シュレイノリアの魔法紋開発
シュレイノリアは、魔法を中心に研究を重ねていた。
それは、戦いにおいて無傷でいられる方法が有ったら、攻撃力が弱くても徐々に相手の力を削いでいけば相手を倒す事が可能になる。
どんなに強い武器を持っていても、相手から攻撃を1度くらったら終わりでは、いくら強い武器が有っても使う事なく自分が倒されてしまい無意味となる。
奇襲に遭遇したからといって相手の魔物に卑怯だと言うわけにはいかない。
些細な攻撃でも生身であるなら、首筋、胸の中心、肝臓か腎臓を撃ち抜かれた場合や大動脈や大静脈を切断された場合は致命傷となり死に至る。
奇襲のような不意打ちをくらう可能性は、冒険者として魔物と対峙したら可能性は大きいので、それなら魔物の不意打ちにも耐えうる防御力を有する必要がある。
ジューネスティーンとシュレイノリアは、数少ない書物と人からの話によって、この世界で生き残るための手段を考え結論を出した。
魔物に攻撃を受けても傷付かない、そんな究極の防具を作れないか。
そして、防御的な欠点の少ない防具、防御されてない部分が少なくなればなる程欠点は少なくなる。
完全に稼働部分が無かったら防御欠陥は無くなるだろうが、人のように複雑な動きを行う場合は、どうしても防御できない部分が出てくる。
それを補う方法も含めて考え欠点を可能な限り少なくするには、今、市販されている防具では不足していた。
その結論の先にあったものが、人の体の動きに連動して稼働する装甲を有するパワードスーツとなったのだ。
そのために必要な外装骨格と装甲のハードウエアをジューネスティーンが担当し、それを動かすための魔法、つまり、ソフトウエアをシュレイノリアが担当した。
2人の転移してきた世界には魔法があった事で、大掛かりな装置だとしても、それを魔法によって動かすことも可能になる。
それなら、魔法について徹底的に調べて使う方法を考えれば、自分達の考えたパワードスーツも完成させることができると2人は判断したので、魔法についてシュレイノリアが担当していた。
シュレイノリアは、動力としての魔法と、制御としての魔法の、両方の開発を行う事になった。
ジューネスティーンは、身体全体を覆う外装骨格について開発を行なっていた。
それは、関節の各部分の動きに合わせた骨格を作る必要があった。
肘や膝といった部分のように単純な動きをする部分以外に、股関節・足首・肩・手首のように複雑な動きをする部分も多い。
そして、究極的な複雑な動きをする指に関する動きを、ハードウエアとして考える必要があった。
どちらの開発内容も非常に複雑な事であって、お互いにお互いの開発している内容を把握し、問題点は、お互いに補いつつ開発を行う。
ハードウエアとソフトウエアのどちらで対応するのか、または、その両方なのかをお互いに検討し納得する事で、どちらに責任があるのかではなく、どうやったら、より早く完成度を高くできるかが重要だった。
2人の中には、完成度を高くし早く完成させる事が重要となっていたので、必要に応じて、お互いの担当する内容についても協力を惜しむことはなかった。
ジューネスティーンも魔法を使う事ができたが、当初は、使えなかった魔法も、シュレイノリアから魔法の概念についての説明を聞くと一気に使えるようになった。
魔法は、イメージと魔素が結合して魔法となる。
魔素が、人の考えるイメージを具現化するための素子だったのだ。
人のイメージする火でも水でも、イメージと魔素が結合して火や水になる。
その事にシュレイノリアが気がついたのは、同じ魔法であっても、その魔法の宗派によって詠唱が異なることにあった。
同じ魔法なのに詠唱が違うのは何故なのかと考えると、詠唱はイメージを増幅するために有って、イメージができるのであれば詠唱は要らないという事に行きついた。
自分の脳内で明確なイメージを行う事を心がければ魔法は発動する。
魔法宗派によって詠唱が異なっていたとしても発動された魔法が同じ事が、それの証明となると発見したのだ。
シュレイノリアによって魔法概念が確立された事から、ジューネスティーンも魔法が使えるようになったので、シュレイノリアの考えるパワードスーツ用の魔法も、魔法紋も開発は可能と2人は結論付けた。
それがシュレイノリアの実験によって証明されると、構築後のデバックや修正も可能となった。
今後、自分達が置かれた状況の中で、生きていくために考えた究極の防具としてのパワードスーツの魔法をシュレイノリアが担当した。
シュレイノリアは、付与魔法と魔法紋について重点的に研究を重ねていた。
重い装甲を取り付けた状態で動きを良くするために筋力の増幅と、人工筋肉を連動させるために必要な筋力の動きの検知するためのセンサーに関する事は、魔法紋によってデータの吸い上げ、人工筋肉によって増強させる。
筋肉の動きを読み込むため、筋肉の動きと脳波を読み込み人工筋肉を動かす。
センサーにしても駆動系にしても、それを魔法として駆動させるには魔法紋が必要となる。
大掛かりな魔法紋が数十個、それを連動させるための魔法、魔法紋同士のネットワークの構築が必要となる。
シュレイノリアは、その魔法の基本構造を構築し、一つ一つの魔法を連動するネットワークシステムとしての魔法の構築を考え開発を行なっていた。
そして、時々、ジューネスティーンにその話をしつつ、お互いの状況報告を行うのだが、その際に魔法紋の構築の一部をジューネスティーンに行わせたりしていた。
ジューネスティーンが、形作ったパワードスーツを、シュレイノリアによって、ただの人形のように立つ鎧が、パワードスーツとして命が吹き込まれる事になる。
その研究を2人は寮の黒板を使って行うようになった。




