ジューネスティーンの興味
ジューネスティーンは、エリスリーンに聞かれて、今、気になっているのは、フルメタルアーマーをパーツ毎に取り付ける事による時間のロスだと言った。
フルメタルアーマーは、それぞれのパーツ毎に体に取り付ける事になるので、取り付ける順番もあり、場所によっては1人で取り付けることができないので、取り付けに補助を必要とする。
フルメタルアーマーを使うには、戦闘に入る前の準備に時間が掛かるので、準備ができる時間が有るなら、それに合わせて取り付ければ済むが、遭遇戦の際にはフルメタルアーマーを取り付けて戦うことは不可能と言える。
エリスリーンは、自分で考えてみてはとジューネスティーンに言うと、ジューネスティーンは考え込んでしまった。
その一言が、ジューネスティーンに新たなフルメタルアーマーを考えるきっかけを与えていた。
エリスリーンは、そんなジューネスティーンの様子を快く思った。
ジューネスティーンとシュレイノリアは、転移後3ヶ月で、この地の言語をマスターし蔵書数が少ないとは言え、ここのギルドの図書館の本を全部読んでしまった。
その後、シュレイノリアは、魔法について異常なまでの興味を示していたが、ジューネスティーンは、鍛冶屋に置いてある武器や防具に興味を示していたとあったが、鍛冶屋をまわるには護衛をつける必要があった事もあり思った時に直ぐに行けなかった。
ギルドとしては、誘拐の危険性があるので、ジューネスティーンの要求を常に満足させることはできなかった。
武器や防具を見せられないこと、そして、鍛治技術についても都合よく見れずにいた。
そして、始まりの村は南の王国でも田舎となるので、腕の良い職人は、このような地方ではなく南の国の王都なり、別の国に行ってしまう人が多いので、最高級の武器や防具を見ることはできなかった。
一般的な武器や防具、実用性を重視してはいるが芸術性は無いし、新たな技術を加えた武器も防具も無い。
ありふれたものしか見ることはできなかった。
それでもジューネスティーンは、鍛冶屋を見学に行った際は店の全ての売り物と展示品を確認していた。
そして、汚れを見つけたら店主に綺麗にさせてほしいと頼んでは触らさせてもらっていた。
また、鍛治を行なっていた場合は、その様子をジーッと見ていた。
その様子は、鍛治の技術を盗むように見ていたが、最初から最後までを通して見る事はなく、時間の許す範囲で鍛治を行なっている工程の一部を確認する程度だった。
また、自分でも鍛治を行いたいと思っていたようだが、ジューネスティーンを見て、どの鍛冶屋も職人も鍛治を行わせようとはしなかった。
どこの鍛冶屋としても自分の子供に後を継がせる為なら、手伝いもさせようとするが、ギルドから頼まれて作業や店の商品を見せている少年に手伝わせようとは思わなかった。
また、剣について鍛治仕事を見せてもらう事はできずにいた。
シュレイノリアは、そんなジューネスティーンの行動に付き合いはするが、自分の興味をそそるものではなかった。
しかし、時々、置いてある魔法紋を付与した武器や防具には興味を示して、その魔法紋を興味深く確認していた。
時々、その紋様の一部を店を後にしてから石板に書き写したりし、その翌日になるとシュレイノリアは図書館に引きこもり、書物を確認したり中庭に出ては、何やら地面に魔法紋のような紋様を描いていた。
一方、ジューネスティーンは、一度、図書館の蔵書を全部読み終えると、それ以降はシュレイノリアのように何度も読むことは無かった。
空いた時間は、剣を振るうかギルドの寮内に置いてある剣や防具を見ているか、気が向いたらシュレイノリアに付き合って図書館に行く程度だった。
ジューネスティーンは、男の子という事もあり、武器や防具に興味を見せるなら、それでも構わないとギルドとしては思っていた。
その様子を見て、ジューネスティーンには、ジェスティエンのような才能は開花しないと、ギルド支部の上級職員は思っていたようなので、いずれは冒険者として巣立っていき魔物と戦うようになるのかと思っていた。
そしてジューネスティーンに対して、ジェスティエンのような才能が無いと判断された理由として一番大きかったのは、ジューネスティーンは、時々、花壇に行く事が多かった。
ジューネスティーンとシュレイノリアに対して、ギルドの寮内での移動制限は無かった事もあり2人は中庭に出ることもあった。
シュレイノリアは、地面に魔法紋の紋様を描く事が多かったが、ジューネスティーンは、剣を振るわない時は花壇に行く事が多かった。
男の子が花を見て、女の子が地面に落書きをするという構図になる事もあり、寮長が気になってジューネスティーンに何を見ているのか聞いた事がある。
「花に来る虫を見ている。虫は、表面に硬い皮が有るのに空も飛べる。硬い表面でも意外に早く動く虫もいるんだ」
そして、ジューネスティーンは、徐々に虫を観察する時間が増えるようになっていた事から、周囲は昆虫観察が好きな少年という印象を与えてしまった。
ジューネスティーンの観察は数ヶ月に及び、そして転移してから一年が経過した頃、蛹から蝶に羽化する様子を見て興奮した様子で、周囲に、その時の様子を触れて回った。
その事からも周囲では、ジューネスティーンは、冒険者ではなく学者の道が良いのかもしれないと思われるようになっていった。




