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ジューネスティーンの興味 2


 ジューネスティーンは、花壇で蝶の羽化を見て感動をし、羽化後の蛹の殻を大事に持ち帰って、その羽化後の殻を眺めていた。


 その後も花壇や草むらの、木々の枝を観察するようになったので、周囲の人々は拍子抜けしていた。


 ギルドの職員達としては、ジューネスティーンには、冒険者の道を進んでくれれば、どこに居たとしても活動の状況は確認できるので、自分達が子供の頃を知っている2人が冒険者として活動していたら、活動報告を確認することで現状を知る事ができる。


 しかし、冒険者とはならずに、商人や学者のようなギルドとは関係のない仕事に就かれるとギルド内では確認が難しくなる。


 ギルドの職員達としたら、転移者達の冒険者としての活躍を確認することが楽しみでもあるのだ。


 娯楽の少ない世界において、人の活躍や噂話は大切な娯楽なので、活躍の話をする事が職員達の楽しみでもあった。


 冒険者が、依頼をこなしたり魔物のコアを販売すると、その記録はギルドに残る。


 誰がどんな魔物と戦って勝利したのか、それと、当時の冒険者の様子を照らし合わせて話をする事で酒の肴になる。




 そして、ギルドには気になっている魔物がいる。


 それは、大陸の中央部にある大ツ・バール帝国の東にある、東の森と呼ばれるその場所から発生している大陸最強と言われている魔物がいる。


 その東の森から発生する、東の森の魔物を最初に倒すのは誰なのかは、ギルド職員達にとって非常に興味をそそる内容だった。


 まだ、誰も倒したことのない魔物なので、その魔物のコアに付いて知る者が誰もいない。


 どの位の大きさなのか、形は、どんな色をしているのか、そして、時々、魔物が落とす魔物のコア以外のドロップアイテムが有るのか、その東の森の魔物を初めて倒す冒険者は誰なのかが話の中心になっていた。


 今のところ、ジューネスティーンの前に現れた転移者のジェスティエンが、火薬と銃を発明したことで、ジェスティエンが最有力候補であるのだが、魔物の表面を覆う鱗が弾丸を弾くのではないかとも言われていた。


 東の森の魔物は、表面に持つ鱗が硬いため剣を弾くと言われているので、ジェスティエンの銃弾がどれだけ有効なのか、一発の銃弾で倒せるのかとなっていた。


 そして、ジェスティエンはギルド本部の意向により、未だに大ツ・バール帝国へ行く予定は無かったので、ジェスティエンの銃を持ってしても、東の森の魔物は倒せないのではないかと噂されていた。


 東の森の魔物を倒す最有力候補としてジェスティエンだったのだが、ギルド本部がジェスティエン達を、大ツ・バール帝国に派遣しようとしない事もあり、そんな噂が飛び交っていた。


 そして、今回転移してきたシュレイノリアは、魔法能力が桁外れに強そうだと噂されてはいたが、ジューネスティーンについては、昆虫の蛹やらを喜んで観察している様子から、この少年には無理だと思われるようになっていた。




 大ツ・バール帝国は、北の王国と南の王国を繋ぐ街道が通っているが、建国以前は、その東の森の魔物の脅威により、その街道は使うことができなかった。


 しかし、北の王国に現れたツ・エイワン・クインクオンによって、魔物を排除する魔道具を使い、東の森の魔物を森に押さえ込むことに成功した。


 その功績で、ツ・エイワン・クインクオンは、北の王国の庇護下でギルド暦448年に北の王国と南の王国の間にツ・バール国を建国した。


 ツ・バール国は、その年をツ暦元年と制定し、南の王国と北の王国を結ぶ街道の往来の安全を確保し、そして、交通の要となっただけではなく、建国してまもなく、その広大な土地にあった野生の穀物の栽培に成功することにより大陸中の国へ穀物輸出を可能にさせた。


 ツ・バール国から穀物が輸出されるようになると、大陸の各国の飢餓率は大きく減り、自給できなかった食料をツ・バール国から買い求める事で補えるようになった。


 ツ・バール国の穀物輸出のおかげで、各国の政治不安の一つが解消されていた事から、交通の要としてだけでなく、大陸の穀物庫としての役割を担うようになった。


 その結果、各国からの穀物輸出依頼に対応するため、さらに穀物生産量を増やす必要に迫られた。


 その穀物生産量を増やすため、ギルド暦523年、ツ暦85年に、第4代国王 ツ・カンラン・ジンヲンによって亜人奴隷制度を認めることとなった。


 不足する労働力を、農業奴隷として亜人を使うことを認めてしまったのだ。


 ツ・バール国は、増え続ける穀物生産量を亜人奴隷によって補った。


 それが、ツ・バール国とギルドの隔たりを大きくしてしまった事もあり、ギルド支部の設立が大きく後退してしまった。


 そして、ギルド暦752年、ツ暦305年に、第20代国王 ツ・エイデル・リョウリンによって、ツ・バール国を大ツ・バール帝国と改名し、暦もツ暦から帝国暦に変更され国王を皇帝とした。


 その後、第21代皇帝となったツ・リンクン・エイクオンと、その長男であり第22代皇帝の指名を受けたツ・リンケン・クンエイによって、ギルド支部の誘致に成功させた。


 大ツ・バール帝国としても、東の森の魔物への対処が難しくなり始め、そして外交上、亜人奴隷を認めていることが弊害となった事、亜人奴隷だけでは穀物の生産を賄いきれなくなり始めた事が、大ツ・バール帝国としてもギルドを使う必要に迫られた。


 そのことをツ・リンケン・クンエイに提案され、皇帝が認めギルドの誘致を行い、ギルド暦796年、帝国暦349年にギルド支部設立が決まった。


 そのことによって、ギルドとしても冒険者の派遣を行うことが可能となった。


 そして、大ツ・バール帝国として、ギルドを誘致するため、新たに第9区画を帝都の南側に、過去最大の敷地面積の都市開発を行なった。


 ギルドに対して、大ツ・バール帝国としての本気を示す格好となり、ギルド支部の本格稼働は、ギルド暦807年、帝国暦360年と決まった。


 これによって、東の森の魔物討伐をギルドとしても本格的に考え始めた。


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