冒険者としての装備
ジューネスティーンは、最初フルメタルアーマーに興味を持った事もあり、何か新しい事を考えてくれると思われていたのだが、そのうちに昆虫に興味を示したことで、始まりの村のギルド支部内では冒険者として進む事は無いのかと思われてしまった。
魔法を使えるシュレイノリアと、フルメタルアーマーを使って前衛の盾役をするジューネスティーンという構図を考えていたのに、ジューネスティーンについては当てが外れたと思われてしまった。
しかし、ジューネスティーンは昆虫からフルメタルアーマーの改良にヒントを得ようと考えていた。
転移して、3ヶ月という圧倒的な速さで言語を覚えてしまい、シュレイノリアにおいては、魔法に関する知識の吸収する力が他者を凌いでいたのを見てしまうと、ジューネスティーンに対しては裏切られた感があったのだ。
しかし、転移して1年になる頃には、ジューネスティーンも冒険者としての道を進むと方針を決めていた。
冒険者になるなら、2人は転移者という事もあり、ギルドとしても装備などは用意してくれる。
ジューネスティーンは、その際にギルドにフルメタルアーマーを用意してもらおうと要求を上げたのだが、身長が足りない事と11歳になったばかりの成長期では身長も伸びていた事もあり、要求したフルメタルアーマーの支給はされなかった。
そのため、最初は小型の魔物を狩る方向で2人は冒険者となった。
シュレイノリアには魔法職らしい、ツバの広い三角帽子とマント、膝上までのワンピース、そして、太ももまでの長さのブーツを用意してくれた。
一般的なブーツなら、膝下までの長さなのだが、ギルドは、シュレイノリアのために特注のブーツを用意してくれた。
それも、太ももまで伸ばしたものではなく、膝の曲げ伸ばしを考慮するように、膝の裏だけは全体を覆う革とは違う柔らかい素材で作られ、曲げ伸ばしに負担がかからないように作られていた。
長いブーツをギルドが特注したのは、シュレイノリアが転移時にサソリの魔物から受けた傷が身体中にあるので、それを隠せるように太ももを覆うように配慮はされていた。
立っているだけなら、太ももにある傷は、スカートとブーツによって隠されていた。
そして、ワンピース、マント、帽子には、生地と同じ色で刺繍が施されており、その刺繍は魔法の効果を備えるように作られていた。
シュレイノリアの才能を考慮すると、ギルドとしても予算が取れた事もあり、9歳で成長期のシュレイノリアであろう特注品を支給しても問題無かった。
成長に応じて、また、新たに作ったとしても問題ないほどの予算が付けられていた。
それは、シュレイノリアの魔法能力の高さ、そして、新たな魔法紋を考える能力があり、今後、冒険者として活躍するのであれば、ギルドに大きく貢献してくれるだろうと判断されたからだ。
しかし、ジューネスティーンに対しては、シュレイノリアほどの予算は付けられなかった。
それは、当初、武器や防具に興味を持ち、鍛冶屋の武器や防具を確認したり、鍛治の様子を確認するなど研究熱心だと判断されていたのだが、それが、ある日を境に、花壇の昆虫に興味を示し日々の大半を昆虫の観察に費やしていたことにあった。
その様子を見ると、冒険者に興味は無くなったと、ギルド職員達から見られてしまい、ジューネスティーンは学者に興味を持ったとされてしまった事による。
ただ、ジューネスティーンとしたら、蜂やカブトムシのような表面を硬い甲羅のような殻に覆われた昆虫に興味を示していた。
それは、フルメタルアーマーをパーツ毎に取り付ける作業が非常に煩わしく、取り付けに時間もかかり、手間も、人手もかかってしまうことを気にしてのことだった。
硬い殻に覆われた昆虫でも、早い動きができるのは何故なのか、ジューネスティーンには気になったようだ。
フルメタルアーマーのパーツは、関節のような複雑な動きをする場所を覆うことはなく、腕や脛のような稼働しない部分に当てるように取り付けてある。
そのヒントをジューネスティーンは昆虫に求めたのだ。
しかし、周囲には伝わらなかった事が、ジューネスティーンの評価を大きく下げてしまっていた。
ただ、シュレイノリアとは話をしており、フルメタルアーマーの一体化を行うこと、そして、魔法紋による強化にはフルメタルアーマーでは限界があることを指摘していた。
それは、人体に強化魔法をかけたとしても、人体の筋力や骨格の限界がある事から、体に取り付けて使うフルメタルアーマーでは限界はすぐに来ると2人の間で結論づけていた。
そのための昆虫の観察だったのだ。
そして、ギルドの評価の下がってしまったジューネスティーンに、フルメタルアーマーの支給が無かったことで、ジューネスティーンとシュレイノリアの最初の目標は、フルメタルアーマーの購入資金を貯めることになった。
新たなフルメタルアーマーのあり方を、2人は考えていた。
その新たなフルメタルアーマーを、2人は“パワードスーツ”と呼んだ。




