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剣 〜素材のハイブリット化〜


 ジューネスティーンは、ギルドからの評価が低かったこともあり、フルメタルアーマーが支給されなかっただけでなく、11歳の子供に重い剣が振れるわけがないと判断され斬る剣の支給も無かった。


 ただ、剣に関しては、ジューネスティーンの望むような斬る剣が、この世界に存在しないことが原因の一つでもあった。


 ギルドは、11歳のジューネスティーンでも取り扱い易いと考えた細身で軽量なレイビアを支給した。


 これは、ギルドとして冷静な判断を行っただけだが、フルメタルアーマーも剣も、どちらの事についてもジューネスティーンの要求が通らなかったことになった。




 支給されたレイビアは、先端のみに刃が入れられており、刀身には刃が入ってなかった。


 剣は細長く、そして、平べったく、刀身の断面は菱形になるように作られている。


 直刀のレイビアであり、その剣は斬るのではなく突くに特化した剣となる。


 細身の剣は、左右からの力で簡単に折れてしまう事があるので、レイビアのような細身の剣は、斬るような事をしたら直ぐに折れてしまう。


 冒険者のような狩場に出て魔物と対峙するような人にとって、剣が折れるという事は致命的な破損になってしまい、場合によっては命を落とす事になる。


 突くに特化したレイビアを支給された事によって、ジューネスティーンは、戦い方も考えなければならなかった。


 ジューネスティーンとしたら、剣は斬るものというイメージがあったこともあり、剣を上から振り下ろすような素振りをしていた事もあり、今後はレイビアに合わせた剣技の習得の必要があった。


 レイビアというのは、突き刺す事に特化した剣なので叩くようなことはせず、槍のように扱うものであり、細身の直剣は、突き刺した後直ぐに引き抜く必要がある。


 それは、突き刺したままだと、突き刺した魔物が倒れる時に、魔物の体重が剣に乗って剣を折ってしまう事があるので、レイビアのような細身の剣は、突き刺した後直ぐに引き抜く必要がある。


 それが、斬る剣であれば、斬り付けた後の勢いで斬り抜けば良いのだが、レイビアは、突いてから引き抜く、その一連の動作を常に行う必要がある。


 ジューネスティーンは、今まで想定していた練習を一からやり直す必要があった。




 そして、練習とは別に、新たな細身の斬る剣を考えるつもりになった。


 ジューネスティーンは、支給されたレイビアを捧げて見る事が多くなった。


 レイビアの練習をしている時の合間だったり、部屋でくつろいでいる時だったり、支給されたレイビアを見ている機会が多くなっていた。


 今も部屋の中でレイビアを抜いて天井にかざしていたので、シュレイノリアは面倒臭そうに見ていた。


「ジュネス! まだ、剣を考えているのか? それだけでなく、新しい斬る剣の構想も出てないのだな」


 ジューネスティーンは、シュレイノリアに図星を突かれたので少し面白くない表情をした。


「ああ、レイビアのように突くなら、これで構わないんだ。だけど、斬るとなったら、当たった瞬間、刀身に荷重がかかるから、硬鉄なら折れる可能性が出てくるし、軟鉄なら簡単に曲がってしまう事になる。そこまでは理解できるんだ。だけど、それだと、どっちの素材でも直ぐに使えなくなりそうなんだ」


 ジューネスティーンは、問題点を述べたつもりだったようだが、シュレイノリアは面白くなさそうにジト目でジューネスティーンを見ていた。


「お前は、そんな事で悩んでいたのか。それに今の軟鉄と硬鉄の考え方だと、お前の考える剣はできないぞ」


 シュレイノリアは、ムッとしたような言い方をしたので、ジューネスティーンは何事かと思った様子で見返すと、シュレイノリアは、何を馬鹿な事を考えているといったような表情で見ていた。


「そんなものは、両方の良いところ取りをすればいいだけだろう。刃は硬くして弾力を持たせる作りにすればいい」


 シュレイノリアは、当たり前のように言うと、それを聞いて、ジューネスティーンは、真剣な表情で自分の持つレイビアを見上げていた。


「そうか、刃は硬くすればいいのか」


 そしてジューネスティーンは、見上げている剣をクルリと回してレイビアの裏表を確認した。


「軟らかい鉄に硬い鉄の刃が有れば、表面は硬いが、内部は軟らかいなら斬り付けた時の衝撃を吸収できるかもしれないな」


 その一言を聞いて、シュレイノリアはニヤリとした。


「どんなに硬いものでも、薄かったり細かったりするなら、シナリも曲がりもする。硬い鉄の皮膜が軟鉄に覆われていたら、表面の衝撃を中の軟鉄が吸収する。早く気がつけ!」


 シュレイノリアは、ムッとしたような言い方をしていたが、表情は違っていた。


 それは、ジューネスティーンが、気がついたことに満足そうに悦にいった表情をした。


「素材の事については、それで構わない。だが、お前は、斬る剣が欲しいのだ。斬る剣というのは、反っているが、それはどうするつもりだ?」


 ジューネスティーンは、シュレイノリアの話しを聞いて、何を言っているのかといった表情をした。


「斬る剣だから、反った状態で作るんだろ」


 その一言を聞いて、シュレイノリアは、ジューネスティーンが何も分かっていない事に気がつき勝ち誇ったような表情をした。


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