてどうするというのだ」


 言われて、ジューネスティーンは、ハッとしたような表情をした。


「お前は、未知の技術を垂れ流そうとしていたのだぞ。だから、全ての刀鍛冶から工房の使用を断られたことを幸運に思う事だ」


 その通りだという表情をジューネスティーンはした。


 軽くて今までより斬れる剣を作ろうとしていたのだから、それを刀鍛冶の工房で行えば、その剣の作り方を見てしまう事になり、刀鍛冶からしたら鍛治の様子を見ていたら簡単に理解されてしまう。


 一般的には、材質の配分によって斬った時に折れないように、粘りと強度の兼ね合いを考えるだけなのだが、ジューネスティーンが考えた鋼鉄と軟鉄のハイブリットを行うことを見せてしまえば、使わせてもらった工房の鍛治職人なら同じ物を作ってしまうだろう。


 むしろ、刀鍛冶の工房で作ることが出来なかった事の方が幸運だった。


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